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fluere fluorite  作者: jorotama
第六章
22/29

踊る白鳥5

 普段と違ってグラントは、キチンと梳った髪を細いリボンでまとめ黒に近い緑のビロード服に身を包んでいた。

 灰青色の絹のジレには同系統の絹糸で刺繍が施してあり、とてもエレガントだ。

 不精ひげがそのままなのは残念ではあるけれど、貴族らしくきちんと身なりを整えた彼の姿は新鮮で、私はつい目を奪われてしまった。


「やあ、フローお嬢さん」


 私を感心したような眼で見つめながら、近づいてくるグラント。

 テティが私の周りに広がる霞のような裳裾を慌てて私の後ろにまとめた。きっとグラントがうっかり踏みつけてしまうと思ったに違いない。

 実際、グラントはドレスの裾に頓着している人間がしないだろう速度で私の至近まで来ていたのだから、テティの機転の利かせ方はあながち間違いではなかったと思う。


 前に立ったグラントが無言で私の姿を眺めまわすので、なんだか急に恥ずかしくなってしまう……。

 夜会用のドレスなんて、着なれないのだ。

 だいたいにして髪を結いあげているせいで、首から背中の半ばまで、それに肩や胸元までがむき出しになっている事がどうにも落ち着かない。


「……あんまり、綺麗で驚いた……」


 暫く私を見つめた後、グラントがポツリと言う。


「グラントも……そういう格好をすると紳士と間違う人が出そうね」


 正面切って褒められてしまい、照れてしまった私がそんな憎まれ口を叩くと、グラントが片唇を上げて笑う。


「針で突き刺されているのか、褒められているのか分からないけど、ありがとう。お礼にこれを君に贈呈しよう」


 グラントが懐の隠しに手を入れ無造作に取り出したのは、光の粒と銀とを連ねたような美しいネックレスだった。

 あまりにも美しくて立派なそのネックレスに、私は驚き眼を見張る。


「グラント……私、こんな素晴らしい物を受け取るわけにはいかないわ……」

「俺は商人だからね。これはキミに買い取ってもらおう。お代は宝石一粒につき、キス一つかな」


 そんな伊達な台詞を吐いた彼に、私はつい笑ってしまう。


「まぁ……それじゃあ、世界中の人たちがこぞってキスをしに来てよ? 貴方、今すぐ破産だわ」

「これはキミだけへ限定販売だ」


 言いながら彼がネックレスの留め金を持つ手を私の首に回した。

 首も肩も、そして背中も、肌が露出しているせいでまるで素裸で抱きしめられているようで気恥ずかしい。

 こめかみや耳元に髭がちくちくと当たるのが、とてもくすぐったかった。


「この夜会服と言うのは、なんとも良からぬ気持ちを起こさせるもんだな……」


 ネックレスの留め金と格闘しながら、グラントが楽しそうにそう言うのを聞いて、私はかっと赤面する。


「もうっ自分で留めるから、離してちょうだい」


 怒って彼の胸板を叩くけれど、グラントはますます楽しそうに喉の奥で笑うだけで、私に巻きつけた腕を緩めるつもりはないようだ。

 脚が使えたなら、今すぐグラントのむこう脛をけり上げてやれるのに……。


