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3話 父さんって奴は……?!


 俺はフードを目深に被り、ウイルスや身分さえもシャットアウトする前世の最強アイテム、黒いマスクを着けた。陰の支配者は謎っぽくなければね。

 そして納屋の奥へと進み机に腰掛ける。

 

 俺が定位置に着くと、レクスが話を始めた――


「では、ジニアス様がいらっしゃったので、新たな情報を元に作戦会議を始める。アピス、報告を」


 アピスは情報収集を担当する――

 

「はいボス。田舎町で貴族が何者かに拉致される事件が多発しているようなんです。犯人は不明、使用人は斬殺されていたとか」


 貴族の誘拐か、随分と大胆な犯行だな。アピスの情報によると、食料の配達にきた業者によって発見されたらしい。機動隊の調べでは、屋敷の主人や家族の遺体は無かったという。

 

 それで誘拐事件かあ、まあ、妥当な推論だろう。しかし使用人を斬殺とは証拠隠滅にも程がある。

 貴族に恨みでもあるのだろうか。


 俺はアピスに訊ねた。


「ちょっと聞くが、襲われるのは貴族に限ってのことか?」

「はいジニアス様、今のところ貴族だけのようです。詳しく調べたほうがよろしいですか?」


 俺はしばらく考え――


「レクス、悪いがこの件は任せる」

(かしこ)まりました。では引き続き捜査させます。では今日の獲物を」


 ここからはボスの出番だ、俺は沈黙する。

 レムールが口を開く――


「はい、悪徳金融業のグルーニ商会です。昨日の夜に大金が金庫に運ばれていました」


 彼女は潜入を得意とし、メイドや秘書を装い内部調査を担当する。


「見張りはどうなっている?」

「はいボス。表に3名、屋敷の中に3名、金庫部屋に2名配置されています」


 大金ねえ、なら昨日は回収日ってことか。見張りも少数、ティグレひとりで楽勝だ。

 彼は寡黙(かもく)だが身体のデカい怪力の持ち主、なので戦闘を主に任せている。

 

 ということで――


「レクス、お前たちだけで事足りそうだな?」

「はい、お任せください」


 俺は皆んなが(ひざまず)く中、納屋を出て帰路へ向かった。アピスの情報に多少の興味はあるが、それより護衛隊の隊長のほうが気になった。

 

 確かあの時、「昇進」とかって聞こえたんだけど、まさか特待生になれって話しか?

 迷惑この上なく、しばらくクラブには行かないほうがいいかもしれない。

 ハァ……要らぬ厄介事を抱えてしまった、失態。



 そんなことを考えながら、スラム街から都心を抜け、暗い山道を歩いていると、突然クラビス父さんが現れた。何事?


「ようジニアス、久しぶり。元気にしてたか?」

「クラビス父さんこそ、突然どうしたの?」


 少し間を置く父さん――怪しい。

 

「なあジニアス、俺とシルヴァは夫婦だよな?」

「……はっ?」

「だってふたりの間にお前という息子が居るんだからさ……」


 いきなりどうした、そりゃ建前は夫婦というか夫夫? なんだろうけど、えっ?

 何なに、親権の問題?


「えっと……どういうこと?」

「……あのな、そのう……俺は本当の夫婦になろうかなって思ってるんだけどさ……お前はどう思う?」


 おいおいちょっと待ってよ、何この親父、思春期真っ只中の青年にBL的な話を振る?

 落ち着け俺、と、とにかく確かめよう――


「それって……クラビス父さんはシルヴァ父さんが好きってこと? ラブ的な?」

「それもあるが――お前が地上に降りてから、シルヴァはまた本に夢中で、何か調べているようなんだ。ちょっと心配でな……まあ、そういうことだ」


 なるほど、物は言いようで、恋しい相手と一緒に居たいってことか。今更って気もするが、魔界的にもいろいろ事情があるんだろう。

 俺は既に独り立ちしてるし、別に何の問題もないと思うけど、もしかして、俺に気を遣ってる?


