fluorite4
エドーニアは高地に位置するため、他の地方よりも春の訪れが遅い。
エドーニアが春の盛りを迎えた今、王都は春の終わる季節になっている。
私は明るくて暖かな陽が差し込むアトリエで、お父様の絵に最後のひと筆を描き入れた。
明るい野辺に伸び伸びと横たわるお父様の姿は、穢れ無く安らかで、きっと誰が見てもただうたた寝をしている場面にしか見えないだろう。
私は静かに瞼を閉じた。
瞼の裏のお父様も絵と同じやすらかな姿で、明るい……暖かな日差しの下、気持ちよさそうに横たわり目を閉じていた。
ほっと息をつき、笑顔を絵の中に眠るお父様へと向ける。
悲しさからではない涙が、頬をあたたかく濡らして落ちた。
なんだかここに帰って来てから『フロー』と名乗っていた時よりもたくさんの涙を流しているような気がしてならない。
昔お父様が仰ったように、私が『流れる涙』の韻を踏む、フローティアなどと言う名前を持つせいだろうか。
だけど、別に涙のすべてが苦しくて苦い味をしているわけで無いことを、今の私は知っている。
この涙のお陰で私は顔を上げて歩きだすことが出来るだろう……。
レレイスの一行が美々しく飾った何台もの馬車と騎馬を連ねてエドーニアに到着したのは、絵を描き終えてほどなくのことだった。
兄様には既に私からシバル伯爵とのお話を進めてくれるよう話を通し、兄様もレレイス達の滞在が終わり、王都での婚儀の際にでも本人にその旨を伝えると仰っている。
先方は子供たちも大きく二度めの結婚、何よりも私の脚の事もあり派手な宴などは行わないだろうけれど、暫くの間は支度などで忙しい日々を暮らすことになるだろう。
母様はアトリエで乾かしているお父様の絵を見ながら、親子ほども年の離れたシバル伯のところになど嫁がずずっと家にいれば良いのにと溜息をついた。
「兄様は兄様なりに私の事を心配してくださってこのお話を持ってきてくださったのよ。シバル伯爵は本当に優しい良い方らしいじゃない。親子ほど年齢が……とお母様は仰るけれど、シバル伯爵のように都合の良い相手でもいないと私、結婚生活と言うものを味わう事もなく終わってしまいますわ。……それに……お歳がお歳の方ですもの。もしあちらに何かあったらまたこの屋敷に戻らせていただくわよ」
悪戯っぽくそう言って笑ってみせると、母様も諦めたように笑みを浮かべた。
兄様はとてもお忙しそうにしておられる。
雪解けと同時に街道の整備に追われ、レレイス達花嫁の行列に泥をつける事の無いように、各所に目を配り細心の注意を払わねばならないからだ。
屋敷もここ暫く上を下への大騒ぎで、掃除や模様替えに立ち働く使用人やその指示を兄様や母様が取り仕切り、私も少しだけお手伝いをさせてもらったりしていた。
苦労の甲斐あって屋敷の上階で遠目から見た限りでは、レレイス達が乗った馬車にもその周囲を守るように取り巻く騎馬にも、泥や汚れは見られなかったようだ。
兄様もとりあえずはホッとしているに違いない……。
私は鏡の前に立ち、髪や衣装に見苦しい点が無いかを確認した後、自分に気合を入れるためにピシっと両手で頬を打った。
レレイスがエドーニア訪問の挨拶を領主である兄様に述べる席に、母様とともに私も同席しなければならないことになっていたからだ。
疾しいところや後ろ暗い所などあるとは思わないけれど、なんだかレレイスに会うのが怖い……。
溜息をつきながら私は窓の外の景色を眺めた。
普段は緑の芝生の広がる前庭には、鮮やかな色に染め抜かれたアグナダ公国の国旗とリアトーマ国の国旗が幾織もはためき、人々が忙しく立ち働く姿が見えている。
屋敷の中に投宿する人間はさほど大人数ではないのだ。
レレイス始め彼女付きの侍女達と、彼女の警護を執り行う騎馬の中の騎士爵以上10人程と、これを指揮し、更にレレイスの介添えとして同行する上位貴族が一名。
