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いつもの

※あらすじで注意書きが書けなかったので前書きで。この小説は短編集のような感じです。基本的に違う章題ならばどこから読んでも大丈夫な様に書いていきたいと思います。片手間更新なので不定期更新になりますが、ご了承ください。

 地響きが凄い。…頭に響く。


 僕は横たわっている。なぜか? やられたからだ。

 しかし地に伏したとしても僕は戦わねばならない。

 この世界に住む…いやこの世界で生きる全ての生命を守る。


 その――使命のために。



「うわぁぁぁぁあああああああああああああああああ!!!!!!」



 それはもはや自暴自棄の特攻だった。

 策も確信もあった訳じゃない。


 ただこの"魔王"を倒さなくては、その使命感がボロボロで立つことさえままならない体に鞭を打った。



「リリィッ!!」

「リリィさんっ!?」

「嬢ッ!!!!!!!」



 仲間達の制止の声が後方で聞こえる。

 おそらく勇者は、僧侶は、騎士はこう思っているのだろう。


 勝機もなくたった一つの打開策も見えない圧倒的な力を持つ魔王に無策で突っ込むシーフだと。

 僕はこのパーティーでもっとも貧弱で、気弱で、脚しか取り柄がないような男。

 そんな奴が冷静さを失い命を散らそうとしている、と。


 そう――――――奴らは思っていることだろう。



「(ここだ――)」



 僕は確信していた。



「(すべてのフラグも時も場合も場所も、全て完璧っ☆)」



 後方から見てる奴らには見えないので顔を思いっきり緩ませる。

 それは決して死地へと向かう人の顔ではないだろう。


 しかし彼、彼女にとってそれはデフォだ。


 "いつも"こうである。

 特にめんどくさく"攻略"も難しかった世界では、その頬も緩んでしまうというものだ。



「(こういうベタな話は展開は読みやすいけど、話が長いのがいけないよね)」



 こういう古典的ファンタジーは腐るほどあるし、変わるにしても小手先で変える程度で大筋に変化はない。

 まぁその分"死にポイント"を見極めやすいんだけどもう食あたりである。



「リリィィィィィィィイイイイイイイッ!!!!!!!!!」



 そうこう考えている間に僕の体はとうの前に吹っ飛ばされ、体のいたるところに穴を穿ち、裂傷をたたえ見るも無残な姿となって仲間のところへと運ばれた。

 流石魔王、いい仕事をするものだ。


 さて、最後のお仕事。



「……勇…者…?」

「リリィッ! 良かった、まだ生きて――」

「無理だよ。…もう、僕はここで」

「ふざけるなッ! お前まで…お前まで死んじまったら俺は」



 あぁ泣くね、君泣くね。

 いやぁ、ここまで仲間とはいえ男の死にここまで涙を流されちゃうと友情ってものを信じたくなる。

 いや、僕には欠片もないけどね。


 ま、最後の一押しだ。



「勝って…」

「え?」

「アイツを…さ、倒して…仇をとって……そしてついでに世界でも救っちゃって…」

「リリィ…」

「…フィアンセに……謝…っくれると……助かる…」

「リリィ――」



 そして僕は、



「リリィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!!!!」



 呆気なく死んだ。



 ――…、



「もう、本当にさーいい加減にして欲しい」

「はいはい、でもお役目ですから我慢しましょうね」

「そんなの分かってるよ! でももうなんていうの!? こんな王道展開吐き気がするっていうか…俺がお前を守るキリッ、じゃないんだよ! もう傍から聞いてるこっちが鳥肌立っちゃうレベルで引く!」

「しょうがないでしょう、貴方からすればもはや見慣れたことかもしれませんが、彼にとっては一世一代のセリフだったんですよ」


 ラルクは出来上がったばかりの本を読み、そして僕にも読むか聞いてきた。

 冗談じゃない、読む気もない。


「気にならないんですか? 一応3年間旅を共にした"お話"ですし」

「いいよ。どうせ僕が死んで勇者覚醒魔王ボーンの流れでしょ。飽きたって、マンネリだって」

「否定はしませんけどね」


 そういってラルクは笑っていた――。


 世の中には、物語にはここぞというときに死ななきゃならない人がいる。

 こういうと語弊があるかも知れないが結果的にはその通りなのでそういうことにしておいて欲しい。


 人の死、友の死、血縁の死。

 死とは関わり合いが強いほど最も人に影響を与える事象の一つ。


 世界にはそれぞれの世界での物語があるが、どの世界でも死のウエイトは重くそして重大な意味を伴う。

 ベタな新たな力の目覚めと筆頭に、世界の命運を握る決断を決めたり、人を救ったり…あらゆることに死は多大な影響を及ぼす。


 ある意味では物事を解決するのに最も効果的な特効薬と言えるかも知れない。


 だからといって誰でもかれでも簡単に死ねる訳がない。

 だって人は一に自分が大切で、二、三ぐらいまで自分で。まぁ四ぐらいに他人が入ればいい方だ。


 つまり他人のために命を投げうる人なんてそういない。望むのも間違っている。


 しかし誰かが死ななければ問題は解決しない。


 その問題を解決するために生まれたのが、




 ――死に役――




「ラルク、次の仕事は何時?」

「そうですね。あと5分ぐらいですか」

「短くない!? せめて一日ぐらいゆっくりさせて欲しかったなぁ」

「死に役様は皆に、どんな物語にも必要とされていますから」

「あぁー、お調子役とかが羨ましいなぁ」


 どんな世界にも、どんな物語にも死に役は必要とされている。

 だから僕はそこにいかなくちゃいけない。


 だってそうしなければ、


「まぁ今度も頑張って死んで来てください。救世主(メシア)の一員として、ね」

「はいはい、分かりました」


 そこにある物語は、僕が死ななければ完結しないのだから。




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