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転生したゲーム世界で脇役キャラなのにヒロインに好かれた俺は、なぜか現実世界でもモテまくる  作者: 波瀾 紡


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【第52話:修羅場前夜?】

 授業中に集中できずに、内容がまったく入ってこない。

 八奈出さん、影裏さんとどう接していったらいいのか。それがずっとそれが頭を占めている。


 もう6月も終わりだ。もう少しで2学期の期末テストがやってくる。

 これは非常にヤバい。早くなんとかしないと俺の成績が爆死する。


 だけどどうしたらいいのか、まったくいい考えが浮かんでこない。

 うーむ……しばらく二人から距離を取って、ほとぼりが冷めるのを待つしかないか。そうだな。そうしよう。


 俺はそう決意した。




 ──で、昼休み。


 さあ食堂に行こうかと、席を立った直後だった。


時任ときとう君。お昼ご飯はいつものように食堂ですか?」

「うん、そうだよ」

「じゃあ私と一緒に食べませんか?」

「え?」


 教室の真ん中で、高嶺の花のクラス委員長が誘ってきた。

 そんな行動は今までの彼女からしたら考えられないことであり、教室中に衝撃が走る。


 しかもその相手は地味で目立たない男子。今まで親しげにしていたわけでもない。

 そのことがさらに衝撃を大きくした。


 教室内が大きくざわついた。皆の視線が一斉に俺と八奈出さんを向く。

 二人の美少女から距離を置くという俺の作戦は、しょっぱなから打ち砕かれた。泣きそう。


 だけど教室内でうだうだしていたら、クラスメイトの注目がより高まってしまう。それはマズい。

 早く教室を出なきゃ。


「ああ、そっか。今日は八奈出さんも食堂なんだね」


 確かいつもは弁当だったはずだ。しかも普段は影裏かげうら はるると一緒に食事をしている。


「いえ。今日もお弁当なのですが、もしよければ一緒に食べたいと思って、今日は時任君の分も作ってきたのですよ」


 学年一のクール美人が放ったこの発言は、特大の爆弾だった。


「ええーっ!? ウソ、マジで?」

「八奈出さんと時任って、そんな関係だった?」

「いや、親しいなんて様子はなかったぞ」

「じゃあいったいどういうわけだよ」

「俺が知るかよそんなもん」

「わかった。時任が八奈出さんを脅迫して無理やり弁当作らせたんだよ」

「あの凛として正義感あふれる八奈出さんが、そんなことに屈するわけないだろ」

「だったらなんで八奈出さんが時任なんかの弁当を作るんだよ。説明つかんて」

「そうだよ。強い八奈出さんが屈するほどの酷い脅しを時任がしてるのかもしれんない」


 教室内のあちこちで、皆の勝手な憶測トークが飛び交っている。

 ……って言うか、俺に失礼な発言がちらほらあるな。

 まあ俺でもそう思うから仕方ないけど。


 そう言えば八奈出さんは胸の前で可愛い柄の入った弁当ケースを二つ抱えている。

 青いのとピンク色だ。


 いったいなぜ八奈出さんが突然俺の弁当を作って来たのか。謎だ。

 あ、もしかしたら例のオープンチャット『プロ絵師になりたい人集まれ!』を紹介したお礼かな。


「ですから裏庭で一緒に食べましょう」


 二つの弁当箱を顔の前に持ち上げて、にこりと笑うクール美人。

 めちゃくちゃ可愛くて心臓がドックンと暴れた。

 だけど違う意味でも心臓が暴れている。


 その原因は教室中から俺に向けられる疑念の視線。

 ヤバい。これはヤバすぎる。


「おいおい、もしかして八奈出さんと時任って付き合ってるのか?」

「まさか! そんなのあり得ないって。高嶺の花と地味男子だぞ」


 男子達の言葉には、明らかに嫉妬の色が濃く混じっている。

 教室内がピンと張りつめたような空気に染まる。


 ──否定しなきゃ。付き合ってなどないって、はっきりと事実を言わなきゃ。


 そう思ったけど喉がカラカラに乾いて、声がかすれて言葉が出なかった。


「ううんっ、付き合ってないよっ!!」


 急に救世主のような声が教室のみんなに向けて響いた。

 大きな声を出したのは影裏はるる。


「なぁーんだ、やっぱりそうか」

「そうだよ。そんなわけないって俺も思ったんだよな」


 急激に空気が緩んだ。

 助かった。影裏さん様様さまさまだ。ありがとう──


「ねっ、玲奈れな! そうだよね」

「え……ええ、そうね」

「ねえ玲奈。今日は一緒にお弁当を食べれないって聞いたけど、それが時任君と一緒に食べるからだって聞いてなかったわ」

「そうね。別に隠すつもりもなかったけど、わざわざ言う必要もないかなって思ったの」


 確かに。隠すつもりなら影裏さんの目が届くところで俺に声をかけることはしないだろう。


「そんなことはないよ。だってあたしも一緒にお弁当食べたいもん。ねえ玲奈いいでしょ?」

「あ、いえ……それは……」


 八奈出さんは影裏さんから視線をそらした。拒絶したがっているように見える。


「ね、いいでしょ悠馬くんっ♡」

「うん」

「やった!」


 ──ああああぁぁぁぁぁっ! しまった!


 甘えたような影裏さんの可愛い言い方に、つい反射的にうなづいてしまった!

 俺ってバカ!!


 で……でも、いいよな?

 八奈出さんと影裏さんは元々一緒に弁当を食べてたわけだし、俺は別に八奈出さんと二人きりでお昼を食べる約束をしたわけじゃないし、何よりお昼ご飯なんて少しでも多人数で食べた方が楽しいしな。うん。そうだよ。


 ……って、いつもぼっちで昼飯を食ってた俺が何を言ってるんだか。


 八奈出さんは平静を装ってはいるが、小さくため息をついたのが目に入った。

 彼女は俺に好意を持ってくれている。だから弁当まで作って来て、昼を誘ってきたんだ。


 以前の俺なら「まさか俺がそんなにモテるわけがない」と決めつけてそんなことはあり得ないと否定しただろう。

 だけどゲーム世界での経験や、現実世界でも八奈出さんや影裏さんと関わる機会があったおかげで学んだ。


 だから今の状況は、八奈出さんが俺に好意を持ってくれているからこその行動だってことくらいはわかる。


 そしてもしかしたら影裏さんの行動も……

 いや、それは思い上がりが過ぎるってものか。

 影裏さんも俺に興味を持ってくれている。だけどそれがどの程度の好意なのかは今一歩わからない。


「じゃあ裏庭にゴー!」


 影裏さんは楽しそうに俺の背中を叩いたあと、俺と八奈出さんの手を握った。


「あっ、ちょっと待ってくださいよ」

「うんにゃ、待たない!」


 影裏さんが俺達の手を引っ張って、校舎の裏庭へと向かった。

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