その他の者たちは皆、屋敷の敷地内に美しい色の天幕を張りそこで休むことになっている。
大きな緑色の鍔付き帽を被った男性が、遠くで天幕の設営の指示を出す後姿が目に入った。
たぶん、一行の指揮兼レレイスの介添え役の貴族だろう。
私は兄様や母様とともにレレイスとの面会の場である部屋の扉前に立ち、誰にも聞こえぬようこっそりと深呼吸をした。
レレイスは何人かの侍女に取り巻かれ、相も変わらず美しい堂々とした姿でそこにいた。
他国に嫁ぐ彼女は今、心細くおられることだろう……などと、私が勝手に想像していたような心細げ様子は微塵も見られず、とても落ち着いた表情をしていた。
彼女のその強さに、私は感動をすら覚える。
兄様の述べるこの度の婚姻への寿ぎの言葉を、その地位の高さによって高ぶるでもなく遜るでなくごく自然に聞き、返礼の言葉と休息の場所を貸してくれたことへ対する礼の言葉を話す彼女はとても素敵だった。
「このような大所帯で心苦しゅうございますけれど、数日間、この地で英気を養わせていただきます。……外での準備が整わず、私の介添え人からのご挨拶が遅れます事、当人に代わってお詫びいたしますわ。後ほど、改めて彼からエクロウザ殿には直接ご挨拶致します事でしょう」
微笑みを浮かべて兄様へと言葉をかける彼女が、ふと私に目線を向けた。
もしかしたら彼女は怒っているのではないかと危惧していた私は、思いもかけず笑みを含んだ瞳と出会うこととなる。
「フロー……お元気だったかしら? 貴女にまたお会いすることが出来て、とても嬉しいわ」
私はどぎまぎしながらスカートを持ち上げてぎこちなく一礼した。
「ああ……レレイス様は、フローティアとは……」
「ええ、彼女とはバルドリー卿のお屋敷でお会いしておりましたの。エクロウザ殿、実は彼女がこの度のサザリドラム王子と私のご縁を取り持たれる役をなさった事、ご存じでいらっしゃるかしら?」
青い瞳の中に、少しだけ悪戯っぽい光を浮かべて語るレレイスの言葉に、私は驚き、兄は訝しげな表情で首を傾げた。
「卿のお屋敷でお会いした時に私、彼女に肖像画を描いていただいたんですの。それは素晴らしい出来でしたわ。それで、予ねてよりお話のあったサザリドラム王子へとその絵を届けていただいたところ、王子は私の事をいたくお気に召して下さったようで、それから先は潤滑にこのお話が進んだというわけですのよ」
にこやかに語る彼女に、私は思わず口をぽかんと開いた。
あの時のあの絵を、彼女は自分のお見合い用に王子に送り届けたと言うのか?
「フローティアの描いた絵を、ですか?」
「……まあ……」
兄様や母様は驚いて私を見る。
私だって驚いた。
だって……あの絵は……。
私が口を開こうとした時、扉が叩かれた。
訪れたのが何者であるのかに気づいたレレイスがニッコリと満面に笑みを浮かべるのが見えたけれど、私は礼儀上背後を振り返るわけにも行かず、その場に控えた。
「───ああ、私の介添え役が到着したようですわ。本来ならこの役はドルスデル卿にお任せすることになっていたのですけれど、卿は折悪く腰を痛めてしまいまして……。代役はマルタ卿にお願いするべきなのでしょうが、卿はご高齢───」
緑の大きな鍔と派手な羽飾りのついた帽子を被った背の高い男性が、堂々とした足取りで私の横を過ぎてゆくのが目に入った。
長い緑色のマントが翻る。
さっき外で指揮していたあの人物だろう。
「───そこで、彼に来ていただきましたのよ」
レレイスの横に立った人物が、大きな帽子を脱いで胸元に手を当ててこちらを向いた。
私の心臓が急激に、妙なリズムを刻みだした。
いつも無造作に結わえていた髪の毛が、襟脚くらいの長さに刈られている。
不精ひげは綺麗に剃られ、代わりに威厳ありげな髭を鼻の下に蓄えてはいるけれど……。
「エクロウザ殿もご存じの方ですわ。ね、バルドリー侯爵?」
「お初にお目もじつかまつります」
……グラント……!
