表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/24

扉の先の扉の先

化学の結晶である街を中心に広がる広大な自然。

その自然を200km、高さ30メートルの巨きな壁が囲んでいる。


さらにはその壁の中の自然を巨大なドームでいくつかに分け、温度、湿度、気圧に至るまでを管理し、様々な環境を作り出すことに成功している。


しかし現在、管理する人間はいない。

なのに電気が来ている。温度が保たれている。環境が保たれている。


なぜなのか?


この巨大なドームには化学の街が作り上げた人工知能が搭載されている。一つのドームにその人工知能がおよそ12ほど配置されている。


一つ一つに役割と担当があり、相互にコミュニケーションをとりながら管理、ケアを行なっている。


人間がいなくなっても、人工知能が壊れない限りこの動物園は存続していくのだ。



その動物園へ続く職員専用の通路に、二人の少女がいた。

むき出しの配管やメーター、ダクトなどが通路のあちこちを走り、熱気、蒸気が通路を満たしている。


「大きな生き物の体の中みたいだね」


シロは周りの配管を見ながら呟いた。


「そうだね。それならこの配管が血管で、この轟々となってる音は筋肉の擦れる音かな。」


「きんにくの擦れるおと?」


「そう、指で耳をふさいでごらん」


「こう?」


シロは両手の人差し指で耳を抑えるポーズをとった。


「うん、塞いだらゴーって音がなるのわかる?」


「やってみる」


人差し指で耳を塞ぐ。

ゴーーーという音が頭に響く。


人差し指を下ろしてシロは輝く笑顔でクロにこう言った


「ほんとだ!これが筋肉の音なの?」


「そうだよ」


シロは感動したように何度も耳を塞いでいた。




この通路は普段あまり通らない。

狩をするときに利用するのみだ。


しかし二人はさほど警戒はしていない。

通路は一本道で横道や隠れられる隙間がないので、感染者がいたらすぐにわかる。



更にはこの通路に入るためにはセキュリティカードがいる。

先ほどクロがスキャンさせていたカードキーだ。


感染者がスキャンをして入るということは考えにくい。

生前の記憶が強く残り、その行動を反復する奇行タイプならあるいは可能性があるが、仮にいたとしてもこちらは万全の装備があり、音の心配もないので銃火器が使えるのである。


少し歩くと通路の終わりに突き当たった。

そこには一つの鉄製のドアがあり、同じくセキュリティカードをかざす機械が横についていた。


「ここが体内ならあの扉はおしり…」


「やめて」


シロの言葉を遮り、クロは胸元のポケットからカードキーを取り出した。

ドア横の機械にかざすと扉はガシャンっという音を出し、ゆっくりと開き出した。


薄暗い通路へ煌々とした光が差し込み、徐々にその範囲を広げていく。


クロの吸い込まれるような黒髪にすら反射し、シロの純白の髪はさらにその輝きを増した。


二人は手のひらを前にかざし、目を細めながら外を見た。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