「んー、両親がラブラブで、常に一緒に居るのは良いことだと思うし、俺は応援するよ」

「ホントに? ああ良かった、ありがとな!」


 意外と小心者のクラビス父さん、シルヴァ父さんはどうなんだろう、俺がとやかく言える立場じゃないし、あとはふたりの問題ということで。

 しかし、ダークサイドがBL派だとは知らなかったな。まあ、そんなことはどうでもいいか。

 

 俺はルンルンのクラビス父さんに「シルヴァ父さんを泣かせないでよ」と告げたら、ガッツポーズで帰って行った。

 意味わかってるのかねえ――よし、忘れよう。

 


 山道を抜け荒野を歩くと、あと少しで我が家なのだが、結界の前にデカい生き物が転がっていた。

 今日はやたらとイベントが多いな、厄日か?

 

 とにかく邪魔なので排除しようと思う。普通は警戒するところなんだろうが、両親より怖いものはないので、近付いて突いてみた――


「おーい、生きてるかー?」


 こいつは――


「ふむ、この硬い皮膚はおそらく……」


 俺は瞬時に頭のほうへ向かって走った。すると、ギロリと大きな眼が俺を睨む――


『お前、ドラゴンだな? どっから来た?』

『お主、言葉が……同胞……か?』

『まあ、ちょっとな。なるほど、レッドドラゴン、火龍か。しかしお前、傷だらけじゃないか、いったい何があった?』

『吾輩は……クッ……』


 話の途中で火龍は力尽きてそのまま気を失ってしまった。ここで死なれても困るので、魔力で治療したあと、結界内に押し込め、魔素を与えるために樹海へ運んだ。


「おーい、死霊たち、ちょっと魔素を大量に吐き出してくれー、急げよー!」


 そこへレクスが駆け足で帰って来た。この異様な光景に、さすがのレクスも言葉に詰まる。


「坊ちゃま、こ、これはいったい……」

「レクスお疲れー。さあ、俺にもわからん……ただ、何かに導かれてここへ来たんだろう」


 そうは言ったものの、俺にも見当がつかない。あの傷はどこで負ったのだろうか、この国でドラゴンによる騒動も、見かけたという声も聞かない。

 考えられるのは召喚、あるいは転移ではないだろうか。(まれ)に、上位クラスのドラゴンには転移魔法を使えるものがいると聞いたことがある。


 結界が張ってあるとはいえ、地中から漏れ出した微量の魔素に誘われて来たってところか。

 でも結界を破るまでの力は残っていなかった。


「坊ちゃま、あのドラゴンをどうするおつもりですか?」

「どうするつもりもないよ。回復したら出ていってもらう、厄介事は御免だからね」

「なら良いのですが……」

 

 俺たちはドラゴンを樹海に置いて、屋敷へと向かった。レクスと食事をしながら今日の出来事を話していると、父さんたちの事でレクスが苦笑いで応えた。


「フッ、そうでしたか、以前も似たようなことがあったんですが、魔界の連中がうるさくて、シルヴァ様が一歩引かれて逢わないようにされたんです」


 なるほど、お互い満更でもなかったってことか。そこへ俺というクッションが現れて、魔族たちも諦めた。俺なりに親孝行ができたって感じかな。


「まあ、めでたしめでたしってことで。それよりさ、クラブの件なんだよなあ」

「そうですねぇ、でも考え様によってはメリットになる部分もあるかと」

「メリット?」

「はい、国の情報がいち早く入手できます」

「ああ……」


 レクスは俺たちの仕事のことを言いたのだろう、機動隊に目を付けられては困るからな。

 事前に対処できればそれに越したことはない。でもさあ、俺だけ貧乏くじを引くのはどうよ……。


「なんかクラブの延長みたいで嫌なんだけど」

「支配者たる者、苦労は付きものですので」


 こいつ――クラビス父さんに似てきやがった。


「それと、あのドラゴンなんですが……」


 レクスが不安げにいう。そういえば、なんか意味ありげに納得してたなあ、訳ありか?

 


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