アサシン誕生
歴史を絡めた異世界的な物語が書きたくて書いてみました。
もう18年ここにいる。この施設に。ずっと…ここで俺は生きていくのだろうか。仲間を殺し、友も失ったこの場所で。
「No.72!出ろ。」
突然呼ばれた。独房で座り込んでいた俺は立ち上がり外に出る。そして看守に袋のようなものを被せられ連れていかれる。どうやら訓練などの類いではないようだ。
何分も歩かせられた末に静止を命令された。ドアの開く音が聞こえる。ここはどこだろう。恐らく知らない場所だ。
「入れ。」
先ほどの看守の声がし、前へ進む。少し進むと目隠しの袋がとられ視界が開けた。
そこは広い部屋だった。壁には絵や知らない言語の文字が書いてある。他にあるものといえば本と本棚くらいだ。そして、部屋の中央に一人の黒ずくめの男が立っている。
「気分はどうだ?」
突然そう聞かれた。
「気分はいつもよくないです。それよりあなたは?」
恐らく自分より立場が上であろう人なので敬語を使う。
「私はこの組織のボスであり君をここに招いたものだ。」
黒ずくめの男は少し笑い答えた。
「ではなぜ私を呼んだのでしょうか?この組織は一体何なのでしょうか!?」
少しだけ怒気をはらんだ口調になる。なぜなら俺はこの組織にろくな事はされていない。俺は簡単になら日本、中国、英、仏、独、西の6各国の言語を話せる。普通は不可能だが厳しい指導のせいだ。勉学、特に語学関係は覚えなければひどい暴力を加えられた。訓練に関しては戦闘や体力づくりに筋トレ、本当にさまざまなことを休む暇なく行われた。なのでこんなことをさせる組織のボスに会ったことで少し怒りに震える。
「反抗的な目だ。だがまあいい。お前には期待しているのだ。」
一呼吸おき、そして
「お前の質問だがまずは最初の問いから答えよう。お前は今日から訓練生を終了し、正式に組織の一員となった。所属はアサシン。我が組織でも優秀なものでしかなれない。」
いきなり何なんだ。俺が組織の一員になりしかもアサシン?アサシンってのは文献で学んだが中世ヨーロッパの史料に出てき十字軍やイスラムの要人を狂信的に殺したとされる伝説の存在だ。
「私がアサシンになるというのは冗談がすぎるのでは?アサシンとは伝説の存在で任命されてなれるものではありません。」
俺はごもっともであろうことを言う。それにボスは返す。
「普通はな。だがお前はアサシンとなるための必要な素養がある。それは訓練で測ったデータが示している。」
「データ?」
「そうだ。お前たちの訓練はいわゆる適性検査だ。そのなかでお前は歴代のアサシンになった者としては最高クラスの成績を叩き出したのだ。」
「つまり俺たちはそんなつまらないことで………。」
声が震える。この男のせいで、この男のせいで。俺の顔は憎悪へと変化した。
「素がでているぞ。おっとそう言えば名前がないのだったな。」
どうやら俺の意思や気持ちはお構いなしらしい。俺みたいな奴の扱いは慣れているといった印象だ。
「お前にはそうだな。反逆がぴったりだろう。リベリオン。だがそのままでは名前というにはおかしい。少し短くしてリベル。うむ。リベル・フォン・パーカー。パーカーは……これは言うまい。」
黒ずくめのボスは言葉を濁す。本当に俺の怒りも意に介さない。
「一つ教えてやろう。具体的なことはまだ言わぬが仕事をきちんとこなせば褒美を与えよう。何か願いを叶えてやる。」
不敵に笑いながら俺にそう言ってくる。俺はいろいろ言いたい事があった。だが願いを叶えてくれるなら…
「リベル…センスのない名前だ。しかし、ありがたく頂戴いたします。」
少し頭を下げてそう言った。俺は友の願いを叶えなければならない。怒りは力になるが今は何の役にも立たない。自分を不利にしていけない。
「隠せぬ激情を感じるな。しかし、名前を貰ったということはお前は組織の一員となりアサシンだ。今日からお前はアサシン、リベル・フォン・パーカーだ。」
こうして俺はアサシンとなった。ここからアサシンリベルの物語が始まる。
リベルのことなどまだ分かっていないことも多いですが次の話で明かしていきます。