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宇土城攻め決着

 翌日になった。


「さて、二の丸、三の丸も攻め口が見つからず、夜半の忍者の襲撃も失敗、と。」


 口を開いたのは相良長毎殿だ。厳しいなぁ。


「忠長卿、いかがなさる?」

「兵力ならこちらのほうが圧倒的にありますね。」

「ならば力攻めと?」

「いえ、後飯田様もいらっしゃるので周辺住民も動員できるかと。」

「見せかけの兵を並べて迂回して攻めるか!」


 と水野勝成様。


「いえ、そうではないので。ちょうど宇土城の堀の脇には山がありますね。」

「おお、その山に隠れて兵を置くか。」

「もしくはそこに一夜城か!そうであろ!」


 と諸将が口にする。


「一夜城は面白い考えではありますが、それを見て降伏するような殊勝な連中ではないでしょう。」

「ならば山をいかがいたす。」

「山を崩して堀を埋めましょう!」


 諸将はおれの言葉を聞いてぎょっとした。


「さすが徳川の血が流れているだけはある。」

「大坂城攻めの再来か。」


 こうして戦法は『まず堀を埋める』ことに決まった。

そして宇土城側が手を出してこれないように護衛の鉄砲隊を針鼠のように並べ大鉄砲も多数配置し、猛然とした勢いで山を崩して堀に放り込んだのである。それこそ切った木からなにからとにかくすごい勢いで。


 みるみるうちに堀は埋まっていった。橋のようにすらなっていたが俺は工事をそこで止めさせず、山をさらに崩しては堀を埋め……堀にはちょっとした演習ができそうそうなぐらい幅広くガッチリした通路が出来上がったのである。


 堀に通路が出来上がると諸将はそこから攻め上がって這い上がり、土塁の上の兵を引き倒すとわらわらと城内に突入した!


「堀を埋めてくるとは憎き内府の孫そのものだな!しかし城内では10倍返しだ!」


 と襲いかかる真田幸村と多分十勇士と思われる忍者軍団。しかし直属の手勢が少ないのは見て取れる。


 島津家・加藤家の精鋭が幸村に襲いかかった。幸村は不利と悟ったのか素早く兵をまとめると本丸に逃げ込んだ。


「しかしもう一方の毛利勝永は出てきませんねぇ。」

「毛利が出てくれば噛みごたえがあるのじゃがのう。」


 とちょっと寂しそうな水野勝成様。


そのまま進軍を続けて三の丸、二の丸は制圧してついに堀に囲まれた本丸のみとなった。


「残すは本丸のみぞ!」


 飯田直景殿が気勢を上げる。


「さぁ……あれはなんだ?」


 一同の前で本丸の門がギイイイィィ、と軋んだ音を立てて開いた。中からは堂々たる体格の騎馬武者を先頭に黒と朱の騎馬軍団が進んでくる。


「あの赤は真田幸村か!黒は?」

「毛利勝永。推参。」


 黒武者は自ら名乗ると兵を率いて突入してきた。


「毛利の死にぞこないがぁ!ここで我が槍の露と消えるが良い!」


 水野勝成殿が出てくる。二人は大坂の陣でも戦った関係である。小笠原、本多など諸将を撃破した毛利隊を水野殿が止めたのだ。


「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね。」


 水野殿が繰り出す凄まじい勢いの槍。それを毛利勝永は


「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄」


 と槍を合わせて止めてくる。


「お主!その勢い、さてはすでに人ではないな。」


 誰何する水野殿に対して


「……そろそろ味方も包囲陣を切り抜けたらしい。島津は厄介だったが加藤や相良のところを突破すればな。カテジナ。」

「ふふ、勝永殿。」

「そろそろ頃合いだ、頼む。」

「はいはい。」


 と進み出てきたのは明石カテジナ。


「闇の波動!」


 とカテジナが声を上げると、カテジナの周囲から黒い雲のようなものが渦になって立ち上がる!


「な、なんだこれは?」

「カテジナァァ!」


 聖剣ザビエルを構えた宮本武蔵がカテジナに襲いかかろうとするが、黒い雲で毛利・真田勢は覆い隠されて姿が見えない。

 聖剣ザビエルで黒雲を宮本武蔵が切り払うと、徐々に黒雲は晴れていったが……視野を取り戻した頃には毛利勢も真田勢も姿を消していた。


 毛利・真田が去った後に本丸に入城した俺達は、天守で天さんの出迎えを受けた。


「忠長様!」

「おお、天さん、無事だったか。」

「死体穴で復活して抜け出して来ました……殿手土産もありますぞ。」


 と天さんに案内されて天守の最上階に上がると、そこには三人の男が縛られていた。


「……加藤忠広、光広父子と……烏丸中将か!」

「はい。豊臣秀綱は毛利や真田に守られて脱出したので手が出せませんでしたが、こいつらは。」

「……うう、殿、こうなってしまっては言い訳が立ちませぬ……」


 飯田直景殿が泣いている。


「しかし加藤父子はともかく、烏丸中将は…うわぁ!」


 突然縛られてたはずの烏丸中将がスルッと立ち上がり、縄から抜け出したのだ。


「ふふふ。秘義、縄抜け。捕まったのワザとよ。徳川忠長、また麿の野望を邪魔しおって。決着をつけるでおじゃる。」


 とスラッと刀を抜く。


「……刀も取り上げていたはず。」


 と天さんは目をむく。


「忠長殿!下がって!ここは拙者が!」


 と出てきたのは松平忠輝殿。


「ふん、捨て童子か。良き相手よ。」

「烏丸中将!余裕でいられるのも今のうちだ!」


 と松平忠輝は飛び上がり、烏丸中将が構えた刀の上にスタッと立つ。


「ふん。相変わらずの道化師よ。しかし!」


 と言って烏丸中将は忠輝殿を支えている刀の左手を離して軽々と右手一本で持つ……なんという膂力。そして空いた左手で、忠輝殿のみぞおちを思いっきり殴った。


「ぐはぁ」


 忠輝殿が吹き飛ばされて反対側の壁に激突する。


「我覇王の道を邪魔できるものなどいないでおじゃる。」

「そうはいくかな?」

「お前は柳生十兵衛三厳!」


 そう、烏丸中将といえばこの男、柳生十兵衛が出てきたのである。


「烏丸よ、ここがお主の年貢の納め時。」

「麿は高貴な公卿なので年貢など収めたことがないでおじゃる。」

「言わせるか!」


 と十兵衛が斬りかかる。しかしそれをやすやすと切り払う烏丸中将。二人の激しい戦いは天守の外に出て高欄の上で繰り広げられた。


「俺、烏丸中将に剣を習おうかなぁ……」


 それを見ていた荒木又右衛門が思わずこぼす。


「十兵衛殿!下がるでごわす!」


 鉄砲隊を率いた島津家久殿が声をかける。


「さあ、烏丸中将よ、観念するのだ。」


 鉄砲隊を前にして烏丸中将は高欄の柵の上に飛び上がる。


「逃すな!撃て!」


 家久殿の号令とともに銃弾が放たれる。銃弾は烏丸中将の胴や胸をいくつも貫き、

烏丸中将はニヤっと笑ったかと思うと、口の端から血を流して………そして後ろ向きにどぉっと倒れて……本丸の堀の中に落ちていった。


 その時、俺は


「太秦秘儀、撃たれ役。」


 という烏丸中将の声を聞いた気がした。うん。聞き間違いだろ。いくらなんでもあれだけの銃弾を食らっているんだから。

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