1 世界がファンタジー化した瞬間
「今日の晩飯どうしよう………………」
学校の屋上から見える景色は、いつもの見慣れた景色ではなかった。
所々の家は半壊、もしくは全壊。そして、ショッピングモールで有名なWAONは遠くから見てもカオスな状況と化していた。
☆ ☆ ☆
「こう。紫雨は『体育の授業中に、窓ガラスを割ってしまったので先生に怒られるっス!』とか言って遅れるって!」
「あぁ、分かった。………ていうか、アイツ馬鹿を通り越していっそ清々しい程のアホだろ」
図書室の中で小声で話してきたのは、1人の少女であった。
茶色のロングヘアに俺と同じ位の身長。そして、チャームポイントと言っていいのが前髪にかけている星型のヘアピンだ。
この少女こそが、俺と同じ学年であり幼馴染でもある───松本茜だ。
「テスト勉強する前に………やっぱり私はこのGwittergで書き込まれているのが気になるよ!」
「ん? あぁ、その事だったら俺も知ってるが………やっぱり嘘じゃないのか?」
「むむ! こうは、女のロマンがなってないよ!」
茜がそう言いながら、見せつけてきたのはGwitterの画面であった。
そこには本当なのか? という文章が昨日から突然、写真と共に書き込まれていた。
───例えば、『全力パンチでコンクリートの壁にひびを入れた』とか『木刀で机を斬った』
………などなどと、他にもこういう系がアホほど書き込まれていたのだった。
「ていうか、そろそろテスト勉強しないと時間がな───」
茜を丁寧に促そうとした時、目に映っている背景が瞬間的に変わった。
そこに映っていたのは、先程の本がずらりと本棚に並んでいた図書室とは異なり、机や教科書が散乱している教室。
そんな教室の中に、怯えていたのは後輩である紫雨。そして、目の前に立っていたのは不気味な緑色の化け物であった。
「こう? こう!」
「ッ!?」
「もぉ〜、ぼーとしてたけど大丈夫なの?」
「…………あ、あぁ。大丈夫だ」
(さっきのは一体何だったんだ?)
体感でほんの数秒。幻覚みたいなものではあったものの、自分の本能的な直感が疼いた。
───これは、実際に起こる事だと。
「茜。俺はすこし用事を思い出したから───」
ただの妄想かもしれないが、絶対無いとは言えない。そう思い俺は、席を立とうとした瞬間───
世界全てが大きく揺れる地震に、この場。いや、世界中の人々が聞いた恐怖の音であった。
☆ ☆ ☆
午後の4時30分。
窓から差し込む太陽の光に日常感が溢れる教室。
そんな教室の中には、1人の教師と1人の少女が話し合いをし続けていた。
「お前はなぁ! 毎日毎日、良くもまぁ先生に迷惑を掛けることが出来るなぁ!」
「はぁ、いつもの説教なんて聞き飽きたッスよ。早く終わって先輩の所に行きたいッスね!」
「お、お前なぁ。反省という文字はないのか!」
そんな説教(?)をしている途中、何の予兆もなく普段よりも大きな地震が起きた。
「何だ地震か!? くそっ、この大きさは震度いくつになるん………だ?」
その言葉を最後に、優秀とも言われた先生は心臓を刺され死んでしまった。
『グゲ、グゲゲ!』
「え? なっ、ひ!?」
先生を殺したのは、紫雨の知識に全くない化け物であった。
全身が緑色の肌である醜悪な外見に薄気味の悪い独自の言語。手元に持っている短剣を見せつけながら紫雨に段々と近づいてきた。
『グゲゲゲ!』
「あ、あぁぁぁあ!?」
いつものふざけた雰囲気を醸し出していた紫雨は、今はただ怯える事しか出来なかった。
───それもそうだろう。いくら何でも、人間は未知の恐怖には絶対に勝てないのだから。
「た…助けて。………先輩」
その言葉は、信頼出来る先輩───結城光星に都合よく届くはずも無かった言葉であった。…………しかし、それは本来の話ならばだ。
『グゲ!?』
「あぁ、任せろ。何たって、可愛い後輩の頼み事だからな!」
窓ガラスを割り、緑色の化け物を殴って登場したのは制服を着た少年であった。
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