真面目くさった表情で堅苦しい挨拶の言葉を述べる彼だったけれど、その目には微かな笑みが見え隠れしていた。
私は───私は、その時どうして自分がその場で失神してしまわないのか、不思議なくらいの心持ちだった。
胸元を強く殴りつけられてでもいるように、激しく心臓が打つ。
「なんと……貴方が……バルドリー卿!」
兄様や母様がグラントに私を救い出してくれたこと、保護して送り届けてくれたこと、彼に礼の言葉を言うのがなんだかやけに遠く聞こえている。
「バルドリー卿が私の介添え役として同行してくださったのは、彼が私の古くからの友人であることだけではなく、エクロウザ殿やその母上様に何かお願いしたい事があるからだそうですのよ」
悪戯な笑みを一瞬こちらに向けて、レレイスが言う。
グラントは暗色の瞳で兄様や母様を見つめ、小さく咳ばらいをして話しだす。
「人生の内には運命と言う人智では測り知れぬ、何か大きな力に動かされる瞬間と言うものがあります。私は去年の春、確かにその力を感じました。その力の導きによって、この私とエドーニアご領主エクロウザ殿が妹君フローティア殿とは出会ったのです。これを運命と言わずして何と言いましょうや? 出会った瞬間に、私はフローティア殿との間に並々ならぬ縁の力を感じ、彼女こそが私にとって唯一無二の女神に相違ないと確信するにいたったのです。だがしかし……」
芝居がかった話し口調に大袈裟な身振り手振りを交えるグラントの姿を、私は呆気にとられて見つめていた。
なんのつもりなのかしら……彼は。
兄様や母様も場の雰囲気に飲まれてしまったのか、それとも隣国とは言え一応侯爵位を持つ人間への遠慮もあってか、この小芝居を黙って見守っている。
苦悩に満ちた表情を作り、額に手を当ててグラントは頭を左右に振った。
「悲しいかな、我がアグナダ公国と貴国リアトーマの過去の大戦の歴史を引きずり、二国は国境を接する程近くにありながらも千里もの彼方にあるが如しの関係。失意と絶望に打ちひしがれながら私はフローティア殿を義の心に従い、兄君エクロウザ殿の元へと送り出した次第なのです。今生の内には二度とまみえることも無き女性と半ば諦め、これからの半生を絶望と追憶に虚しく過ごす覚悟を決めておりましたが、何と言う運命のお導きか。こ度サザリドラム王子とレレイス皇女の目出度き婚儀を機に、貴国リアトーマとアグナダ公国とは絆を深め和平の道を恒常足るものとしようとしているではありませんか」
大仰に手を広げ、グラントが大きな歩幅で私の前へ歩み寄り、その場に跪く。
呆然自失としたままの私の手をグラントが掴み、派手に音をたてて接吻をした。
そのままの姿勢で私の手元から視線を動かし、兄様や母様をきっとばかりに睨み据えてグラントが言う。
「是非にもこの私グラント・バルドリーが妻として、エドーニアご領主エクロウザ殿の妹君フローティア殿をいただきたく。この遥かな地までまかり越しました。エクロウザ殿──────如何か!?」
恐らく私はこの時、驚きの表現としてや誇張を抜きにして、本当に口をぽっかりと開いていたに違いない。
兄様と母様も私同様、グラントの唐突すぎるこの申込に対してどう反応を返せば良いのか解らなかっただろう。
たっぷり数秒を経て、ようやく兄様が我に返ったようだった。
「いや……しかし、そんな急に……」
エドーニアは古い家柄ではあるけれど、爵位で言えばグラントの方が遥かに上。
そんな人間の申し出をむげに断るのは難しいだろう。