「今日以上に自分の手先の不器用さを楽しんだことはないな……。もう少しだ……ほら」


 後ろに回した腕を解く前に私の首筋に大きな音を立ててキスをしてから、グラントは腕の長さ分だけ離れてまじまじと私を見つめた。


「なかなかいい。……肩の傷が殆ど残っていなくて、本当によかった……」


 今度は上着の横についたポケットに手を入れて、彼はひと組のイヤリングを取り出した。

 不器用にねじ式の留め金で私の両方の耳朶を挟み、涙型に垂れるダイアモンドを飾るグラント。


「さあ、これで完璧だ」


 満足そうにグラントが目を細めている。


「……ありがとう……グラント……」


 部屋の向こう側にある姿見に映った自分の姿が思った以上に素敵に仕上がっていて、私は、はにかみながら礼を言った。


「お礼や支払いは、言葉以外でお願いするよ」


 悪戯っぽく言う彼にいつもならヒステリーを起こしていたかも知れないけれど、私はちょっぴり笑って彼の顎の辺りにそっと唇をつけた。

 自分の口元を指し示し、こちらにもう一度と催促するグラントに一瞬眉を顰めながらも、私は大人しく唇を触れさせる。

 ふんわりと唇を合わせ身を引こうとする私をグラントが強い力で抱きよせた。


「フロー……」


 硬く抱き締められた耳元で、彼の声が言う。


「この間言った事を考えてくれたか?」


 いつかはまた聞かれる……答えねばならない事と、思っていた。


「俺の妻になれ」


 ずっと覚悟がつかなくて、グラントを避けていたこともあった。

 だけど……私の事を愛してくれた彼に、私は誠意で応えねばいけないと思う。

 私はグラントの腕の中の暗闇に目を閉じて、その力強さと温もりを感じながら、今朝描き終わったレレイスの肖像の事を思い出していた。


「今日の夜会が終わって……明日になったら、貴方に話したいことがあるの」


 言いながら、グラントのぬくもりを胸一杯に吸い込む私。

 顔を上げると彼は少しだけ不服そうな様子ではあったけれど、私が笑顔を向けると肩を竦めて笑みを返してきた。


「では、一日待つとしようか。今はキミの運搬係として働くとするさ」


 そう言って私の体を大きく広がる霞のようなスカートごと抱えあげ、グラントは歩きだす。

 私は一体何度、彼にこうして抱き上げられ連れて行かれた事だろう?


「荷物扱いするなんて、失礼だわ」


 笑いながらの私の抗議に、グラントは何かを思い出したようにクツクツと笑う。


「今回は木箱に詰めたりしないから、勘弁してくれ」


 ああ……そうだ、初めて彼に抱きあげられたのは、エドーニアの翡翠亭でのラウラの結婚式の時の事だった。

 あの場所からここまで、なんて遠くまで来たことだろう。


「貴方の事、さっきは一瞬だけ紳士のようで素敵だと思ったけれど、やっぱりそれは取り消すわ。グラント、貴方私の事を室内履きに部屋着のガウンのまま、木箱に詰めたんだったわね。しかも、海に沈めようとしたわ」

「それはフロー。キミが俺についてくるだろうと確信あっての事だ。室内履きの事は……事故だったとでも思ってくれよ。まさかあの状況でキミのワードローブを物色して着替えを探し出すわけには行かなかったんだから」


