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捜索

「でここがこうだからこうなわけで・・・」

「セっセンセイ、計算が・・・違う気が・・・」


「この場面では登場人物がこうで・・・」

「何度間違えたらわかるの?名前間違えてますわよ」


「これとこれをこれくらい混ぜれば・・・」

「センセイ!配合量を間違えてます!」


「この文章でのこの言葉の使い方は・・・」

「あはは!また間違えてるゾー」


・・・イラッ☆


ほかの生徒はすでに家に帰り、校舎は昼間とは打って変わり、静寂が立ち込めていた。窓から夕陽が優しく差し込む職員室に俺は一人残っていた。一人寂しく。

今日は全体的に、ミスが多かったな・・・。こんなんじゃ教師失格だ。明日はしっかりしなければ。今日の授業の反省点をまとめ、俺は自分自身に喝を与えた。


っておい

なんで俺が教師の真似事なんてしなきゃいけないんだ?!


「あら、真似事なんかじゃないわ。あなたは正真正銘、本物の教師よ?」

「うわあぁ!いつからいたんですか?てか俺の心読めるんですか?!」

「ヒミツよ」

はやく仕事になれなさいねというと彼女―校長先生―は職員室を後にした。

今から数時間前、俺はこの人に無理難題を押し付けられたのだ。

『あなたにはこの子たちの先生になってもらいます』


「先生って言ったってなあ・・・」

俺はあの日—校長に呼ばれ、脚立から落ちた日に—元居た世界を去ることになった。

ここは、世間でいう異世界らしい。俺たちが住んでいる世界とは異なり、人間とは違う、人型の種族と共存し、帝国たるものが存在し、・・・魔法が存在する世界だそうだ。

俺がいる学校は、帝国の首都(帝都)『ヨウト』からだいぶ離れた距離にある『シロノ村』

にある。


そんな全く異なる環境で、あまつさえ教師として俺は生きてかざるを得ないのだ。なんで俺が教師?!ともちろん質問はしたが、まだ教えないわ、と校長に煙をまかれた。


「やべっ、教材教室に忘れちまった。」

いい加減仕事を終わらせたい。急ぎ足で教室に入ると、そこには俺の生徒が4人いた。下校時間はとっくに過ぎてるのに。

「おいおいお前ら、もうこんな時間だぞ。子供は早く帰ってご飯食べては磨いて寝なさい!」

「『子供』だなんて、あなたも年齢的にはまだ子供じゃなくて?」

「なっ、生意気な・・・ えっと・・・」

「『火』のフレイヤですわ。生徒の名前ぐらい覚えなさいな、『センセイ』」

この世界には魔法が存在しているのだが、それを使いこなせるもの『魔法使い』はほんの一握りしかいないらしい。俺が受け持ったクラスは、シロノ村にいる魔法使いの素質がある子供らのクラスなのだ。

この世界の魔法は基本的に4つの「属性」に分けられている。火、水、木、雷だ。これらの属性には某携帯魔獣戦闘ゲームのような相性の良しあしがない。魔法使いの意思によって時には火が水を蒸発させ、木が火を飲み込み、水が雷を弾き飛ばすこともあるそうだ。

さしずめ、強い魔法使いになるためにメンタルトレーニングをさせるのだろうか。うちの学校では。

基本4属性に加え、極々稀に「ネームド」と呼ばれる固有の魔法をもつ魔法使いが存在するらしい。そして、それがうちのクラスにも…


「ってあれ?お前らゼロはどうしたんだ?」

「あの子ならどっか行っちゃいました。どっかのくすぶってるお方のせいで」

「ずいぶんと口が達者になったものね、ブルーネ?蒸発させるわよ?」

「お互い様よ。高飛車な、お・嬢・サ・マ。」

「おいおい、ケンカはやめろって言ってるだろ」


フレイヤと今にでも一触即発なムードにあるこの子は『水』のブルーネだ。彼女の発言の通り、フレイヤはこの村のお偉いさんの娘さんなのだ。生まれのせいか、彼女の性格は、テレビでよく見るお嬢様そのものだ。クラスで常に一番、中心でないと気が済まないのだ。そんな彼女に反抗しているのがブルーネだ。正義感あふれる性格からか、または一般農民の生まれゆえなのか。彼女に敵対心のようなものを向けている。


「ゼロならまた戻ってくるんじゃないカー?いつものことだし。」

「そっそうだよね。…だっ大丈夫ですよセンセイ」


人一倍元気で陽気な彼女は『雷』のトール。対して、人見知りが激しい彼女が『木』のレストだ。レストはその性格のせいか、真っ先にフレイヤの標的になり、彼女の子分的存在だ。トールのほうは、そのお気楽な性格のおかげか、フレイヤとブルーネの対立からは離れている。


「そっかぁ。まあ、一応玄関行ってみるか。」

「ちょうど今から帰るところですし、ご一緒いたしますわ。」

「あら?じゃあ今回の勝負は私の勝ちでいいのね?」

二人の口げんかが再開した。ケンカするほどなんとやらというが・・・

俺たちは靴だながある玄関へと向かった。だがしかし、


「あれ?まだ上履き残ってる。」

「てことは、どっどこかにいるのかなぁ・・・」

「よーし!それなら探検だぁ!!」


どうしたんだろうか。校長先生から話を聞く限りでは、彼女はこの学校では交友関係をもンたないらしいが・・・。探検、探検とトールがはりきっている。何か嫌な予感がするが、杞憂だろう。ここは生徒たちに学校を案内してもらうついでに一緒にゼロを探してもらうとしよう。


「心配だな。よし、今から学校まわってゼロ探しに行くか。ついでに学校の案内も頼むぜ。」


こうして、俺たちは玄関を後にした。


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