説明しました2
何時間話したのか。体感的にはもうずっと話し合っている気がする。私はラークからの疑問に丁寧に答えている。ゲームとはなんなのか、どうして悪役令嬢になるのか、そして悪役令嬢にはどんな結末が待っているのか、様々な疑問に答えた。
「そんなことが起こり得るなんて・・・」
それでもやはり理解には時間がかかるようで、ラークは頭を悩ませている。
「お前の意思はなんなんだ」
不意にラークが私に聞いてきた。意思・・・。
「私はこの世界が、そしてリリーが大好きなんです。だから、この世界の結末を変えたくない。私は悪役令嬢リリー・ヴェリーとして生き、死にたいんです」
目線を下におろして私は微笑んだ。
「起きることを知っているから、もしもここで変えてしまったらリリーはリリーでなくなってしまう。私は悪役令嬢リリーが好きなので、それはしたくない。それにこれはチャンスだと思って。」
「チャンス?」
ラークが言葉の意味を理解できないという面持ちで首をかしげた。
「リリーを完璧に演じるチャンス。それは私にとってこの世界よりも大きな幸であり、やり抜きたいことなのです。だから、どうか私が転生者であることを黙っていてくれませんか」
私はラークの色の違う瞳を見つめた。ここでバレてしまえば終わりだ。なにもかも。私はとにかく真剣であることを伝えた。
「・・・」
沈黙が長い。やはり駄目なのか。心に不安が滲む。墨汁の中に白い布を入れたかのように心が不安を吸いとって染まっていく。
「分かった。黙っておく」
返ってきた言葉にポカンとしてしまった。黙っていてくれると聞こえた。
「ほ、ほんとに黙っていてくれるんですか?そもそも、信じてくれるんですか!?」
自分で伝えていたことだが、疑いたくなってしまう。
「お前はこの世界に詳しすぎる。その上、その元の世界のことも、にわかに信じがたいが嘘をついているわけではなさそうだ。嘘くらい見抜ける。攻略対象?の名前も調べれば分かるし、全てを信じる訳じゃないが、今は信じよう」
確かにラークであれば嘘くらい見抜けるであろう。そういう風な男だ。首の皮1枚繋がった私はガッツポーズをしてしまう。
「だが、」
ラークが私を睨む。
「もしも嘘をついていると判断したときはその終わりを迎えることなく俺の手で始末をつける。分かったな」
無機質な冷たい瞳で言い放った。先程まで騒いでいた私は体から血の気が引くことを感じる。もしかすると首の皮1枚というより、髪の毛1本なのではなかろうか。
「はい・・・」
1番バレてはいけない人間にバレた夜だった。
久しぶりに更新しました。
ノロノロすぎて亀に負けそうですね。
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