 グラントは私を抱えたまま広い屋敷の廊下をずんずんと歩いてゆく。

 今夜は泊りの客も何人か来るらしく、使用人たちが忙しげに部屋の準備に追われている姿が目に入った。


「……まあ、そうね。女性のワードローブを勝手に覗くのは確かに良い趣味とは言えないわ。それに私達は敵同士だったんですものね」


 危なげない足取りでホールの広い階段を下りながら、グランドは心外そうな表情で私を見た。


「じゃあキミはあの夜、敵だと思っている男とキスしたのか?」

「したんじゃなく『された』のよ。あの馬車は小さいから逃げようがなかったじゃない。あそこで逃げようとしたなら私、馬車から飛び降りるしかなかったわ」

「だけどフロー。あの頃から俺の事を憎からず思っていただろう?」


 ホールを抜け、舞踏室や広間のある区画にさしかかり、グラントは立ち止って私に問う。

 眼尻に薄く笑いじわの寄った目が、優しく私を見降ろしていた。


「その自信がどこから来るのか……本当に不思議だわ……」


 大げさな嘆息で質問からの回避を図ろうとする私を、無言で見つめ続けることによってグラントが追い詰めた。


「私、嫌いな人と……口づけしたことなんてなくってよ」


 目を伏せて答える私の額に、グラントがそっと顔を伏せる。


「ではキミの唇は純粋さを失っていないと言うわけだな」

「皮肉を吐き出して針のように貴方を突き刺すけれどね」


 広間にはまださほど多くの人間は集まっていなかったけれど、さすがにグラントが私を抱えて入ってゆくと注目を集める。

 顔を見知った相手に目礼しつつ、グラントは広間や舞踏室を見渡せる壁際の椅子に、私を座らせてくれた。


「本当ならキミの隣に侍っていたいところなんだけれど……」


 溜息をつきつつ立ち上がり、舞踏室や広間を見透かすように見るグラント。気のせいだろうか、なんとなく厳しい表情になっているような……?


「いくらレレイス主催の夜会とは言え、貴方がこの家の当主なんですもの、しっかりとホストに徹しなければいけないに決まっているわ。……でも……」


 屋敷の玄関にはちらほらと来客の馬車が到着しつつあるようだった。

 美しく着飾った男女がこの広間にも次々とやって来ている。

 楽士達が人々の会話を邪魔せず、場の雰囲気を華やかな物にするように、演奏を開始した。

 きちんと身なりを整えた使用人達も来客の世話に動く者、壁際で呼ばれるのを待つ者など普段よりも多い。


 その中にも……来客の中にも……。


「なんだか……使用人や来客に紛れているけれど、随分警護の人が多いように見えるわ。……レレイスが公女さまだから……普段からこんな感じなの?」


 表だって帯剣している人間は出入り口に立つ軍服のような衣装の数人だけだったけれど、歩き方や動きに妙に隙がない人間が多いのだ。

 中には小型の武器を所持しているのか、衣裳の片方が重そうに下がっていたり、膨らんでいたり……。


「やっぱり……キミの目は誤魔化せないか……」


 グラントの言葉に、急に胸がどきどきと言いだした。


「なにか……あるの?」


 声をひそめて問いかける。


「無いに越したことは無いんだが……もしもの場合に備えている。……キミが危ない目に遭うことは無いだろうが、ここで人の動きを見ていて何か気がついたことがあったら、声を掛けてくれるか?」

