吸血鬼で人間な僕
ちょっと遅くなりました。雑だったらすいません。
「僕を吸血鬼にしてくれませんか?」
僕はレミリアさんに向かって、そうお願いした。
「えっ!? なんで吸血鬼になりたいの? 普通の人間って吸血鬼を怖がって近寄らないでしょ? まして自分から吸血鬼になろうとするおかしなやつなんて・・・ もしかして、あなた変人なの?」
「普通の人ですよ。 違うとすれば他の人より、超能力者とかの特別な存在へのあこがれがかなり強いことですかね? 前に自殺したのもつまらなかったのが一番だけど、幽霊になりたかったのもあったんですよ。」
「あなたやっぱり変人よ。人間が幽霊になりたいだなんてそれとも精神年齢がまだ子供なのかしら?」
レミリアさんはあきれた口調でそう言った。でも、顔はうすら笑いを浮かべていた。
「まあその願い叶えてあげるわ、でもそれにはひとつ障害があるのよね・・・」
「障害? 血を吸うだけじゃないんですか?」
「まあそうよ、血を吸って私の妖力を代わりに入れるのよ。 だけど・・・ その血を吸うのが問題なのよね。」
「ん?どんな問題ですか? その作業、あまり難しくは思えないんですが…」
「 そうね、作業自体は簡単よ。問題は、私が少食なことだけなのよね。私っていつもあまり血を吸えないから、ちゃんと食べきれるかわからないのよね。」
「それでもいいです、もともと吸血鬼になる機会なんてないんですから、失敗しても文句は言いません。」
「成功はする運命なのよ、でも物凄くこぼすかも… 出血多量で死なない保証はしないわよ」
「了解です、お願いします」
「あなたの覚悟受け取ったわよ、そして最後に…『咲夜~ 掃除の準備しといてー』」
『かしこまりました』
「よし、これで準備完了ね。」
「なんで掃除の準備を?」
「これからあなたの血で汚れるからよ」
レミリアさんはそう言うと僕の両腕を掴んだ。 僕は驚いてその手を一瞬振りほどこうとしたが、信じられないくらい強い力で封じ込められた。
「動かないほうがいいわよ、動くと痛くなるわよ」
「は、はい・・・」
僕はそう言われたとたんピクリとも動かなくなった。
しかしそれは僕が素直だったからだけではない、腕力と妖しい笑顔によって強制的に震えることさえできなくなったのだ。
「それじゃあ、いただきます」
レミリアさんは『パクッ』と、効果音がつきそうな勢いで首筋に噛み付いた。 でも全く痛くはなかった、どちらかといえばくすぐったかった。
「ひょにょままふごかにゃいでにぇ(そのまま動かないでね)」
「噛んだまま喋らないでください。何言ってるかわからないし、くすぐったいです。」
こんな調子でレミリアさんは二~三分ずっと噛み付いたままだった。
だがある時異変が起こった。生暖かい何かが胴体を伝い足へ流れていった。 そして何故か僕の服がどんどん真紅に染まったのだ。
正体はすぐに判明した、もちろん血だ。
その血は僕の首から胴、足へと伝わり既に床は小さな紅い水たまりになっていった。
「レ、レミリアさん ちゃんと飲んでますか?」
「ほう、ふりひゃも(もう、無理かも)」
この会話をした直後、僕の意識は物凄いスピードで薄れていった。 理由ははっきりしている、絶対に出血多量だ。
「ヤバイ・・・・」
そう言った直後、僕は倒れた。 最後に見えた景色は僕のの血で真っ赤に染まった絨毯と、どこか満足げな顔をした血まみれのレミリアさんだった。
―――――☆――――――
「…きなさい。 零徒、起きなさい! 聞こえてるでしょ!!」
「・・・ん? レミリアさんですか? まだ眠いです、後3分だけ・・・」
「ふざけてるのなら踏むわよ」
「痛っ! 踏みながら言わないでください。起きました! 起きましたから、足の裏をどけてください。」
そう言うと最後に強く踏んだあと僕を解放してくれた。 僕はマゾではないので背中に鈍い痛みが残った。
「 シンパイシタジャナイ… 」
「なにか言いました」
「何でもないわよ!失敗したかと思っただけ。」
カァー、とレミリアさんの頬が紅潮した。その後顔を隠すように顔を伏せたが、すぐ向き直った。さっきまでの自信に満ちた顔に戻っていた。
