【phase8】変革と『毒』
@真夜中の廊下
ミーリャ「あの……ダリオさま」
宰相「はい?」
ミーリャ「私のせいで、王家と教会の関係が悪くなっているって本当ですか?」
宰相「本当ですよ。あなたには酷かもしれませんが、ユリウス殿下の為すこと全てを見届けてください。間もなく、変革のときが訪れます」
ミーリャ「変革?」
彼はわたしに小さな小瓶を見せた。その小瓶には、毒々しい赤い液体が入っている。
宰相「ユーリさまがずっと探し続けていたのは、この『毒』です」
ミーリャ「毒? ユーリさまは、本物のミーリャさまを探していたのでは?」
ダリオさまは、私の問いには答えなかった。
「この毒がもたらす結末を、あなた自身が見届けてください」
*
@朝 ミーリャの部屋
――その晩は、まったく眠れなかった。
ミーリャ「……朝一番に出向いたら、迷惑かしら。でも……」
さんざん悩んでから、ユーリさまのお部屋に向かった。
ミーリャ(ユーリさま、お怪我はだいじょうぶかな)
ミーリャ(『毒』を探してたって、どういうこと? その『毒』を何に使うの?)
分からないことだらけ。不安で、勝手に足が早まってしまう。
ユーリさまの部屋のドアを、ノックしてみた。
――返事はない。
嫌な予感がした。
ミーリャ「ユーリさま? 朝早くにごめんなさい……ミーリャです」
失礼だと分かっていながら、ノックを重ねる。
ミーリャ「ユーリさま。いらっしゃいますか? お体は、だいじょぶですか? あの……すみません、ユーリさ――」
かちゃり。と、静かにドアが開いた。
ユリウス「おはよう、ミーリャ。こんな早くに、どうしたの?」
疲れを残した表情で、彼は部屋から出てきた。
ユリウス「眠れなかったのかい?」
目をそっと細めてわたしを見つめ、わたしの頭をなでようとしたのか、手を伸ばしてきた。
でも――
ミーリャ「なにしてらっしゃるんですか? アポロ殿下」
わたしが答えた瞬間に、彼の手は、ぴくりと止まった。
ミーリャ「どうして、ユーリさまの真似なんかするんです?」
この人は、ユーリさまじゃない。兄のアポロ殿下だ。
アポロ殿下は、気まずそうに美貌をゆがめた。
ミーリャ「そもそも……どうしてユーリさまの部屋から、アポロ殿下が出てくるんですか? ユーリさまも中にいるんですか?」
アポロ「……」
返事に詰まるアポロ殿下を見て、嫌な予感がした。
ミーリャ「なかに入れてください! ……失礼します!」
アポロ「おい、君、やめろ」
私は無理やり部屋に入った。
そこで見たのは――
ミーリャ「ユーリさま!?」
死んだような血色になったユーリさまが、ベッドに倒れ伏す姿だった。