「ええ、それは。……でも、どうして……?」


 グラントの眉間に微かに皺が寄る。


「……レレイスは公女様だからね。じゃあ、済まないけど俺はそろろろ行かないと……」


 そう言い残し、グラントがその場を立ち去っていった。

 なんとなく彼の言葉の歯切れの悪さが気にならないではなかったけれど、彼女は確かにこの国の最高権力者である大公の娘なのだ。

 もしもの事があったら大事だろう。

 なにしろ私はこういう場に出たことが無いのだから、礼儀作法くらいは知識として知っていても、その場の警備の常識など分かるはずも無かった。


 ぐるりと会場内を見渡す。

 飲み物を手に談笑する者、優美な扇の影でひそひそ話す貴婦人達。

 気がつくと随分人の数が増えたようだ。


 暫くしてレレイスをエスコートしたグラントやサラ夫人が会場に入って来た。

 レレイスは淡い水色の絹に乳白色のレースや真珠が、うねる波のようにあしらわれたドレス。

 大きく空いた胸元から細いウエストの辺りまでを立体的なスモッキング刺繍が美しく彩っている。

 白い喉元には薄水色の宝石と彼女の瞳の色と同じ青の宝石とを編みこんだチョーカが取り巻く。

 やはり彼女は美しい。


 ……私は憧れと、認めざるを得ない微かな嫉妬心とを胸に抱きながらレレイスを見ていた。


 今夜の舞踏会はあくまでも彼女が主催であり、グラントは場所を提供していると言う立場らしい。

 美しさと威厳に溢れたレレイスの来客への挨拶の後、グラントも侯爵家の当主らしく堂々と短い言葉を発し、そして会場にひときわ華やかに踊りの音楽が鳴り響いた。


 美々しく着飾った男女がくるくると輪を描いて踊る。

 主宰であるレレイスと、この家の当主であるグラントは当然のように一曲目を二人で踊り始めた。

 淡い水色のレレイスのドレスの裾が優美に広がり、青い石をあしらった繻子の靴が滑るような足取りで軽やかにステップを踏む。


 剣技を磨いたり馬に乗ったりの場面ばかりしか知らないグラントが、意外にも巧みに彼女をリードしている。

 私は一生彼と彼女のように踊ることは出来ないんだと思うと、なんだかその切なさが胸にしみて涙ぐみそうになった。

 慌てて眼を逸らし、近くにいた給仕に飲み物を貰って別の場所へと目線を転じる。

 さすがに周りのすべてがグラントとレレイスのように、素敵な二人とは行かないようだ。


 とても背の高い猫背の女性が、お腹周りのたっぷりとした背の低い男性と踊っている。

 彼女は自分の背の高さを恥じているのだろうか?

 それであんなに背を丸める癖がついてしまったのかしら?

 右肩の落ちた紳士は何処か痛めた人なんだろうか……少し膝がお悪いように見える。


 曲が変わり、グラントは今度はサラ夫人をリードしていた。

 レレイスは肩幅の広い老紳士と踊っている。

 この地方は秋には狩猟が盛んだとサラ夫人が言っていた。今日の夜会の出席者は近隣の貴族達だけではなく、王都から狩猟を楽しむためにこちらに来ている人間も多いことだろう……。


 それにしても色々な人がいる。

 踊りが上手な人はずっと出ずっぱりに踊り続けているけれど、そうでもない人は踊りの輪を抜けてアルコールや会話を楽しみだしていた。

 私も飲み物をチビチビと飲みながら、それなりにその場の雰囲気を楽しんでいる。

 人を観察するのは面白いのだ。


 それにしても、なんだろうあの人は?


 元々この踊りは相手と手を取ったり接触したりしないものだけれど、なんだかさっきから必要以上に人との間を開けて踊っている女性がいた。

 銀鼠色のドレスを着た割と年配の人だ……。

 相手だけじゃなく自分の体にも触れたくないのか、踊っている間だけじゃなく輪から外れている時にも不自然な腕の下ろし方をしている。


 ……どこかお悪いのかしら?

 それとも、あの手袋の上からした大きな指輪を守っているのかしら?

 そんなに大事なものなら、しまっておけば安心できるでしょうに。


 ふと、外が騒がしい事に私は気づく。

 ジェイドが広間に入ってきてグラントに何かを耳うちするのが見え、途端にグラントの表情が険しくなった。


 何か、あったのかしら……?