「急にではありません。昨年の春に初めて出会った瞬間に、私は運命を感じておりました。そして、こうして晴れて機が満ちるまで待ちました。これ以上待つことは不可能」
真面目腐った表情でグラントが畳みかけるように言う。
「そう仰っていただくのはありがたいのですが、妹、フローティアは体が弱く……」
たぶん、子を成せぬ娘を侯爵家に入れることは出来ぬと、苦しく言い分けようとしただろう兄様の言葉を遮るようにグラントは立ち上がり、兄様に向けて手のひらを突き出した。
「皆まで聞かずとも、それを承知の上の申込とご理解いただきたい」
……なんだろう……これは。
呆然としている私の耳に、レレイスが嬉しげに手を叩く音が飛び込んできた。
「まあ、素敵な話ではありません? 今こうして私がアグナダからリアトーマへと和平のかけ橋となるべく嫁いで来た時に、彼女はリアトーマからアグナダへの架け橋になろうと言うわけですのね。きっと、サザリドラム王子や王様達も祝福の言葉を惜しむことはないでしょう!」
彼女のこの言葉で、私の退路は完全に断たれたのだろうと思う。
サザリドラム王子はこの国の第一王子だ。
順当に行けばそう遠くない将来、彼がこの国の王位を継ぐ。
そしてその時レレイスはこの国の王妃となる。
「むぅ……」
と、兄様の口から言葉にならない声が漏れ聞こえた。
母様にいたっては声もない。
「なんと、お認めいただけるか」
グラントがそう言った。
兄様は一言の言葉をも発していないのに、だ。
「……では、別室にて詳しい相談をいたしましょう。ささ、ご母堂君も一緒に」
そんなことを言いながら、グラントは母様と兄様に手を回して部屋を去ってゆく。
扉を出る時に、一瞬だけちらとこちらに目を向けて、彼が片目を瞑ったのを私は見たような気がした……。
何秒か、何十秒か…私がどれだけ呆然としたままでいたのかよく分からない。
ゆっくりと彼らが去った扉から正面へと視線を戻すと、そこには、ティーテーブルに突っ伏して肩を震わせるレレイスの姿があった。
「だ……だめ。……うふふ……。く、苦しくてたまらないわ……っ!」
息も絶え絶えに身もだえて笑うレレイスを見て、ようやく私は我に返った。
「レレイス……いまのは、なに……?」
呟く私にレレイスは涙を流して笑いながら、侍女に運ばせた椅子に座るよう勧める。
「く……ふふふっ。もう苦しくて……。グラントが喋っている途中で私、何度吹き出しそうになったか。……あははっフロー、貴女にはこの苦しさが分かって?」
レースのハンカチで目元の涙をぬぐいつつ、へたり込むように椅子に腰かけた私に彼女は熱いお茶を一杯くれた。
お茶よりも本当ならエールの一杯も貰いたいところだったけれど、私は大人しく綺麗な薔薇色のお茶に口をつける。
……熱い。
「わ、私が仕組んだことじゃないわよフロー。だからそんな怖い目で見ないでくださらない? 全部、グラントが根回ししてのことなの。私は最後にちょっとだけ口を挟ませてもらっただけだわ。それにしてもグラントのあのインチキくさい言葉ったらない。ずっと吹き出さないように、見てよ……ほら、腕の内側……ギュッとつねって我慢したところが痕になっていてよ」
またレレイスがさっきの光景を思い出し、暫くの間、笑いの発作と闘った。
今頃、兄様や母様はどうしているのだろう。
「ああ、面白かったわ」
レレイスが漸く落着きを取り戻したのを見てとり、私は再び彼女に疑問をぶつけた。
