表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ショートショート

ある夜の奇跡

作者: 日乃本 奏多

目が覚めた。


ある日のこと。頭ははっきりと冴えている。


寝起き直後独特の怠さは感じられず、あるのはただ独特な高揚感のみ。


今にも踊りだしてしまいそうな興奮を私は感じていた。


そうだ、私はあの人に会うために……。


一度思い出してしまうと、いてもたってもおられず私は寝床を飛び出した。




目が覚めた。


ある日のこと。頭はまだ少しぼんやりしている。


目覚め直後の独特な怠さに僕は耐えられず、やっとのことで開いた目を、再び閉じた。


そうして、布団のぬくもりに意識を沈ませ……かけた瞬間、僕は思い出した。


そうだ、僕はあの人に会うために……


一度思い出してしまうと、いてもたってもおられず僕は寝床を飛び出した。




眼下には美しい星々がこれでもかというほど散りばめられていた。


そんな中でその青い星は他の星と異なる輝きを放っていた。


深い青の中にアクセントを与える明るい緑。


太陽の影となり闇に包みこまれるはずの場所にもぽつぽつと黄金色の光がともっており、それはそれで何とも言えない趣があった。


しかし、この星に恵みを与え続ける太陽だが、近づきすぎてしまえば蒸発させてしまう。


ちょうどいい距離を保つことが大切……か。


いつか言われたこのセリフが今になってやっと理解できた気がした。


瞬間、私は背後から羽ばたいてきた白い鳥の群れに気が付いた。


その鳥たちは僕の頭上をかすめるように通り過ぎると、目の前に広がり、遥か遠くへとつながる純白の橋を形作った。


やっと、あの人に……。


私は溢れ出てくる感慨を押しとどめ、走り始めた。


少しでも、ほんの少しでも早くあの人に会うため、僕は足を動かし続ける。


胸が裂けるかと、身が焼け焦げるかと思う日もあった。


でも、それでも……



私は、

   あの人を待ち続けた!

僕は、



二人は空白の時間を生めるかのように抱きしめあうと、涙を流し、再開の感動に身を委ねた。


星々はさらに輝きを増し、漆黒の闇を光に満たしていく。


そして、光はすべての闇を飲み込み、世界を白に染め上げた。


その中を、温かい光たちがふわふわと漂い、幻想的な空間へ姿を変えていく。


その中心で、尚、互いの体温を感じ続ける二人に言葉など必要なく、ただひたすらに抱きしめあった。


しかし、時間とは残酷なものだ。


先ほどまでしっかりと在ったはずの橋は端から順に光へ還っていく。


それは花火さながら美しいいろを交錯させながら、橋の中心で抱き合う二人に近づいていく。


そして、夜空に咲いた大きな花と共に、奇跡の夜は終わりを告げた。



『また会おう。次の7月7日に』


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] どこか詩的で、感情的な表現が上手いと思います。 不思議な雰囲気がSSらしくて良かったです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