 そのうち、部屋の中に何かきな臭いにおいが漂ってくると、中の人々がざわめき出した。


「外の馬車から火が出たようだ」


 窓を開けて外に身を乗り出していた小柄な男性が叫ぶ。


「燃えたのは馬車だけです。屋敷は心配ありません」


 大きな声でジェイドがざわめく周囲の人間を鎮めようとしている。

 私は眉を顰め、混乱する会場の中レレイスの姿を探した。


 ここからさほど離れていない場所に、さっき背の高い女性と踊っていた腹周りのたっぷりした男性といるレレイスの姿を見つける。

 太った男性の影から、何か光るものを持った手がチラリと一瞬だけ見えた。

 ……その手に握られていたのが鋭利な刃物だと気付いた時には、腕はレレイス目がけて突き出されようとしていた。

 私が声も出せずに凍りついたその瞬間、レレイスに突き刺さるはずの刃物が急に床にたたきつけられる。


「……グラント……!」


 やっと喉から出た声は、掠れて裏返っていたと思う。

 レレイスに襲いかかろうとした暴漢を、駆け付けたグラントが床の上にねじ伏せ、取り押さえている……。

 恐ろしい出来事を目にして、私の心臓が激しくあおり出す。

 火事の騒ぎに紛れて、今の出来事に気がついた人間はどうやら多くなかったようだ。

 しかし、さすがにレレイスの近くにいた人間はグラントに腕を捩じられて引き立てられる男に何事かがあったことを察したようだ。


 この騒ぎに気づいたジェイドが、レシタルとともにグラントから暴漢の身柄を引き取り、連行してゆくのが見える。


 ……レレイスは少し青ざめた顔で、唇に握った拳を当てて立ち尽くしていた。

 肩や拳が震えているのが見て取れた……。


 目を伏せると、飲み物のグラスを握りしめたままの私の手も恐ろしさでカタカタと震えていた。

 再び目を上げる私の視界に、ダンスをしている時から不自然な腕の動きで気になっていた銀鼠色のドレスの女性が大きな太い指輪の手を伸ばそうとしている姿が映った。

 彼女の手の先には……レレイスの白いうなじ……。


 ……毒……針……!?


 指輪の内側に何か尖ったものを認めた瞬間、私は反射的に椅子を蹴倒す勢いで立ちあがろうとしていた。

 そうは言っても左の脚は上手く動かない。

 ここには縋るための杖もない。


「レレイス……っ……逃げてっ!!」


 私はバランスを崩して倒れながら、手にしたグラスを渾身の力で銀鼠色のドレスの女目がけて投げつけてはみたけれど、グラスは放物線を描いて別の方角へ飛び、腹周りに肉がのったあの男性のこめかみにぶち当たって中のお酒が広い周囲に飛び散った。


 私が無様に床に倒れこんだ頃、飛散した飛沫はレレイスの美しいドレスを汚し、次いでレレイスの後ろから手を伸ばした銀鼠色の女の目にも飛び込む。

 私はこの時以上にお酒が飲める自分と、この時手にしていたのが強いアルコールの飲物だった偶然に感謝したことは無いと思う。


 レレイスの白い首まですんでのところ、女がギャッと叫んで目を瞑った。

 私の声に反応したレレイスは事態を飲み込めぬままではあったが、その場に身を縮めるようにしてしゃがみ込み、彼女の頭部すれすれの場所を指輪の手が掠ってゆく。


 ……その後の事は何が何だかよく覚えていない……。

 ただ、我に返った時に私は床にぶつけた額に水で絞ったタオルを乗せ、すりむいた肘を軟膏と包帯で手当てされた姿でぼんやりと自室の寝台の上に座り込んでいた。


 ……なんとなく、使用人達にあれこれと介抱されたのは覚えている。

 レレイスが私のそばに来て、ありがとうと礼の言葉を述べた後、グラントやレシタルらに送られて部屋へ帰って行ったのも、その後しばらくしてグラントが私を部屋まで運んでくれたのも、なんとか思い出せてきた。

 ただ、レレイスがしゃがみ込んだ後から銀鼠色のドレスの女がどうなったのか、その辺が思い出せない。

 たぶん、グラントやレレイスの警護を行っていた人々によって取り押さえられたのだろうけれど……。


 レレイス主催による舞踏会は、大成功だったとは言い難いだろう。

 夜会に訪れた客達は、あの騒動の後、殆どがこの屋敷から逃げるように去って行ってしまった。

 残ったのは火事騒ぎを起こして取り押さえられた人間と、その時にレレイスを襲った男、それにあの銀鼠色のドレスを着た女くらいなものだ。

 今頃グラントは彼らの尋問を監督しているのかもしれない。


 それにしても、レレイスが無事で本当に良かったと思う……。

 私は溜息をつき、グラントから貰ったネックレスやイヤリングを外し、テティが会場の片づけに出払っているので、自力でなんとかドレスを脱ぐと濡れタオルを床に落とし、暖かくて安全なベッドの中へと潜り込んだ。


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