「お願いよ、レレイス。どういうことなのか私にはさっぱりわからないわ……」
ティーカップに口をつけ、一息ついた彼女がほんのりと笑みを浮かべた。
「さっきも言った通り、私は殆ど何もしていなくてよ? グラントが裏で色々画策していたことは知っていたけれど、黙って放置していただけなの。彼、去年の秋くらいからこっち、ずっとドルスデル卿と狩りで賭けをしていたのよ。どちらがより大きな獲物を捕らえられるかって。ドルスデル卿は大変な狩猟好きで、しかも賭けごとにも目が無い方。年がいもなく無理なさって、すっかり腰を悪くされてしまったと言うわけよ。まあ……グラントが可愛い娼婦のお嬢さんをドルスデル卿に紹介して、そのせいで腰を痛めたとか言う噂も耳にしたかもしれないけれど、あくまでも噂でしょう? 高齢のマルタ卿に長旅は無理。ジョルト卿は……私がサザリドラム王子と結婚する事に反対なさっていた方だから、介添え役には選ばれない。まあ……そう言うことね」
澄ました表情でお茶をすするレレイスだったけれど、私は彼女の言葉のレトリックを見逃さなかった。
「殆ど、何もしていないと言う事は、何かはしたと……そう言うことだわ……」
ちらりとレレイスが舌を出した。
「ほんの少しよ。グラントはお友達だもの。でも代わりに私をおおいに笑わせてくれなきゃ協力できないと言ったんだけれど……。ふふふ……ふふ。ねえ、可笑しかったわねぇ……!」
そう言ってまた少しレレイスが笑う。
私はなんだか頭がくらくらとして来ていた。
あまりにも呆然とし過ぎてさっきは忘れていた激しい心臓の鼓動が、今頃になって甦って来る。
それを紛らわそうと、私はレレイスを相手に違う話題の話をしようと努める。
「いいわ……もう。でも、あの絵をサザリドラム王子に贈ったと言う話は本当なの? あの絵は油絵の具を使って描いたわけじゃないから、あまり長持ちしないと前にも言ったのに。……それに、貴女にはたくさんのお抱え絵師がいるのではなくて? それなのに、どうしてあの絵を」
「───だって、たくさんの絵を並べて見たけれど、フロー。貴女の描いた絵が一番素敵な私だったんですもの! お陰で本当に王子様が私を好きになったようなのよ。あの絵を届けて暫く後、王子直筆の分厚い恋文が私に届いたわ。……サザリドラム王子ってなかなか情熱的で詩人だわ。女はやっぱり愛される方が幸せなんじゃないかと、それを見て私……つくづく思ったことよ……」
にんまりと満足そうな笑みを浮かべ、レレイスは私の瞳を覗き込むように見つめた。
「ねえ……フロー。さっきから怒ったみたいな顔をしているけど貴女、今、この状況をどう思っていて?」
……どう?
そんなことを聞かれても、今の私に冷静な判断がつくはずがない。
たった今気づいたけれど、さっきから私……レレイスの事を呼び捨てにしているではないか。
若いうちにお父様の跡を継ぎ、苦労した兄様は決しておろかな人間ではない。
むしろ周囲にキレ者だと言われるくらい頭も良い人だけれど、グラントは貴族の皮を被った百戦錬磨の商人だもの、きっと今頃彼のいいように話は進められているに違いない。
「……どうもこうもないわ。怒っていないと、大声で変なことを喚き出しそうなくらい幸せなんだもの……」
私はティーカップに残った薔薇色のお茶をグイと飲み干した。
お茶が気管に入り、けほけほと咽る。
……苦しくて、涙がボロボロと零れた。
グラント……貴方って人は、本当に……信じられない人だわ……。
2013.1.2 誤字修正
 




