現状整理をしましょう
リリー・ヴェリー。
乙女ゲームアプリ『ラブ×2プリンセス!~忘却の花~』、通称;『ラブプリ』の悪役令嬢。女神のような外見を持ち、悪口さえもが賛美にしかならないほどどこをどう切り取っても完璧な令嬢。しかし、欲しいものはどんな手を使ってでも必ず手にいれる、という悪癖を持つ。
その令嬢が今目の前にいる。というよりも、私が《そう》である。
(少し銀の混じった金髪に青い目・・・。完全にそうだ)
少し頬をつねってみる。痛い。じんじんする。つねったところは少し赤みを帯びている。正常な反応だ。夢ではない。
(夢じゃないなら、なに?なぜ、リリーなの?リリーは・・・)
そこで一度考えを止める。今考えるべきことは、物事の優先順位だ。
一つ深呼吸をして、最優先事項を決める。なぜ私がリリーかはあとでいい。なら、今やるべきことは現状把握だ。
なんの因果かはわからないが、ラブプリについて、特にリリーについてはよく知っている。彼女は超名門の長女に生まれ、幼少時代から完璧な令嬢として有名だった。子供特有の可愛らしさはないものの、淑女としては理想的だ。
そんなことを考えていると、足音が聞こえた。足音が聞こえた瞬間に勝手に背筋が伸びる。きっと、リリーの条件反射というものなのだろう。そう思うと、リリーは常に誰かに見られることを意識し、常に気を張っている状態だったのだろうかと考えてしまう。
コンコン。ノックが二回鳴り、私が少しかすれた声でどうぞ、と返す。しまった。リリーは声がかすれたりしないのに。そう思っても顔には出さない。
「お加減は・・・大分優れたようで」
先程の青年が部屋に入りつつ私を見て言う。
「ええ」
必要最小限の言葉で返答する。大丈夫。リリーは元々使用人と仲良くするタイプの人ではない。現代日本的には、“事務的関係”という言葉で表せるような、冷たいというか、端的な、無駄と思われる私語は一切しないはずである。この返答でもおかしく思われない・・・はず。
「旦那様と奥さまに報告して参りました。とても心配していらっしゃいましたよ」
「そう」
「まあ、お嬢様は今までご病気をされたことは無かったと聞きましたから、多少慌てたり、心配になったりすることは分かるのですが・・・」
そう言いつつ、私の顔をじぃーっと見てくる青年。
「なによ」
「いえ、なにも。一応、まだ寝ていてください。先程お計りしたときは36度8分でしたが、上がる可能性があるので。」
(この男、体温計なの?なんでそんな細かくわかるわけ?)
「分かったわ。」
疑問を口にも顔にも出さないまま、私はベッドに潜り込む。豪華な掛け時計が9時44分を示している。リリーはなにも、努力もせずに完璧令嬢であったわけではない。リリーはどんな日であろうと10時前には寝ていた。美容のためだ。子供の頃からしていたかは定かではないが、一応寝ておこう。
ベッドに潜り込み、横になったまま確認も込みで青年に言う。
「お休みなさい。“ラーク”」
青年は驚きつつも答える。
「・・・ええ。お休みなさいませ、お嬢様。」
青年の名前がラークだということが分かった。
テッテレー~♪リリーは『セイネンノナマエ』を手に入れた!
まだ、タイトル拾えてないですね。あと五話以内には拾いたいんですが・・・。頑張ります。
長い物語だと、この拙い文じゃ飽きちゃいますからね。というか、自分が飽き性なだけなんですけどね。
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