看護系彼女
ヤンデレ成分なし。
後はタイトル通りだと思います。
前編は下記URLよりどうぞ。
http://ncode.syosetu.com/n2143bi/
ルコ「大丈夫?」
1年ぶりのクリスマスだ。
望まなくても毎年やって来るのだから、全くもって律儀な行事である。
現在時刻は朝の8時過ぎ。
ルコにしては珍しく「今日は何の日でしょー?」なんて展開はなかった。
去年は疲れるくらいにやっていたというのに。
さて。
今ルコは俺を優しくも切なげな表情で見つめている。
別に、ホワイトクリスマスにしてくれないから、とかそういう事ではない。
雪を降らせる能力なんて、そんな人外のような事は出来ないし、ルコも知っている。
ではなぜ、この真冬に裸ネクタイをしている彼女が俺を見つめているのか。
なぜ俺は布団の中で、ゆっくりと横になっていることが出来るのか。
ルコ「お粥作ってくる? 何か食べないと薬飲めないよ?」
薬っていうのは、ヤバい方の薬ではない。
むしろ、ヤバい時に飲む薬だ。
俺「悪いな…せっかくのクリスマスなのに…」
ルコ「ううん、平気だよ。また治ってからやろうね?」
俺が熱を出して、つまり風邪をひいてクリスマスが中止というわけだ。
ルコは俺から離れるのが惜しいような表情をしていたが、やがて台所に向かっていった。
さっき、「今日は何の日でしょー?」をやってないといったが、半分嘘だ。
正確には、やったが止めた、だ。
深夜2時くらいにルコに起こされ、決めゼリフを聞いた。
が、前日から調子の出なかった俺は、その時すでにダウン寸前。
いつもと様子が違う事を察してくれたまな板の彼女は、静かに眠らせてくれた。
そんな心温まるエピソードが6時間前にあったわけだ。
…あったらしいが、あまり覚えていない。
熱のせいなのか何なのか、今のは全部ルコに聞いた話。
いつもは怪しげな事を考えてそうだが、こういう時には誰よりも優しい。
もう怖いくらいに。
こんなに優しいルコを見ていられるのなら、俺は何回だって風邪をひく。
しかし、普段から健康に気を使ってくれる人が隣にいるので、そんな機会は滅多にない。
今回は偶然にもクリスマスと被ってしまったが。
結露した窓ガラスは、外の風景を見せてはくれなかった。
俺「待って…まだ熱いから…」
こんな時にもツッコミを忘れてはならない。
なぜならば、それが任務であり生きるという事だからだ。
プラスチック製のレンゲに乗せられた一口分のお粥は、張り切り過ぎなほど湯気を立てている。
そんな状態のまま口の中に入れられたら、火傷は免れない。
作りたての手料理を食べられるというのは嬉しい事なのだが…。
ルコ「冷ましてあげるね」
息に吹かれた湯気は、匂いと共にこちらにやって来る。
ある程度冷まされたそれは、ルコの口の中へと収められた。
まさかとは思うが…、いや、それ以外に考えられない。
俺「分かってるか…? 風邪引いて…」
躊躇なく口内に飛び込んできた半液体状のモノを、嫌がることなく受け入れた。
風邪のせいなのか、頭では分かっていたが実際にやられると止められない。
離れた2人の唇の間には、白銀の糸が一本垂れ下がった。
ルコ「もう一口」
が、この「もう一口」が終わらず、一食分のお粥を全て「もう一口」で食べ終えてしまった。
もう口の周りは涎なのかお粥なのか分からない状況に。
確実にルコも風邪引くだろうな…。
いやでもルコの事だから…どうなるか…。
俺「最後に…拭いてくれると嬉しい」
ルコ「わかった」
拭いてと頼んだはずが、再びルコの顔が近づいてくる。
何をしようとしているのか、まるで手に取るように考えが分かる。
…まぁ、綺麗にはならないだろう。
終わってからタオルを持って来てもらい、きちんと拭いてから眠りについた。
普段より疲れた気がするのは、きっと気のせいだ。
身体的だけでなく、心まで痩せた気がするのも、たぶん気のせいだ。
寝ようとしたはずなのに、こうして起きているのは、気のせいではない。
俺「…なんで、隣に?」
ルコ「あったかいよ」
俺「…」
風邪がうつるという概念がないのだろうか?
それに、ほぼ全裸の彼女が隣にいるというのは、かなりアレなわけでして。
いくら体調が悪いとはいえども、少しはそういう事も考えてしまう。
だが、明らかに反応は悪い。
いつもの状態なら、とっくに襲っているころだろう。
風邪の恐ろしさか…。
俺「うつるぞ…?」
ルコ「全部ルコが貰ってあげる。体液も、ウイルスも」
言う割には、これといった行動も起こさない。
ただじっと、俺の隣で一緒に寝てくれている。
ルコなりの気遣いなのか、何なのか。
俺がすっかり眠って、空が夕日で染められようとしていた時も、ずっと隣にいた。
起きたのは夕闇色の空が見えた時間だった。
ルコ「おはよ」
いつから起きていたのか。
俺が目を開けるのとほぼ同時に聞こえてきた。
隣に寝ている彼女は静かにほほ笑む。
この後の展開が分かっているかのように。
ルコ「汗かいたでしょ? 拭いてあげるね」
布団を強制的に剥ぎ取り、ちょうど俺の下腹部の上に馬乗りになっているルコ。
怪しく笑いながら、ゆっくりと俺の服のボタンを外していく。
右手、左手、どちらにもタオルは握られていない。
一番下のボタンまで外し終わると、自分を体を倒し、一つに重なった。
そのまま前後左右に擦れ合う。
自らの体をタオルのように使いながら。
俺「…なぁ」
ルコ「なぁに?」
俺「治ったら、な…」
正直、まだ辛い。
朝の時よりマシにはなったが、それでも本調子ではない。
誘惑していることは分かっているのだが、どうにも感度が悪い。
ルコ「お腹空いた? 何か食べたいものある?」
上から降りて、服も布団も元通りにしてくれた。
優しさに泣きそうになりつつ、構ってやれない事を悔やんでもいた。
俺「あんまり…食欲ないわ…」
ルコ「ちゃんと食べないとダメだよ」
翌日には、完全とは言えないが治ってしまった。
一方ルコは、なんともないようで、俺の上に跨って上下に動いている。
一日遅れのクリスマスプレゼントといったところだろうか。
いつもルコに与えられてばかりだから、たまには俺からも優しさを与えてあげようか。
看病と日頃の感謝を込めて。
やりたかったこと
・口移し
・自分の体を使って相手の体を擦る
・ルコが看病
もうちょっとハードな看病にしても良かったかな…?