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気の毒な男  作者: Zu2
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第三章 ガチョウ

 課長は、私と同じくこの四月で異動して来たばかりの方である。私の従前職場の上司でこの方を知る方が『すごく面白くて良い人』と言っていたので、少し期待していた。だが一方でどうやらそれも随分と過去の話で、どうも最近は少し情緒不安定になっているとも聞かされて、どちらが本当なのか不安でもあった。

 着任して早々、私はいきなりひどい風邪にかかってしまった。従前職場での無理が、異動することで解消されて、かえって極度の緊張から解放されたことで一気に健康状態悪化につながったのかもしれない。かなりのダメージを負いながらも、新職場でいきなり休むわけにはいかないと気を張り直しながら通勤していたが、このとき課長が『何?インフルか?周りにもうつすから早く帰ってよし』と冗談のようにも言いながらも、かえって所属長のお墨付きで帰らせていただけるのは非常にありがたかった。実際初日も、この日も全く周囲は私の健康状態など気にかける者はなかったが、この言葉を皮切りに女性のスタッフの方々は『昨日と全然声が違って』と言い始め(実際に喉がひどく痛み声は完全に普段と異なるものになっていた)、せっかく出勤したとはいうものの、有給休暇で一日休みとさせていただいて、この日は帰ることができた。

 異動して最初に転入者向けの研修、施設見学の際に、課長と一緒になった。このとき過去の私の経験部署と課長に共通点があることがわかり、少し話が弾んだ。まあいい人かなとは思えた。だがそれは結局一瞬のことであった。

 彼は親睦を深めるという名目のもと、私以外の職場の人間と毎晩のように飲んでいた。朝はこの課では前日の飲み会の話が日課になっていた。私は必死で知らないフリをした。一度だけたまたま他の者たちを誘う瞬間に出くわしてしまい、仕方なさそうに『きみも来るかい?』などと言ってきたので、誘いにのったことがあった。このときの話が酷かった。汚らしい、穢らわしい性行為についての話を大声で上機嫌で話していた。自分の妻を汚すような表現を、よくもまあこんなにペラペラ喋るものだ。私は本当に吐き気がした。

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