【phase3】幸せなひととき
@ミーリャの部屋
すぐ気が変わって捨てられちゃうかと思っていたけど。
ユーリさまは毎日、わたしに優しくしてくれた。
ユリウス「どのお菓子も、王都の女性に大人気だそうだよ。好きなだけ食べるといい」
わたしに与えられた小部屋で、テーブルいっぱいにお菓子が並んでいた。
ミーリャ「わぁ……! お菓子なんて、生まれて初めてです。どれにしようかな……」
色とりどりのお菓子を見ていると、思わず目がキラキラしてしまう。
ユリウス「すべて君のものだ。好きに食べ散らかしていいんだよ」
ミーリャ「そんなぜいたく、できません!」
食べきれる分だけ1つずつ選んで、頬張っていく。どれもおいしい!
ミーリャ「……? これって……」
カラフルでやわらかそうなお菓子が並ぶなかに1つだけ、木の実を干しただけの質素なお菓子が混じっていた。
ミーリャ「ユーリさま。これも、王都のお菓子ですか?」
かじってみたら、固かった。何度も噛むと、じんわりと甘くなってくる。
ユリウス「いや。これは、白葉月の森という場所で採れる果実だよ。珍しいから出してみたんだが……気に入らなかったかな?」
ミーリャ「いいえ! わたし、これが一番好きです」
とても幸せな甘み。何度も噛んでいるうちに、お腹いっぱいになってしまった。
ミーリャ「ごちそうさまでした。ユーリさま!」
ユリウス「おそまつさま。また今度、用意させるから楽しみにしているといい」
おやつの時間が終わったところで、ユーリさまはわたしをまっすぐに見つめた。
ユリウス「ところで、ミーリャ。君は文字を読めるかな?」
ミーリャ「……え?」
わたしは、読み書きができない。
おろおろしていると、ユーリさまはそっとのぞきこんできた。
ミーリャ「ごめんなさい……全然できません」
ユリウス「あやまる必要はない。今日から君に、文字を教えたいと思っていた――おいで」
ユーリさまはテーブルからお菓子をどかすと、大きな本を取り出して椅子に座った。そして自分の膝をぽん、ぽんと叩いた。
ユリウス「おいで」
ミーリャ「おいでって……?」
ユリウス「こういうこと」
にこやかに笑って椅子から立ち上がり、ユーリさまはわたしを抱き上げた。
ミーリャ「ひゃっ!?」
そのまま椅子に腰かけて、わたしを自分の膝に乗せた。
ミーリャ「な、なにしてるんですかユーリさま!?」
ユリウス「書の勉強を。幼児が読み書きを学ぶときは、こうするのが一番だ」
ユーリさまがわたしの手を握り、1つ1つの文字の書きかたを教えてくれている……でも、集中できない。
くすぐったくて。恥ずかしい。
ミーリャ(ダメ……集中しなきゃ! バカだって思われたら、ユーリさまにがっかりされちゃう)
顔が熱いのをがまんして、勉強に集中しようとした。
そのとき――
バン、と激しい音を立てて部屋の扉が開かれた。
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