ハロウィンは快盗とともに
10月31日、ハロウィンが少しずつ近づきつつある放課後のことだった。
「仮装パーティ?」
日下部冬真は配られたビラをみてつぶやいた。
「ハロウィンに仮装パーティを行うの……冬真くんも遊びに来てね」
屈託のない表情で冬真に仮装パーティに誘うクラスメイトの弓月梨生だった。
「どんな仮装でもいいの?」
「どんな仮装でもオールオッケーだよ」
梨生はそう言って微笑んだ。
梨生と冬真は幼馴染で小学生の6年間おなじクラスだ。二人の間には気安い雰囲気が漂っていた。
「ハロウィンパーティの詳細は後日招待状を送るから待っててね」
梨生はそう言って他のクラスメイトにむかっていった。
「ハロウィンか……なんの仮装をしようかな」
冬真はハロウィンパーティの仮装のことを考えた。しかし、なかなかいいアイデアが浮かばなかった。
悩みながら冬真は自分の家に帰宅した。すると小学生高学年ぐらいの女の子が出迎えた。
「冬真お兄ちゃん、おかえりなさい」
「りりさ、来てたのか」
彼女の名は日下部りりさ、冬真の親戚で近所に住んでいる。たまに冬真の家に遊びに来るのだ。
冬真はリュックを玄関に置くとリビングのソファに寝っ転がった。
「冬真お兄ちゃん……なにか悩んでいるよね?」
冬真はドキリとした。
「ひょっとして梨生ちゃんのことでしょ?」
りりさは直感が鋭い。冬真は観念してハロウィンの仮装のことを話した。
「そんなことで悩んだいたんだ……りりさがハロウィンのコスプレのことを考えてあげる」
りりさが妙に自信満々だった。
「ハロウィンのコスプレ……なにか案があるの?」
「冬真お兄ちゃんは怪盗ルパンになればいいんだよ」
「怪盗ルパン?」
「怪盗の仮装をして梨生ちゃんのハロウィンパーティに出ればいいんだよ」
「でも仮装をどう用意するんだ?」
冬真は怪盗ルパンの衣装をどう用意するかをりりさに尋ねた。
「冬真お兄ちゃん……りりさに任せて。りりさに怪盗ルパンの衣装のアテがあるんだ」
そう言ってりりさは小悪魔的に笑った。
◆◆◆◆◆
ハロウィン当日である、冬真は弓月家の屋敷に怪盗ルパンの衣装で立っていた。
「本当にこの格好でハロウィン仮装パーティに出るのかな」
少し恥ずかしそうに冬真は衣装をまじまじと見た。
「冬真お兄ちゃん……とっても似合ってるよ」
りりさはそう言っていたが少し恥ずかしい。
冬真は勇気を出して弓月家の呼び鈴を鳴らした。
扉はすぐ開き、黒猫の扮装をした梨生が出迎えた。
「冬真くん、いらっしゃい! いい衣装だね!」
「りりさが衣装を用意してくれたんだ」
「りりさちゃんが用意してくれたの?……よかったね、素敵な衣装をもらって」
梨生は感心した表情を見せた。
「……ありがとう」
冬真は照れくさそうに笑った。
梨生は冬真の手を引いてパーティ会場に案内した。ハロウィン仕様なのか薄暗い廊下を抜けていく。
「……ここがハロウィンパーティ会場か」
ハロウィンパーティ会場には狼男から吸血鬼まで思い思いの扮装をしたパーティ客が楽しそうに過ごしていた。
「もうすぐダンスが始まるから、一緒に踊ろ?」
梨生は冬真に耳打ちをした。
冬真は無言で頷いた。