接触
その夜、追手より先に“彼ら”は来た。
焚き火の音が、途中で消えた。
風も虫の声も止まり、森が「息を潜める」。
「結界でも魔法でもない……」
眠らない魔女が、珍しく警戒した声を出す。
闇の中から、三人が現れた。
外套も徽章もない。
星片も、魔法の気配も――ない。
なのに、空間が歪んで見える。
「初めまして、星の空白」
中央の人物が言った。
声は低く、年齢も性別も判別できない。
「私たちは沈黙派。
君が“まだ決めていない”星に、感謝している」
レイは無意識に星片を握りしめた。
「奪いに来たわけじゃない」
別の一人が続ける。
「むしろ逆だ。
君に決めてほしい」
眠らない魔女が一歩前に出る。
「……沈黙派は、世界を一度壊しかけた。
星に役割を与えなかった結果、何が起きたか――」
「知っている」
中央の人物が遮る。
「だからこそ、君なんだ」
沈黙派は、魔法使いではない。
正確には――元・魔法使いだ。
彼らはかつて星に選ばれ、
役割を拒み、
その代償として魔法を失った。
「星は願いだ。
だが願いは、必ず叶うべきものじゃない」
沈黙派の一人が、胸元を開く。
そこには、焼け焦げた星片の痕跡だけが残っていた。
「叶えないという選択肢があると、
世界は一度、壊れかけた」
「でも同時に――」
中央の人物が、レイをまっすぐ見る。
「世界は、初めて自由になりかけた」
レイの胸に、鐘の音が鳴る。
初めて聞いた、あの夜と同じ音。
「君は星を使わない。
壊さない。
役割を与えない」
「だから、選べる」
沈黙派は告げる。
星を“役割”にする世界を続けるか
星を“未完の願い”として終わらせるか
あるいは、星そのものを終わらせるか
「私たちは答えを知っている」
眠らない魔女が、静かに言う。
「……でも、それを決める資格があるのは、
星に選ばれなかった人間だけ」
沈黙派は頷いた。
「協会は君を消そうとする。
我々は君を守る」
「だが守る代わりに――
いつか、決断してもらう」
闇が揺らぎ、三人の姿が溶ける。
去り際、最後の言葉だけが残った。
「次に星が落ちる夜、
世界は二度目の分岐点を迎える」
静寂が戻った。
レイは、星片を見下ろす。
まだ光らない。
まだ、何者でもない。
眠らない魔女が言う。
「……逃げる時間は、もう終わりだね」
物語はここから、
**“選ばれなかった者が、世界を選ぶ話”**へ変わっていく。




