決意しました
勢いよく、ベッドの上で飛び起きる。
嫌な汗が身体中から溢れ、ベッドを濡らしている。
「ゆ、、め・・・」
違う。夢なんかじゃない。記憶だ。前世の。私の。
私は演技が好きで女優を目指していた。それに、小さい頃から空想的なものも大好きで、目に見えないものに惹かれていた。周りからは変な子扱いであったものの、何か問題行動をとるわけでもなかったし、それどころか先生の話をよく聞き、下の子の面倒を見て、どんな人にも丁寧で優しく、他の子が悪いことをしたら叱ってくれるしっかり者だと評判だった。と、あとから母親に聞かされた。
(“叱ってくれる”って・・・子供に任せず大人達ですればいいのに。)
先生の話をよく聞いたのは早く先生の話を終わらせたかったから。
下の子の面倒を見たのは子供の心の変わりようが面白かったから。
悪いことをしたら叱るというのは私が嫌がることをしたから。
丁寧で優しいのは、仲良くない人には本音をさらしたくないから。
つまりすべて、自己中心的な自分の性格が周りから見て“いい子”に見えた。というだけ。実際の私は、自己中の楽悦主義者だ。
私はあのとき死んだ。そして生まれ変わってしまった。前世の記憶を持ったまま。
(あのときのオーディション。結局、誰が受かったんだろう?)
私は笑った。この際、あのオーディションのことは、もうどうでもいい。何故なら・・・あのオーディションは、私を・・・リリー役を決めるためのオーディションだったのだから。
(これはチャンスだ。こんなに面白いことはない。人生をかけて、憧れの人を演じられるなんて・・・!!♪)
不適な笑みから恍惚とした表情にかわり私の細胞一つ一つまでもが幸せな気持ちで支配される。さっきまであんなに怯えていた心が現状を理解したとたん、踊り出す。その様子はまるで天の岩屋戸伝説をオマージュし、一人で演じているかのようだ。
(ああっ・・!!神様?仏様?ありがとうございます!なんでこんな風になったのか分かんないけど、とにかくありがとうございます!!♪)
これは、情けだ。神だろうが、仏だろうがどうだっていい。運命だ。こんなに面白い上に幸せなことはない。リリーを完璧な状態で演じることができる。声も姿も、前世では似せられなかったものがすべて同じなのだ。
「・・っあー・・・」
確かめるように、噛み締めるように、声に出す。
「ふふっ。」
笑みがこぼれ、すぐに奥歯に力を入れる。
(・・決めた・・・。・・・こんな面白いこと・・・逃しはしない・・・。)
「この人生、演じ抜いてみせようじゃない♪」
そのときの私の表情は、リリーとしては最低だが、悪役令嬢としては最高の笑顔をしていたと思う。
タイトル回収しました。良かったです。
ちょっと強引なんですが、すみません。
ご意見・ご感想、お待ちしております。
久しぶりに一話書けました(喜)