【phase4】双子の兄
@ミーリャの部屋
アポロ「ユリウス! 貴様、いったい何を考えている!?」
びくっとして声の主を見ると、ユーリさまと同じ姿かたちの男性が、怒った顔で入り口に立っていた。
ユリウス「どうしました、兄上? ノックもなしに女性の部屋に立ち入るなんて、兄上らしくありませんね」
アポロ「黙れユリウス!! 貴様が幼い『呪われ聖女』を囲って慰みものにしているという噂は、本当だったのか!?」
なぐさみものって、なんだろう……? それ以上に、ユーリさまが目の前に2人いるのは、どういうこと?
ユリウス「ミーリャ。彼はアポロ。僕の兄で、この国の次期国王陛下だ」
ミーリャ「ユーリさまの、お兄さま……?」
ユリウス「僕らは双子なのさ」
アポロ「おい、聞いているのかユリウス! いますぐその子供を教会に戻せ!」
ユリウス「お断りします」
アポロ殿下は憎らしそうに顔をゆがめた。同じ顔立ちなのに、2人の態度はまるで対照的だ。
アポロ「では、貴様はその子供を妃にする気か? 国法の定めにのっとり、15歳になるまで待つと? ……本当は、結婚がめんどうだから時間稼ぎをしているだけだろう!」
アポロ殿下に怒鳴られても、ユーリさまは笑って首をかしげるだけだった。
アポロ「未来の王弟となる貴様がいつまでも国政に消極的だから、父上が業を煮やして、貴様に身を固めるよう促したのだぞ!? にも関わらず……恥を知れ、ユリウス!!」
ユリウス「僕は第二王子としての外務、内務……自分の責務は果たしておりますよ? 兄上を支えろというのなら、責務の範囲内なら喜んで。ですが、婚姻関係にまで口を出されるのはお断りです」
アポロ「なんだと……? ふん、気まぐれなお前のことだ。どうせその子供だって、中途半端に可愛がって、気が変わったら捨てるんだろう?」
ユリウス「私情に踏み込むのはおやめください。私は不出来な『気まぐれ者』ですので、兄上の説教など、響きません」
アポロ「貴様に振り回される、その子供が哀れだな!! おい、子供。ユリウスに心を許すな、必ず捨てられるぞ」
吐き捨てるようにそう言うと、アポロ殿下は部屋から出て行った。
青ざめて震えているわたしを、ユーリさまはそっと抱きしめる。
ミーリャ「……やめてください」
ユリウス「どうしたら、僕は信じてもらえるだろうか」
ミーリャ「ユーリさまは……いつか、わたしを捨てるんでしょう?」
ユリウス「捨てないよ」
ミーリャ「どうしてですか? ミーリャさんという女性に、似ているからですか。ニセモノなんか意味がないでしょ?」
ユリウス「意味はある。君が必要だ」
ミーリャ「必要……。結婚するのがイヤで、言い訳の材料が必要だからですか? でも……飽きたら、捨てるんでしょ?」
ユリウス「違う」
ミーリャ「アポロ殿下は、そう言っていました。気まぐれだから、と」
ユリウス「たしかに、僕は気まぐれ者だと皆に非難される。だが、気まぐれな訳ではない……他人に口出しされるのが不愉快で、勝手気ままなふりをしているだけだ。とくに婚姻関係は、絶対に他人に口出しされたくない」
ユリウスさまは、真剣な目でわたしに訴えた。
ユリウス「好きでもない女を妃にするのは絶対に嫌なんだ。だからこそ、僕には君が必要だ」
ミーリャ「つまり……わたしは、ユーリさまが本物のミーリャさまを探し出すまでの、時間稼ぎをすればいいんですね?」
ユーリさまは困ったような顔をした。
でも、わたしはユーリさまを困らせたくない。この人には、恩があるから。
ミーリャ「……わかりました、任せてください。だからユーリさまは安心して、愛する人を探してください! ……なので、できればわたしを捨てないでくださいね」
そうお願いしてみたら、ユーリさまは辛そうにうつむいてしまった。でも、やがて呟いた。
ユリウス「ありがとう」
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