三番目 〖メダカ〗
「なぁ〜夜の学校ってマジ怖くね?」
「そうかぁ?逆にワクワクするんだけど」
「え〜wりょうちゃんすげぇーw」
「……。」
「さっきから無言だけど大丈夫か?
奏真は怖いの苦手だろ?帰るか?」
「うん、平気。……でありたい」
「ほんとに大丈夫?そうちゃん
無理に来なくても良かったんだよ?」
「大丈夫。だって宿題忘れたの俺だし」
「無理はするなよ。」
「ありがとう。涼、みっちゃん」
「おうよ!この光輝様に任せ給え!」
「では、存分に頼らせてもらおう!
光輝、俺トイレ行きてぇからちょっとこれ持ってて」
「おっけー、近くで待ってるわw」
「おう、ありがと」
そう言うと涼は、俺に懐中電灯を渡して
職員用のトイレに駆け込んでった。
「速すぎだろwどんだけ行きたかったんだあいつw」
「…なぁ、みっちゃん。」
「ん?どした?」
「俺もトイレ行きたい」
「いいよ待ってっから。早く行ってこいよ」
「ありがと!みっちゃん!」
夜になって少し涼しくなった廊下は、
窓から差し込む月明かりでぼんやりと淡く色付いている。
…静かだなぁ
1人になるとほんとに怖え。
早く戻ってきてくんねぇかな…
そう、壁に背を預けようとした時
…ピチャ
ん?何でこんな所に水溜まりが…?
誰かが水でもこぼしたのか?
「ただいまー」「ありがとう光輝」
「おーおかえりー。
あ、そこ水溜まりあるから気をつけろよ」
「うわ、ほんとだ」
「じゃあさっと行って、さっさと帰ろうぜ!」
「うん。ありがとう」
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「あった!!」
「よーし!じゃあ帰るか!」
「うん!ありがとう!」
「なんか…水、増えてるよな?」
「あ、りょうちゃんもそう思う?」
「怖いこと言うなよー…」
「まぁ気のせいかもしれないけど、早く帰るか。」
「うん、そうし…」バシャン!
いってぇ…
ん?なんかこの水ぬめっとする…?
「大丈夫か?光輝。」
「大丈夫?みっちゃん」
「あぁ、大丈夫大丈夫!滑っちゃった」
「気をつけろよ?」
「なんでこんな水浸しなんだろうね」
「分かんねぇ…あれ?懐中電灯どこいった?」
「そこだよ、光輝の後ろ。」
「ん、あったあった。ありがとりょうちゃ……。
────奏真!!!!」
「っえ?!何!?どうし……!!」
突然、奏真の声がくぐもった。
……………………ぇ……?
懐中電灯を向けた先、光に照らし出されたのは、
上下左右に絶え間なく動く、
光が灯らない小さな目。
青白い身体を覆うぬめりのある液体は
ウロコを伝ってボタボタとしたたっている。
俺達より大きい体には人のような足が生え、
口からも……。
……奏真!!!!
あれ?りょうちゃんの声、遠い…
水の中にいるみたい
りょうちゃんが、魚の口から出てる足を引っ張り出そうとしてるけど、魚がデカくて手が届いてない。
その間にもどんどん、足が見えなくなって…。
『……ウゥー!…』
「そうちゃ…ん……?」
そうちゃんの声…
…あれ?そうちゃん、どこ…?
「光輝!!お前も手伝え!!!」
りょうちゃんが呼んでる。返事しなきゃ。
……あれ?息、苦しい…?
なんで…涙、出て…?
「りょうちゃ……?」
「……………ックッソ!!」
りょうちゃんがこっちに来る。
「…ッ逃げるぞ!!」
りょうちゃんの俺を引っ張る手が
少し震えてる…?
「…?どうしたのりょうちゃん。
あ、そうちゃん、どこ行ったの?」
りょうちゃんが走ってる。
引っ張られて肩抜けそう。
りょうちゃん、掴む力がどんどん強くなってる。
「…痛いよりょうちゃん。どうしたの?」
「………。」
こっち向いてくれさえしない。
どうしたんだろ。
…そうちゃん、どこ行っちゃったのかな…。
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……あれから
光輝はあの日あったことを忘れたようで、
「ねぇ〜りょうちゃん。
最近、そうちゃん居ないね。どうしたんだろ。」
「……。奏真は、引っ越しちゃっただろ?
忘れたのか?」
「あれ?そうだっけ?あーそうだったかも!」
だけど、
…ピチャン。
「…ッ!!!っうわぁぁ!!」
「大丈夫!大丈夫だ光輝。
ただ雨が当たっただけだ。」
「…ぅあ。…ハァ、ごめん。なんでだろ?前はこんなんじゃなかったのに…」
「……。」
───あの時。
「光輝!!お前も手伝え!!!」
振り向いて見えたのは、
理解できないみたいな顔してるくせに
泣いて縋るような目をした光輝だった。
無理だ。こいつは動けない。
でも、俺1人じゃ……。
「………ックッソ!!!
──ッ逃げるぞ!!!」
そう、お前に背を向けた時
『………ぇ…?』
それだけが。
その声だけが、はっきりと聞こえた。
……俺が、見捨てたんだ。
「じゃあ次!
これ知ってる?理科室の『メダカ』の噂」
「メダカ?」
「うん、なんかね
夜になると理科室のメダカには足が生え、食べ物を探して校内を徘徊する。ってやつ」
「え、そんな熱出た時の悪夢みたいなのもいるの?」
「えーっとねー、多分こんな感じかな!」
「楓、絵ヘッタクソw」
「はぁぁ?なんだとー!!!」
「 wwww 」




