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始まり
レイは答えなかった。
否定も肯定も、どちらも言葉にする前に霧のように消えた。
「安心して。できないことは、悪いことじゃない」
眠らない魔女は、森の奥の倒木に腰を下ろしたまま、瞬きひとつしない。
夜明けの光が差しても、彼女の影は揺れなかった。
「星を拾わなかったんじゃない。
あの星は――君を選ばなかった」
胸の奥で、昨夜の鐘の音がもう一度鳴った気がした。
「じゃあ、僕は……」
「“使う側”じゃないってだけ」
魔女は立ち上がり、森のさらに深い方を指さす。
そこには、昨夜光らなかったはずの星片が、灰のように冷えて横たわっていた。
「星はね、魔法使いを作るためだけに落ちるんじゃない。
――世界を壊す役目の人間を、探すためにも落ちる」
レイの足元で、星片がかすかに音を立てた。
それは、鐘の音とは似ても似つかない、
何かが目を覚ます音だった。




