表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
寝取られたキミと自分のために生きた俺【50万PV感謝】  作者: けーきまる
寝取られたキミと自分のために生きた俺

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/36

後悔と幼馴染

「……なんか、だるいな。」


ふとした瞬間、全身が鉛のように重くなった。デスクに肘をつき、額を押さえる。


(最近の疲れが溜まっているのかもしれない。)


(まさか、神崎との因縁が片付いて、気が緩んだか?)


けれど、鼓動が妙に速い。呼吸が浅い。


「社長、大丈夫ですか?」


秘書が心配そうに俺を見つめている。


「……ああ、大丈夫だ。」


そう答えながらも、視界がぼやける。胸の奥が、妙に痛む。


(……なんだ、これ。)


違和感を抱えつつも、机に置かれた書類に目を落とす。捺印待ちの契約書、進行中のプロジェクト、取引先からのメール。仕事は山のようにある。俺が止まるわけにはいかない。


気のせいだと自分に言い聞かせ、俺はペンを握った。


---


夜。


ソファに倒れ込むように座る。最近、眠りが浅い。夢を見ては、汗をかいて目を覚ます。


「……俺、疲れてるのか?」


一人呟いて、天井を見上げる。けれど、その行為すら妙に重く感じた。心臓が、不規則に跳ねる。鼓動が早すぎる気がする。


(……まあ、寝れば治るだろ。)


そう思いながら、俺は目を閉じた。


けれど、胸の奥にわずかに残る違和感は、消えなかった。


---


翌日。


「……っ!」


突如、激しい眩暈に襲われた。デスクにあった書類が床に散らばる。


「社長!?」


秘書の声が遠くで聞こえる。世界がぐらぐらと揺れる。


(……おいおい、どうなってるんだ。)


呼吸が浅くなる。心臓が締めつけられるように痛む。視界の端が、暗く染まっていく。頭がぼんやりする。声が遠のく。


(……マズいな。)


――次の瞬間、俺は意識を手放した。


---


気がつくと、白い天井が広がっていた。


「……ここ、どこだ?」


体を起こそうとすると、腕にチューブが繋がれているのに気づく。点滴。酸素モニターの音。そして、微かに消毒液の匂い。


(病院……?)


戸惑っていると、医者が入ってきた。


「意識が戻りましたか。」


俺は混乱しながら彼を見つめる。


「俺……どうなったんですか?」


医者は淡々とした口調で告げる。


「血液検査の結果が異常です。早急に精密検査を行い、原因を特定して治療を始める必要があります。」


冷静に告げられた言葉が、鋭く頭に突き刺さる。


「……大丈夫なんですよね?」


わずかな期待を込めて問いかける。だが、返ってきたのは容赦のない現実だった。


「残念ながら、非常に危険な状態です。」


――ふざけんな。


---


俺は、俺の体は、本当に──もう駄目なのだろうか?


意識はあるのに、体はまるで別のもののように感じる。


今までの人生が、スローモーションのように脳裏をよぎる。


金。地位。女。


欲しいものは、すべて手に入れたはずだった。


なのに──


(……こんなところで終わるなんて、冗談じゃない。)


これまで必死に努力して、ようやく掴んだ成功。まだ終わるわけにはいかない。まだ、やれることがあるはずだ。


(まだやれる。これからもっと上へ行く。楽しいことだって、まだたくさんあるはずだ。)


だが、その強い意志とは裏腹に、体は言うことを聞かない。腕を上に持ち上げることすら、ままならない。


(……もし、万が一の話だ。)


(これが、本当に『終わり』だったとしたら?)


俺は、自分自身に問いかける。


(俺は、何を後悔する?)


過去の選択か?

捨てたものか?

手にしたものか?


考えがまとまらないまま、ぼんやりと天井を見ていた。


静かな病室。機械の電子音だけが、一定のリズムで響いている。


(人生を見つめ直す、いい機会かもな。)


(とはいえ、過去の後悔について考えたところで、何も変わらない。今の俺にできることを考えるべきだ。)


(例えば――もし俺が、死ぬ間際だったとしたら?)


(入院したばかりの今、やっておけばよかったと後悔することはないか?)


そんなことを考え続けていた、そのとき――。


ガラガラッ!


ドアが勢いよく開いた。


「……ハアッ、ハアッ……!」


荒い息遣いが、病室に響く。その音に引き寄せられるように、俺はゆっくりと視線を向けた。そこに立っていたのは──


柚希だった。


ピリッとしたスーツ姿の彼女。だだ、その髪は乱れ、目は焦点が定まらない。かなり急いできたようで、肩が上下している。


「……柚希。……なんでお前が。」


呆然と呟く。


柚希は、乱れた呼吸を整える余裕もなく、ただ俺を見つめていた。その瞳には、涙が滲んでいる。


彼女がここにいるはずがない。


俺が倒れて、まだそれほど時間は経っていないはず。社員たちも、俺が抜けた事を関係各所に連絡するため、一旦会社に戻っただけと聞いている。


部外者が見舞いに来るには、あまりにも早すぎる。こんなに早く、柚希が俺の入院を知るはずがない。ましてや、駆けつけられる理由もないはずだ。


(……ありえない。)


混乱する思考の中で、ふとよぎる。


(……幻覚か?)


投与された薬の副作用で、ありえないものを見ているだけなのかもしれない。そう考えれば、この妙な胸のざわつきにも説明がつく。


けれど、彼女の荒い息遣いが耳に届く。肩を激しく上下させながら、呼吸を整えることすら忘れ、ただ俺の様子をじっと伺っている。


――本物だ。


その確信と同時に、押し寄せるように次々と疑問が頭をよぎる。


(どうやって俺のことを知った?)

(誰かから聞いたのか?)

(いったい誰から?)

(それとも……)


でも、それを問い詰めるよりも先に、目の前の柚希の表情が、すべてをかき消した。


柚希は、今にも崩れ落ちそうなほど、悲痛な表情をしていた。まるで、自分の全てが壊れそうだとでも言わんばかりに。


その顔を見た瞬間、胸の奥が軋むように痛んだ。


もしかして──


(お前が、俺の”後悔”なのか?)



読んでくださって感謝です!

面白かったら、★を押してもらえると嬉しいです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