王宮につきました
馬車に揺られること数十分。王様が住む王宮につき、息を整える。手に汗がじんわりと滲み、緊張していることがよく分かる。大きく息を吐き、顔をあげて大きく新しい空気を吸った。
「大丈夫ですか」
私の様子を見てラークが気遣う。
「大丈夫よ」
私はリリーの言葉遣いを崩すことなく答える。今からが勝負時だ。ここで完璧令嬢の名を汚せば、それはもうリリーとは呼べない。世界がはじめてリリーを認識するのだ。そう思っているとラークがいきなり私を抱き締めた。急なことに驚いて固まっていると、
「気負いすぎです。もう少し落ち着いてください。お嬢様はもっと自信のある方です。やってきたことを信じて。」
ラークの心臓の音が聞こえる。すると不思議と安心していった。自分の心臓も早く打つのをやめ、ラークの鼓動と重なるようにスピードを落としていく。浅かった呼吸も徐々に元に戻ってきた。しばらくしてラークの腕の中から解放された。もう緊張はどこにもない。ラークは何事もなかったように馬車を降りた。私もすぐに馬車を降り、王宮の中へと向かう。
「ありがとう・・・」
ボソッと言ったにも関わらず聞こえたようで、クスクスと笑いながら
「ええ。どういたしまして。」
それだけを返して私たちは仮面をつけた。
王宮の中はどこもかしこもがきらびやかでキラキラと光っていた。そこら中に宝石が使われているのではないかと思えるほどに輝いて、建物というより大きい宝石箱の中にいるようだ。周りを見回したいがキョロキョロしていては滑稽だ。リリーであるために今はグッと我慢をする。舞踏会はやはり子供などはおらず、大人で溢れかえっていた。お酒を嗜みクルクルと舞う大人たちを見て、本当にここはゲームの世界なんだと実感する。
「失礼。踊りませんか?」
20才ほどに見える女の人がラークに声をかけた。
「すみません。この子の傍についていなければならないので。」
愛想よくラークは返した。女の人はこちらを睨んできたが、私はそれに笑顔で返す。
「少しくらい離れても良いではないですか。ねえ、良いわよね?」
語尾に圧力を混ぜて女の人は私に問うてきた。年下と見たゆえに私への言葉は敬語が外れている。確かに10ほど離れているが、敬語を外される覚えはない。
「申し訳ないですが、まだ10歳になったばかりのこの子を置いていったとなれば旦那様に叱られてしまいます。それに見たところ貴女は上流階級のお人。わたくしめのような使用人風情はお側に立つのでさえおこがましいことなのです。踊るなんて滅相もございません。」
ニコニコと心にも思っていないことをペラペラ話すラーク。女の人は私の年齢を聞いたときに驚き、更にはラークの身分を聞いて更に驚いた。嫌みたっぷりの返事はそうとう効果があったようだ。女の人は少し顔を赤らめてそそくさと何処かへ行った。
「いったいわたくしはいくつに見えますの?」
少し不満げに言うと、
「せいぜい若くて13才、年を取っていて25才ですかね」
「随分と幅が広いわね」
「お嬢様は年齢不詳ですから」
「貴方に言われたくないわ」
そんな会話をしながら壁の花になること1時間。両親と合流し、ついに王族へ挨拶をする順番が回ってきた。
全然話が進まなくて申し訳ないです。
文字数なんですが、もっと増やすべきでしょうか。
たいてい1000文字を越えたら切るようにしているのですが。
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