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第7話 統合された一日、その静かな昂り

今日は気付いたら一日が終わってました。

ほんとに何もない一日だったんですけど、気分的には充実していて、清々しい一日でした。

皆さんは、〇〇とは何かとか考えることありますか、僕は哲学科の暇な学生をしているので、よく考えていました。最近はあんまり考えることがなかったんですけど、久々に自分の研究への熱量が増した一日でした。

本日も駄文にお付き合いください。

 今日は珍しく、夜まで記録をつけていなかった。

 だがそれは怠慢や無気力ではない。むしろ逆で、俺が一日中“俺として”動き、考え、振り返る暇もないほどに統合された自分として活性化していたからだ。


 朝7時前、ふと目が覚めた。

 妙に意識が鮮明で、頭はもう走り始めていた。

 布団の中で半ば妄想のような回想のようなものを反芻する。


 ――彼女は、僕を好きになりかけた瞬間があったらしい。


 その言葉は、完全な拒絶ではない。

 「好きがわからない」という彼女の言葉をどう受け取るかは、解釈の問題だ。


 ポジティブに受け取れば、まだ頑張れる。

 ネガティブに受け取れば、“好きになれなかった”のだから望みは薄い。


 俺は常にいくつものパターンを考える。

 最良の未来、最悪の未来、中間の未来。

 そのすべてを俯瞰し、とりあえずのゴールを見据えて最短距離を走る。


 歩かない。

 止まらない。

 走り続ける。


 体が悲鳴を上げても、精神は屈強な戦士だ。

 それが俺という存在の在り方なのだと思う。


 ***


 今日は何もない日だったはずだ。

 だが、不思議と退屈ではなかった。

 むしろ、自分の可能性を信じられる、静かな昂りのある一日だった。


 朝からマインドマップを作る。

 主題は――「好きとは何か」。


 そこから派生するように、

 「快楽とは何か」「恋人とは何か」「欲望とは何か」

 など、好きという語の中に含まれる概念を無数に書き出す。


 俺は、“好きの普遍性”を探ろうとしていた。

 誰もが語るのに、誰も定義していない言葉。

 しかも、語るたびに形を変える不可解な現象。


 彼女は昨日、

 「カントの義務論に従うことは他律ではないか」

 と言い、好きは傾向性だから自律と矛盾するのでは、と話した。


 昨日の俺は、正面から反論できなかった。

 むしろ一度は賛成してしまった。

 あれは、俺の弱さだったのだと思う。


 しかし今日の俺は違った。

 朝の空気が切り替わるように、思考も鮮烈に切り替わった。


 カントは傾向性を否定していない。


 義務に従うことが前提であり、その上で傾向性の“好き”を持つことはむしろ自然だ。

 「好き故に行為する」のではなく、

 「自分の立てた普遍的義務として行為し、それでも“好き”と言える」

 ことが、自律した恋愛を成立させる。


 ――そうだ。これこそ俺が求めていた形だ。


 彼女が義務論の四分類を例示として自由に読み解いたように、

 俺もまた、義務と傾向性の共存を肯定する。


 プロの哲学者からしたら、甘いと笑われるかもしれない。

 だが、俺の理解の道筋は、俺の人生にとって正しい。


 ***


 では俺の義務とは何か。


 紙に書き出してみる。


 ・生存の義務

 ・親孝行の義務

 ・尊重の義務

 ・努力の義務


 どれも普遍的とは言い難い。

 しかし相手のために守るのではなく、自らに課した義務として守るのなら、

 それは傾向性による行為とは異質のものになる。


 屁理屈だろうか。

 だが、哲学とは多かれ少なかれ精密な屁理屈の積み重ねだ。

 俺は今日、その事実を妙に誇らしく感じた。


 ***


 そんなことを延々考えていたら、

 いつの間にか夕方を越え、19時になっていた。


 明日は大阪に行く。

 大信頼の友人と会う予定だ。

 「成長した俺」を見せたい。

 それが明日の俺のささやかな目標だ。


 今日一日、俺は思考の中を走り続けた。

 考えることの楽しさ。

 資料を読み漁る楽しさ。

 そこから考えを組み上げる楽しさ。


 まるで研究者になったような充実感があった。


 ――しかし、これは義務なのか。


 欲求(傾向性)に従った行為ではないのか。

 努力は義務であるとカントは言ったが、

 今日の俺の研究は努力というより“自己満足”に見えなくもない。


 ふと、大学院入試の面接で言われた言葉が蘇る。

 「その研究は趣味で終わりませんか?」


 胸の奥が少しだけ痛んだ。

 でも、趣味であり、義務であり、生き方でもあるなら、

 趣味に終わろうと終わるまいと関係ないはずだ。


 義務とは何か。

 俺の義務とは何か。

 明日の新幹線で、その定義を考えよう。


 きっと明日の俺は、今日の俺より進化している。

 それだけは、確信している。


 俺は静かに、眠りの準備を始めた。

なんか、義務って難しくないですか、いやもちろん、納税の義務とかありますけど、それは国家に属する人間として、社会に属する人間としての義務であって、人生の義務とは少し違う気がするんですよね、皆さんも、これを機に義務について考えてみてください。

ただし、義務とは普遍性がなければなりません。私利私欲に塗れた義務は、ただの欲求や傾向性でしかありません。

僕も、義務ってなんだろうってしっかり考えてみることにします。

本日もお付き合いいただき、ありがとうございました。

明日は投稿できないので、明後日に二日分投稿します。

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