表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

鎌倉子供風土記シリーズ「波の音と潮の匂い」

作者: 遠藤允春

 季節は思い出せないが、少し肌寒い夜遅い時間に、布団にくるまっていると小川に面した自分の部屋に

波の音が入ってきた。

海からは歩いて10分程の場所なので、最初は小川のせせらぎの音かと思った。

しかし、耳を澄ませていると明らかに波が打ち寄せ引く時の心地よい音色だ。

小川はほぼ真っ直ぐに海岸へ繋がっていて、部屋の前の少し離れた上流で左右から合流している場所が

石の壁になっていた。

たぶん波の音がここで反響して大きくなったのだろう。

波の音に混じって海岸線を走るトラックの豪快なエンジン音も混ざるが、頻繁ではないので気にならない。むしろアクセントになっていたかもしれない。

部屋にはテレビがなく、しかも今の七里ヶ浜のように家が乱立してなく、そこらじゅうが原っぱや空き地だったので、夜は自然の音だけでなく静まりかえったアスファルトの道路を人が歩く音まで聞こえた。

今は茅ヶ崎の海岸から歩いて10分もかからない場所に住んでいるが、波の音は全く聞こえない。

しかし、波の音は聞こえなくとも七里ヶ浜と同じように風向きで潮の匂いを感じることが出来る。

潮の匂いも同じ鎌倉でも場所や季節によって微妙に違った。

真冬は混じりっ気無しの凛とした匂いだが、夏場の原っぱで嗅ぐ匂いはむせるようだった。

目をつぶってもそれぞれの場所の匂いを今でも嗅ぎ分けることが出来そうだ。

たまに深夜に鎌倉の海岸線をドライブするのだが、ウィンドウを少し開けて匂いを嗅ぐ。

すると走馬灯のように昔の出来事が思い出され、様々な感情が込み上げた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