「それじゃあ、しかっり今の自分の姿をその目に焼き付けなさい」
レミリアさんは、かなり大きな鏡を僕の前に置いた。言ったら悪いと思うけど、鏡の横に立つとさらに身長が低く思えた。
鏡を見るといつもの僕、それと羽っぽい形をした透明な結晶、そしておかしなタグが映った。
「えっ!? これは氷…じゃない! 冷たくない、水晶か何かなのか? でも、形的に羽?なのかな? それにこの表示は・・・汚れじゃないよな? HP460?」
いきなり羽っぽい水晶みたいなものが生えていた上に、おかしなタグっぽい表示がある為、僕の頭の中は疑問符が縦横無尽に踊った。
「驚いたかしら? 一応吸血鬼っぽくはなったわ。」
「ぽく? そんなことより、これって羽ですよね? 水晶の意味って一体?」
「そんなこと知るわけないでしょ、あなたがそうなる運命だったてだけでしょ。」
「何か適当にごまかしませんでしたか? でも、運命ですか・・・ なら、仕方なしですね。」
「そんなことより先に忠告しておくわ、吸血鬼になってるうちは、日光・流水・etc に弱いから気をつけて。」
今までの説明で疑問は大方解決した。
でも、もうひとつの変な表示がわからなかった。
しかもレミリアさんを見てるとレミリアさんの周りにどんどん表示が増えていった。だいたい5秒置きくらいにひとつずつ増えていった。
「レミリアさん、レミリアさんの周りに何かタグっぽいのが見えるんですけど、これも吸血鬼の力ですか?」
「タグ? そんな力はないわよ。 それは多分あなたのオリジナルの能力じゃないかしら? そのタグには、どんなことが書いてあるの?」
「えっと・・・ 名前…レミリア・スカーレット HP…1680 種族…吸血鬼 ある程度の運命を操れる
バストサイズ…えィ…グハッ!!!?」
突然腹部を今までで最大の痛波が襲った。前に食べたものを逆流しそうになった。
「れ、レミリアさんいきなり何を・・・」
「あなたにはここで働く前に、みっちり作法を叩き込む必要がありそうね… そうね、電気椅子がいいかしら?」
「聞き間違いですか? 今、処刑器具の名前が聞こえたような・・・」
「空耳よ、それより話を戻すわ。あなたに見えてるソレは、あなたのオリジナルの能力よ。 たぶん相手の情報を見てるんじゃないかしら?」
「そうなんですかね・・・ 」
こう言いながら、自分の顔は勝手に笑っていた。
「なんかこういう特殊な力って、ゾクゾクしますね。」
「そうかしら? 普通ドキドキはしてもゾクゾクはしないとおもうわよ。やっぱりあなたは変人ね。」
「変人って呼ばれるのは嫌です。あ、そういえば気になってたんですが、タグに表示されたレミリアさんの運命を操れるって一体どんな能力ですか?」
「あー、それのことね。 あまり詳しく自分でもわからないんだけど、相手の運命を少し見れたり、ある程度の運命を操れるわね。
例えばアンパンとクリームパンがあってどっちを食べるか私が操って、無理矢理アンパンを選ばせたりできるわね」
「(たとえが可愛い)何かすごい能力ですね」
「そうよ。人生は選択の連続よ、その選択を操れるんだから、やろうと思えば一人の運命を大きく変えるくらい簡単にできるわ。」
そう言って嫌な笑いをこっちに向けた。
「怖いからやめてください、僕の運命を操りすぎないでくださいね。」
「そんなもったいないことしないわよ。あなたはこれから、とてもおかしな運命をたどるわよ。 あ、いまのは私の勘ね。
そういうおもしろいのは、見守りたいじゃない。 それと、眠くなってきたから話はまた今度しましょう。
おやすみ」
最後はかなり強引に話を終わらされた。でも、吸血鬼になったこと・能力があることの興奮で気にならなかった。
だが、その興奮も眠気に負けて消え失せた。僕は、静かにベッドに倒れこみんだ
―――――☆――――――
朝起きると、また面白いことが起こっていた。
部屋全体が白一色になっていて、昨日まで赤だった天井も白、鏡に映る風景も白一色だった。
次回原因が明らかになるので見てる人が居ればお楽しみに。