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間違えました

 ラークにバレてからある程度の時間が過ぎた。その後、家族や他の使用人に気付かれる様子もなく、ラークがいかにリリーを見ているのかがよく分かった。ここで家族の名誉のために言うが、家族はなにも愛がないから気付かないのではない。忙しすぎるのだ。父は地区の責任を任され、母は孤児院などに顔を出しに行く。リリーは習い事を詰め込んでいるし、家族の時間というものが全く合わない。なので気付かなくても仕方がないのだ。


「舞踏会ですか?」


 そんなある日、1通の手紙が家に届いた。内容は舞踏会のお誘い。王室からの招待だった。私からの問いを受けて母は


「ええ。良い機会かと思って。せっかくダンスや礼儀作法を習っているんだし・・・」


 私は思考を巡らせた。多分、これはリリーと第一王子の出会いだろう。リリーは偶然見かけた第一王子を欲しいと思った。なぜ偶然見かけることができたのか。それは王室招待の舞踏会に出席していたからだ。


「出たいです。是非。」


「良かったわ。それじゃあ、そう返事をするわね!」


 嬉しそうな母を見て気持ちが和らいだ。しかし、何か違和感があった。何かが違う気がする。なんだろうと考えてみると、


「あ・・・」


 確か2人が婚約したのは13才のときだったはずだ。今は10才。私は馬鹿なことにまた選択肢を間違えてしまったのだ。嬉しそうにドレスやらなんやらについて話す母に行かないと言うことはできなかった。



「バカなんですか。」


 断定的にラークが言った。舞踏会に行くことになった経緯を話したらこの態度だ。


「わるうございました!だって言っちゃったんだから仕方ないじゃん。そんなことより、この選択がシナリオに関係してこないようにしないと!」


 私は頭を捻る。けれどなにも思い浮かばない。


「何も関係しないと思いますけどね。」


 呆れたようにラークは言った。バレた夜以降、誰もいないときは互いに素の状態で話すようになった。私の場合はリリーを保つのが辛いからだけど、ラークはただ単に私のことをなめているんだろう。私は冷たい視線をラークに送りながら、どんな厄介事が起きそうか考えた。


「婚約するときに初対面のはずなんだよ。だけど、今回の舞踏会では挨拶をしに行かなくちゃならない。初対面ではなくなってしまう。それに攻略対象者がうじゃうじゃいる場所に行かなくちゃならないんだからもっと気合いを入れてリリーを演じないと・・・」


 ラークは黙って花をいけながら聞いている。


「宰相さんっているのかな?」


「いますよ。」


 私のでかい独り言のような呟きに即座に反応し答えを返してくる。


「マム宰相だよ?」


「ええ。今年からつとめてらっしゃいます。」


「あの人今19でしょ。嘘だぁ。」


 机に突っ伏しながら言い切った。死んだときの私の年齢とそう変わらない人が王室の宰相をしているなんて・・・。考えるだけで頭痛がしそうだ。


「実力さえあればこの国ではやっていけますからね。」


 遠くを見るようにボソッと呟いた。


「ラークはなんでもできる完璧人間なのにどうして王政の方には行かなかったの?」


 私は何を思ったのか、ラークに聞いた。ラークは少し首をかしげて


「それは知りませんが、」


 そう言われてはっと気付く。王政に行かなかったのはゲームの中のラークだ。今のラークは別にその選択をしたラークではない。


「多分、リリー様に恩を感じ、一生尽くさねばと思っていたからでしょうね。」


 いつもの意地悪な笑みでなく、清らかな愛情に満ちた笑みをこぼしたラークにドキリとしてしまう。やはり、ラークは顔が良く、甘い。


「そろそろ時間ですよ。」


 時計を見ると寝なくてはいけない時間が迫っていた。


「おやすみ。ラーク。」


 ラークは使用人の顔を張り付けて


「おやすみなさいませ、お嬢様。」


 真っ暗にした部屋にはドアが閉まる音だけが響いた。

こういう凡ミスをこの子はちょくちょくやっていくと思います。

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