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奴ら(挿絵あり)


挿絵(By みてみん)


部屋に入ると、湿気とホコリで鼻をつんざくようなカビ臭さが蔓延していた。


「うえっ」


と声が漏れ、シロはとっさにフェイスマスクで鼻を覆う。このフェイスマスクには鼻と口元にフィルターがあり、ガスマスクにもなる。効果は大きめのガスマスクに劣るが、匂いを消すことができれば、十分効果を発揮したと言える。


部屋の中を軽く見回す。

クロも言っていたが、やはりこの部屋は寝室で間違い無いようだ。ベッド、クローゼット、小さな壁掛けテレビがある。

部屋の隅には、は猫のような生き物の白骨が置いてあった。その前に花瓶が置いてある。


時計は壊れずに時を刻んでいるようだ。

すごく古い時計だ。デジタルではなく、アナログ時計というやつだ。100センチほどの縦長の時計で、木製である。木の独特な模様をそのままにしており、下半分には金の振り子がチクタクと音を立てて時を刻んでいる。その規則的な音が、部屋を包む静寂に響き、少しだけ焦燥感を溶かしてくれた。


「この時計持って帰ろうかな」


と思っているとクロが上がってきた。


「ちょっとシロ、クリアしたら合図してよ。何かあったかと思った」


ぷくーっと膨れながらクロが上がってきた。


「ごめんごめん。この時計の音聞いてたらなんかボーッとしちゃってさ」


クロは白の目の前にある時計に目をやった。


「わ、ずいぶん古い時計だね。アナログ時計ってやつ?振り子がついてる時計なんてなかなか無いよ。」


「持って帰りたいなぁって思ってさ」


「うーん、持って帰れない事はないけど、とりあえず家の中を探索して、荷物が少なかったら持って帰ろうか」


シロは嬉しそうに頷き、ドアへと向いた。

ドアに耳をつけ、物音を探る、しかしなんの音もしない。

シロはゆっくりとドアノブに手をかけ回してみた。後ろでクロがテイザーガンを構えている。


カチャリと音がなりドアは動いた。鍵はかかっていなかったようだ。


ギィィィ…と音を上げながら何年も開くことのなかったであろう扉を少しずつ開けていく。少しだけ出来た隙間の方に、テイザーガンを構えたクロが近づく。

しばらく確認すると、クロは左手でOKサインを作った。シロは隙間を広げていく。人1人が入れる隙間が開くと、クロはまたハンドサインで3.2.1と作り、バッと廊下に出てテイザーガンを構えた。


どうやら何もいないようだ。クロは構えをやめ、シロにおいでとサインを出した。

どうやら危険はなかったようだ。緊張と緩和が交互に続き、流石に2人の顔にも疲弊の色が少しうかがえる。


廊下は窓がないため、今出た部屋から差し込む光以外に光源はなく、かなり暗くなっている。部屋と同じようにホコリと湿気がすごく、壁にはカビやシミが元の色を変えている。


床の木材も、歩くたびにギシギシとなり、今にも抜けそうだ。床を踏み抜き、身動きが取れない状態で音に寄ってきた奴らと対峙するのは絶対に避けなければならない。


「まあ、行くしかないよね」


シロはクロの考えを見抜いていたかのようにそういうと前に出て進み出した。

なるべく腐っていない床を踏みながら、進んで行く。クロは変わらずテイザーガンを構え後ろから進んで行く。


その時だった。腐った壁の小さな穴から、ネズミが一匹クロの足元に走ってきた。


「うわっ」


いきなり苦手な生き物が出て来た事で、クロは反射的に後ろへジャンプしてしまった。

右足が付く瞬間に、バキッと大きな音を立てクロの足は腐った床を踏みぬいた。

その拍子に踏み抜いた穴からテイザーガンを階下に落としてしまった。


「クロ!つかまって!」


シロがとっさに近づき手を伸ばす。クロが手を握ろうとした瞬間、


ードタドタドタドタドタ!!!


何者かの足音がこちらに近づいてきた。

ーー奴らだ。

クロは瞬時に状況を判断した。この状態では、私は足手まといでしかない。


「シロ!足音は1人分!私はテイザーガンを持ってないから戦力になれない!」


そうしている間にも足音が狂ったように走りながらこちらへ向かってくる。階段の下まで来ているようだ。そこからダダダっと階段を駆け上ってくる。


シロも状況を理解し、廊下の奥、曲がり角の下へ続く階段に向かい直し、左手と左足を前に出し、戦闘の体制に入った。そう、1人で対峙する。私が最後の砦となるのだ。


「シロ…!」


クロがごめんと言う前にシロはこちらをチラッとみて


「茶碗洗い二日間交代ね!」


とニヒッと笑った。


ー曲がり角から、奴が姿を現した。

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