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転生したゲーム世界で脇役キャラなのにヒロインに好かれた俺は、なぜか現実世界でもモテまくる  作者: 波瀾 紡


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【第42話:幸せなケーキ】

「さあ、ここだよ! どうどうっ? お洒落なお店でしょっ! ここのケーキがどれもこれもあれもそれも、絶品なのさっ!」


 店に着くなり、ハルルのテンションがだだ上がりだ。

 入り口の左右に石柱があしらわれた店構えの、確かにお洒落な佇まいのカフェだ。


 この世界では建物が中世ヨーロッパ風の石造りでお洒落なのだが、この店はその中でも特にお洒落な感じがする。


 店内に入ると内装も石張りで、柱や天井に繊細な装飾が施されていて、高級感があふれている。

 客層もどことなくエレガントで美人やイケメンが多い気がする。

 俺なんて、ちょっと場違いじゃないのかな……


 店に入ってすぐの所に、ケーキやスイーツが並んだショーケースがある。

 ここで好きなケーキを選んで注文すると、後で席まで運んできてくれるシステムらしい。


 ショーケースに近づいて覗きこんだ。


 ──へぇ、まるで宝石のようにきらきらと綺麗なケーキたち。確かにめっちゃ旨そうだ。


「どれにしよっかなぁ……」


 俺のすぐ左横で、ハルルもショーケースを覗きこんでいる。

 じゅるりと音がしそうな感じで舌で唇を舐めた。


「ホントおいそう。迷いますね……」


 今度は右側からレナの声が聞こえた。

 彼女も一心不乱にショーケースを眺めている。


 ──ちょっと待って。二人ともめっちゃ距離が近くて、挟み込まれてるんだが?


 きっとケーキ選びに夢中になってるからだろう。

 二人とも無意識のうちに俺と肩が触れ合うくらいの距離になっている。


「あっ、これなんかおいしそう!」


 ハルルが少し体を右側、つまり俺の方に寄せた。肩に柔らかな女の子の身体が押し付けられる。


「えっと……私はこれがいいかな」


 レナも気に入った商品が見つかったのか、身体を左側に寄せる。彼女の肩が俺の肩にぐいと当たり、温かな体温が伝わる。


「いや、やっぱこっちのがいいかな?」

「うーん……こちらの方が美味しそうかも……」


 二人はさらに俺の方に身体を寄せたものだから、結構な圧で両側から挟み込まれた。

 両側から女子の感触と良い匂いが伝わってくる。

 ヤバい。こんな状況、エッチな気分が刺激されてしまう。


 彼女たちはきっと無意識・・・なんだろうけど、俺は気になり過ぎてケーキ選びどころじゃない。


「え~っ、迷うなぁ……」

「うーん……迷いますねぇ」


 さらにぐりぐりと身体を押し付けてくる二人。

 温かで柔らかな肉の圧力が心地いい。

 板挟みならぬ肉挟みとでも言えばいいのだろうか。

 ある意味とても幸せな状況なのかもしれない。


 だめだ。このままだと脳が溶けて性欲が爆発しそうで、おかしくなる。

 色即是空空即是色、煩悩退散。


「あ、俺はこれにする!」


 とにかく目の前にあったホワイトショコラケーキを指差した。

 早く注文を済ませてこの場を離れなきゃ。


「「じゃあ私もそれで」」


 レナとハルルも同じケーキを指差して仲良くハモった。

 結局三人とも同じケーキを注文することになった。



 テーブル席に着く。

 俺の座った向い側に、レナとハルルが並んで座った。


「さあ食べよっか!」


 運ばれてきたケーキにフォークを入れ、口に運ぶ。


「うん、旨い!」


 上品だけどコクのある甘み。

 これは確かに旨い。


「でしょでしょ!」

「うん。もしかしたら俺の人生史上、さいウマのケーキかもしれない」

「やった! この店紹介したわたしのおかげ?」

「そうだね。ハルルのおかげだ」

「じゃあ褒めて褒めて!」


 なんだこのリアクション。

 どう褒めたらいいのかわからん。

 とにかく褒めてみる。


「ハルルってすごいな。おかげでとても美味しいケーキを食べられたよ」

「幸せ?」

「ああ、幸せ」

「やった! うふ」


 頬を赤らめて小首を傾げる。

 なんだ、この可愛いリアクション。

 俺の褒め方は正解だったってことでいいのか?


 ここまで喜んでくれたら嬉しいな。


 ──って、ヤバっ!


 つい頬がだらしなく緩んでしまった。

 テーブルの向こうから、レナがどんよりしたジト目で見ている。

 この世の終わりみたいな悲しそうな顔。


 俺とハルルが楽しそうにしてるのがそんなに悲しいのか。


「レナはどう? ケーキ美味しい?」

「……え? あ、はい。今日はホントにいい天気ですね」


 俺の問いに頓珍漢な答えをするレナ。

 ヤバい。上の空ってやつだ。

 なんとか元気を出してあげなきゃ。


 どうしたらいいんだろう?

 女子慣れしていない俺にはハードルが高すぎる課題だ。


 えっと……


 悩んでいたらレナがつけているネックレスが目に入った。

 彼女の美しい髪と同じ赤色の綺麗な石が付いている。


「レナのそのネックレス、とてもいいね。綺麗だ」


 ああっ、やっぱ俺ってダメだ。

 ありきたりな誉め言葉しか思いつかなかった。

 こんなんじゃ喜んでもらえない。


「え? ほ、ホントですか? これ、私の一番のお気に入りなのです!」


 すごく明るい声が返ってきた。

 言ったこっちがびっくりするほど喜んでる。よかった。


「そ、そうなのか。うん、とてもいいよ」

「やった……!」


 嬉しそうな笑顔を隣に座るハルルに向けた。

 そんなことしたらハルルの機嫌が悪くなるんじゃないのか?


 一瞬ドキッとしたが……


「うん。よかったね」


 ハルルも笑顔で返した。

 よかった。やっぱりこの二人は仲の良い友達だもんな。


 うん。この調子で、この後も二人が仲良くしてくれたらいいな。

 ──って心からそう思う。

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