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転生したゲーム世界で脇役キャラなのにヒロインに好かれた俺は、なぜか現実世界でもモテまくる  作者: 波瀾 紡


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30/55

【第30話:謝るハルル】

【◆ゲーム世界side◆】


***


「ユーマ君」


 教室に戻る道中、ハルルが声をかけてきて、横に並んで歩きながら頭を下げた。


「謝って済む問題じゃないってわかってるけど、ホントにごめんなさい」


 いつも明るく太陽みたいな彼女の顔が憔悴してる。

 よっぽど反省したようだ。


「もうさっき謝ってもらったしいいよ。ハルルさんも別に悪気がなかっただろうし」

「いやどこからどう見てもめっちゃ悪気あるでしょ。手紙書くのも、ダンジョンの柵壊したのも、魔法でキミを引きずり落としたのも、全部出来心って言うには用意周到すぎるでしょ。特にズボン脱がしちゃったのはマジ悪かったって思ってる。最悪だ私。マジ謝って許されることじゃない」


 なぜかハルルは自分が悪いんだってことを、思い切り主張してる。案外……って言うと怒られそうだけど、真面目なんだな。


「それにしてもハルルさんには事情があるんでしょ? レナが俺に騙されてると心配したって」

「それはそうなんだけど……」


 横を歩きながら、小柄なハルルは見上げるようにして俺を見つめている。

 少し垂れて愛嬌のある目がキラキラしてる。


 こうして間近に見たら、やっぱり学年一の美少女と呼ばれるだけあって、すごく可愛い。


「だったらいいよ。ホントにもう気にしてないから」

「ユーマ君。キミってどこまでお人好しなの? いい人過ぎない?」

「別にそんなことはないけど、どうも人を悪く思えないんだよね。だから我慢してるとかじゃなくて、本当に腹が立っていない。ただそれだけ」

「ユーマ君……キミって……」


 ハルルがふと立ち止まる。

 どうしたのか俺も立ち止まり振り返る。

 彼女の俺を見る瞳がさらに熱を帯びてる。


「……あ」


 またハルルの身体がボーっとピンク色に光った。

 ラブ・エナジー効果か?


 その時、どこからともなく機械的な声が聞こえた。


『ユーマ・ツアイトのステイタス【魅力チャーム】がレベル2からレベル3にアップしました』


 例のゲームステイタスだ。


 【魅力チャーム】は確か、レベルが上がればモテやすくなる。3ってマックスじゃなかったか?

 つまり俺、モテやすくなったってこと? やったじゃん。


「ありがとう。じゃあ先に行くね」


 ハルルはなぜか突然顔を伏せてそう言った。

 小柄だから頭の上しか見えないけど、耳が真っ赤になってる。

 そして早足で先に教室に帰って行った。


 照れたようなあの態度はやっぱり……

 ちょっと待って。心臓の鼓動が高まる。


「ツアイト君」


 うわ、びっくりした!


 ただでさえドキドキしてるところに、突然声をかけてこないでほしい。

 違う意味で心臓の鼓動が高まったぞ。


 ──とか思いながら振り返ったら。


 そこには、なぜかちょっと不機嫌そうな顔をしたレナが立っていた。


「レナ。どうしたの?」

「ハルルと何を話していたのですか?」

「ああ。また謝ってくれたんだ。それで、もう気にしなくていいよって言った」

「そうですか。……私の親友があんなことをして、ごめんなさい。しかも私がユーマ君に騙されているなんて、誤解も甚だしいです。あの子、ああいう、そそっかしいところがあるんですよねぇ……」

「でも彼女はそれだけレナを大切に思ってるってことだからね。責める気にはなれないよ」

「ユーマ君、あなたって……」

「ん?」

「ホントにいい人ですね」

「いい人ってほどじゃないけど、ハルルさんにはお人好しって言われたよ。あ、そう言えば、いい人すぎるって言ってくれたな」


 学年一の人気女子から褒められるのは嬉しいものだ。しかもこのユーマ・ツアイトは、元々嫌われキャラだったわけだし。


「ふーん……それでそんなに鼻の下を伸ばしているのですね?」

「いや別にそういうわけじゃ……」


 あれ? レナが怒ってる?

 なんか目が怖い。


 いかん。つい無意識に顔が緩んでしまった。

 レナは生真面目だから、スケベな男だと軽蔑したに違いない。


「ユーマ君は、あの……その……」

「ん? なに?」

「ハルルのことが好きなのですか? だって彼女、私と違って可愛いし、学校でとても人気がありますもんね」


 そうだ。レナはこれだけ美人なのに、なかなか自分に自信を持てないんだった。


「なに言ってるんだよ。レナだってとても綺麗だし、学校でも隠れファンが多いよ」

「そうですか?」

「うん」

「も、もしかして、ユーマ君もその隠れファンだったりしますか?」

「あ、いや俺は別に」


 あれ?

 レナが口を尖らせてる。

 マズい。怒らせてしまったか?


「けどレナのファンはたくさんいるよ。だから安心して」

「たくさんファンがいるから安心とか、そういうことじゃないです」

「え? じゃあどういうこと?」

「もういいです」


 どうしたらいいんだ。俺もファンだって言ったらよかったのかな。


 以前は近寄り難かった彼女に、今は親しみを感じている。大切な友人だという気持ちもある。

 でも今の俺のレナへの感情は、ファンとか言うんじゃないんだよな。

 じゃあいったいなんという感情なんだろ。言語化するのは難しいな……。


 俺が悩んでると、レナは突然俺の背中側に回った。

 何をするのかと不思議に思ってたら、背中をレナが両手でポカスカ叩く感触がした。


 痛っ……くはないな。優しい叩き方だ。


 レナは俺の背中叩きながら、聞こえるか聞こえないかの小さな声でつぶやいた。


「ユーマ君のバカ」


 元々は凛としたレナが放つその拗ねた言い方が、あまりに可愛くてドキリとした。

 怒られてるのにドキドキするなんて、俺ってホントにバカだ。


「じゃあ先に教室に戻ります」


 レナもハルルと同じように、早足で先に教室に帰って行った。

 立ち去る時にチラッと見えたレナの耳は、真っ赤に染まっていた。


 あれっ? もしかしてもしかすると──

 さっきのレナの態度は、ハルルに対する嫉妬?


 俺、魔法学園の二大美女から好意を寄せられて、板挟みになってる?


 え? ちょっと待って。

 どうしたらいいの?



***


 走り去るレナの背中を見ていると、ふと八奈出さんのことを思い出した。


 グループチャットで、またイラストを描くって言ってたけど、もう描いたのかな。

 いやさすがにそんなすぐには描けないか。


 思い出すと気になる。八奈出さんの様子を見たい。


 いや、断じて言うが、決してレナとハルルの間に挟まれるのから逃げるわけじゃないからな。

 今回俺は5日間連続でこのゲーム世界で過ごした。

 しかも生まれて初めてダンジョン探索、魔物退治をリアルに経験して疲れたし、一度現実世界に戻りたい。


 だから俺は放課後、校舎裏のほこらに行った。そして扉に鍵を差して回す。

 いつものように扉の中から白い光が発光し、俺の意識は遠くなった。

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