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宇土攻め I

 俺忠長と愉快な仲間たちと島津・相良・殿抜き加藤連合軍はあっさりと宇土城を取り囲んだ。


「流石に包囲を阻止するだけの兵力はなかったようですな。」


 と加藤家家老、飯田直景殿。


「大坂のときのやり取りを考えると信繁と勝永ならむしろ討って出てくるかと思いましたがな。」

「なにやら秘策があるやもしれません。心していきましょう。」

「ところで攻め口はどこからにいたす?」


 と島津家久殿が言い出した。


「うーん。宇土城三の丸や外郭の方からだと距離もありますし、そこまで悠長にしていて良いものかどうかと。」


 と俺が悩んでいると。


「ならば二の丸から外へ橋がかかった門がありますからそこを狙いましょう。」


 と水野勝成殿が言い出した。そして


「かかれ!」


 と水野殿が戦闘を駆けながら号令すると橋を渡って二の丸の門の攻撃を開始した。

 二の丸の門は、想像以上にあっさりと打ち破られ、味方は虎口に入った。


「所詮は負け犬の集団よ、門を破るのも容易いわ!」


 と勝成殿が兵を進めようとすると、突然虎口の中は凄まじい煙幕で覆われた。


「ゴホッ、何も見えん!」


 そこに塀や土塁の上から猛烈な射撃を浴びせられる。


「いかん!ここは下がるのじゃ!」


 勝成殿が退却の指令を出し、慌てて下がるも追い打ちの射撃で味方は倒れていく。

そして橋の上に差し掛かると行きには気にならなかった猛烈な一斉射撃が浴びせられ、

城門を攻撃していた部隊は散々な被害を出してどうにか脱出した。


「ここは嵌められたようですな。」

「うーむ。ならば三の丸の方から攻めるか。」


 主力が三の丸の前についたとき、そこにあったのは出城であった。

 城から半円形に突き出された馬出しがあり、周囲に堀が掘られている。


「……これは真田丸。」

「知っているのですか忠輝様?」

「うむ。ちょうど大阪でもこのようなで出城を真田信繁は築いていたのだ。わしはちょっと自陣を抜け出して見てきたのだが、戻るのに時間がかかりすぎてたまたま自陣を視察に来ていた父上(徳川家康)に見つかってしまい、敵前逃亡と厭戦と言われて改易されてしまってな。」

「……忠輝様、それは前もって言っておけばよかっただけなのでは?」

「いずれにせよ真田丸を落とすのは至難の業ぞ。井伊の赤備えでも前田家でも落とせなかったのだ。」

「日ノ本一と言われた真田が相手となれば腕が鳴りもうすな。相良衆、共にまいろうぞ。」


 と島津家久殿が手勢を率いて真田丸に襲いかかった。


「チェスト!チェスト!チェストセキガハラ!」


 と絶叫しながら島津勢が突撃していく。いや、チェストセキガハラだと我が徳川家が相手になってしまうのではなかろうか?


 とはいえ、島津の戦いぶりは凄まじかった。味方が倒れても倒れても微塵も気にせず生き残ったものが土塁を登っていくのだ。


「真田は勇猛ではありますが、立て籠もっている兵はすべて生え抜きではないようですな。島津殿が押しております。」


 と柳生十兵衛。そうこうするうちに島津勢は土塁の上端にたどり着き、馬出しの中になだれ込みだした。とはいえおそらく百人以上は撃たれるか大怪我をして動けなくなっている。


「さすがは島津殿!敵には回しとうないですな。がはははは。」


 と遠眼鏡で見ていた水野勝成殿が豪快に笑う。この方、九州で暴れまわっていたけど考えたら島津が敵ということはなかったかも。


 島津勢は馬出しを占領し、旗を掲げた。


「音に聞こえた真田信繁もこんなものか。思ったよりも腰抜けだな。これを落とせぬとは井伊は大坂でなにをしていたのだ。皆の衆もここを橋頭堡に場内に攻め入ろうぞ。」


 と真田丸の頂上で大声を張り上げる島津家久殿。すると、対岸の三の丸の塀の上の櫓に真っ赤な衣装の武将が出てきた。


「お?井伊の赤鬼が文句を言われて出てきたか!」

「バカ言え。」


 と赤一色の武将がこちらも声を張り上げた。


「我が名は真田左衛門尉幸村!島津よ!お主らはたしかに精強であった。そこは褒めてつかわす!」

「こちらにしたら期待ハズレも良いところだわ!」


 と島津殿がやり返す。


「ふん!大口を叩きおる。しかし、のこのこと真田丸に出てきたことを後悔させてやる!痛い目にあいたくなかったら『真田様の兵を攻めて申し訳ありませんでした!』とそこで土下座しろ!」

「土下座だと?馬鹿言うな。断る!!」

「ならば倍返しだ!!」


 と信繁が手を振り上げた途端に、凄まじい爆発と煙が真田丸に立ち上がった!


「な?なんだ?」


 煙が晴れると、真田丸だったところは瓦礫の山となっていた。いつの間にやら幸村の姿は見えない。


「や、やつら、真田丸全体に爆薬を仕掛けて爆破したのか……」

「なんて無茶なことを……」

「まったくでごんす。」


 とそこに泥やホコリで真っ黒になった島津家久殿が現れた。


「家久殿!ご無事で!」

「あの程度の爆発、気合があれば。」


 ……さすが隼人は人間離れしている。


「しかし攻め手に割いた千人の内七百人が戦力とならなくなってしまったでごわす。さすが真田幸村、日本一の兵」


 評価がすっかり戻っている。


「ここは三の丸の前の橋も崩壊してしまったことですし、他の攻め口を考えますか?」

「それはまた明日にいたしましょう。」


 と本日の攻城は一旦お開きとしたのであった。


 ……夜半、天さん率いる伊賀忍軍が城内に侵入し、あわよくば真田などの暗殺を試みようとしたのだが、


「伊賀忍者の皆さんちーす。」

「お前は?」

「冥土の土産に教えてやろう。といっても洋風茶店にいる女給に土産を渡せ、というわけではないぞ。」

「なにをいいだす。」

「我が名は猿飛佐助。」

「そして霧隠才蔵。」

「伊賀の皆さん、死んでいってねぇ。」


 と無数の棒手裏剣が飛来し、伊賀忍軍は侵入しようとしたすべての場所で討ち取られてしまったのである。その中には天さんも含まれていた。


「佐助?死体はどうする?」

「うん才蔵、本丸の穴に埋めておこう。」


 と犠牲になった伊賀忍者の死体は本丸の死体穴に放り込まれたのである。もちろん天さんも一緒に。


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