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転生したゲーム世界で脇役キャラなのにヒロインに好かれた俺は、なぜか現実世界でもモテまくる  作者: 波瀾 紡


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31/55

【第31話:誘うはるる】

***

【◇現実世界side◇】


 現実世界に戻ってきた。ここは早朝の学校だ。


 ずいぶん久しぶりな気がする。

 だけどこの世界では、前回俺がゲーム世界に転移した時から、ほとんど時間は経っていない。


 転移するタイミングによっては、一日が24時間以上になってしまうが、特に体調には問題ない。

 それぞれの世界にいる『俺』の身体は、別物なのだろう。


 もうすぐ授業が始まる。早く教室に行かないと遅刻だ。


 慌てて駆け足で教室に向かった。

 校舎の角を曲がったところで、横から出てきた他の生徒と出くわした。小柄な女子生徒だ。


 危ない、ぶつかる! だけど止まらない。

 身体を捻って避けたけど、肩が相手の肩に当たってしまった。


「痛っ!」

「ごめん! 大丈夫!?」


 そんなに強く当たってないと思うけど、相手は大丈夫だろうか。


「うん、大丈夫……って、えっ? 悠馬ゆうま君?」

「はるるさん?」


 相手は影裏はるるだった。


 俺はこの人とほとんど絡みがない。

 なのにゲーム世界でよく似たキャラのハルルを呼んでいたように、つい下の名で呼んでしまった。

 シャッテンさんなんて呼びにくかったんだよ。日本人だもの。


「あ、えっと……あの……」


 ちなみに言葉にならない言葉を発しているのはコミュ弱者の俺ではない。コミュ強者の影裏さんだ。


 いつもあっけらかんとしていて動じないイメージしかない彼女なのに、珍しく動揺してる。どうしたんだろう。


 あれ? そう言えば今、影裏さんも俺を下の名で呼ばなかったっけか?


「悠馬君……え? あ、ありがとう時任ときとう君」

「なにが?」

「なにがって、えっと……あれっ? なんだろ?」

「影裏さんにお礼を言われるようなこと、なにもしてないよ」

「そ、そうだよね。そう言えば時任君とは、今までほとんど絡んでないもんね」

「うん」


 影裏さんは不思議そうに首を傾げる。

 これはもしや、八奈出さんに起きたのと同じ現象が影裏さんにも?


「あのさ影裏さん。もしかして頭の中に、色んな情景とか記憶が流れ込んで来る、みたいなことはなかった?」

「え? な、なんで時任君が知ってんの? ついさっきそんなことがあって、頭がおかしくなったのかと心配だったんだ。あれはいったいなに?」


 それは俺にもよくわからない。


「どんなことが流れ込んできた?」

「ん〜よくわからないなぁ。なんか異世界みたいなところで学校に行って、暗いところを探検して、モンスターと戦って? ぼんやりとそんな気がするけど、はっきりと思い出せないや」

「なるほど」

「……あ、なんか時任君に似た人と一緒にいた気もする。でもそんな情景が一気にブワッーって入って来たから、なにがなんだかわからない」


 その記憶、めちゃくちゃ合ってます。

 ゲーム世界のハルル・シャッテンの体験が、一瞬で記憶に流れ込んで来たって感じか。


「この前たまたまネットでその現象を見つけたんだけどね。疲れが溜まるとそんな現象が起こることがあるらしいよ。かなりレアな現象だから、ネットでもほとんど出てないけど」

「へぇ、そうなんだ。嘘みたいな話だね」


 ──はい、嘘です。ごめん。


 ゲーム世界のハルルは明るくて誰にでも優しいのに、裏では俺を陥れようとする、裏表のあるキャラだった。もしかしたら現実世界の影裏はるるも、そうなのだろうか。


 誰にでも優しくて、あっけらかんとした明るい性格。屈託のない笑顔が可愛い、一番人気の女子。小柄で巨乳なところもそっくりだ。


 さすがに髪の色はゲーム世界の銀髪に対して、こちらは明るい茶髪だけど。


「あの……時任君?」

「え?」

「そんなに見つめられた恥ずかしいんだけど?」

「あ、ごめん!」


 色々と考えていて、ついぼーっと見つめてしまってた。


「あっ、ヤバい。早く教室に入らなきゃ遅刻するぞ」

「ホントだ」

「行こう」

「ねえ時任君」

「なに?」

「後でゆっくり話せないかな? 放課後とか」

「なにか俺に用があるの?」


 さっき肩がぶつかったのを、落とし前つけろって言われるとか?

 それならまさに、裏の顔は極悪人!?


「特に用事があるわけじゃないんだけど……なんだか時任君のこと、色々と知りたくなっちゃった」


 指先で髪の毛をくるくるといじっている。

 いつもハキハキと明るい彼女が、こんなモジモジした姿を見せるのは珍しい。


「あ、うん。まあ別に特に用事もないし、いいよ」


 断るなんて失礼だから、そう答えた。


「よかった。じゃあ放課後ね」


 影裏さんは両手を顔の前で合わせて、満面の笑みを弾けさせた。やっぱめっちゃ可愛いな。


 俺たちは二人して駆け足で教室に向かった。

 おかげでギリ遅刻せずに済んだ。


 ところで──


 俺、無意識のうちに、学校一の美少女と普通に話してた。

 それによくよく考えたら『後で話したい』なんて言われて、以前の俺ならビビって断ってたよな。

 それが普通に『いいよ』って答えるなんて。


 まるで日の当たる陽キャ男子かよ。


 『マギあま』の世界でレナやハルルとたくさん接して鍛えられた。

 ましてやゲーム世界のキャラとそっくりだから、影裏さんとやり取りするのも慣れた感覚だ。


 そして──自分の【魅力チャーム】ステイタスが上がったという自信だろうか。

 今まで女子と話すのは超苦手だったけど、なぜか落ち着いて話せるんだよな。


 とは言え、放課後影裏さんと二人で話すんだって考えると、やっぱ緊張する。

 ちゃんと話せるだろうか……。

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