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転生したゲーム世界で脇役キャラなのにヒロインに好かれた俺は、なぜか現実世界でもモテまくる  作者: 波瀾 紡


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【第29話:魔法を繰り出す美女二人】

【◆ゲーム世界side◆】


「ユーマ君」


 俺を見つめるハルルは頬を赤らめ、目は潤んで見える。そして身体からは淡いピンクの光が放たれている。


「ハルルちゃん、それってラブ・エナジー……」

「え? なにそれ?」

「あ、いえ。なんでもありません」


 今レナはなんと言った? 確かにラブ・エナジーの言葉を口にしたよな。

 やはりこのスキルのことを知っているんだ。


「グォルルル……」


 その時、地を這うような咆哮が響いた。

 俺たちが隠れている岩の洞穴を外から覗いている大きな目。


 一角狼クルフィアが俺たちを見つけて、威嚇している。

 ヤバい。背筋がぞくりと恐怖が忍び寄る。


 魔物は大きな爪の生えた毛深い前足を、洞穴の中に突っ込んできた。

 俺たちは避けるために、三人で身を寄せて、できるだけ奥に寄る。


 でも洞穴の奥は浅い。

 魔物の腕が危う届きそうになる。


「きゃぁぁっ……」


 間近に迫る獣の手に怯えたハルルの悲鳴。


「うぐぅぅぅ」


 迫る危機の恐怖に耐えるレナの唸り。


 怯える彼女たちをなんとかしたい。恐怖を和らげてあげたい。

 だけど俺には大きな魔物に対抗できるすべは何もない。魔法も弱すぎて子供の反撃くらいにしかならない。


 くそっ、こんな時にまったく役に立たない自分が情けない。

 でもそんなことは言ってられない。


 一縷の望みに賭ける。

 ダメもとで攻撃魔法を仕掛けてみよう。


 そう考えて俺は一歩前に出た。


「ちょっとツアイト君、何をするのですか! 危ないです!」

「そうだよ、早く下がって!」

「いや、やれることはやる!」


 俺は女子二人を守る。

 二人の前に立って、炎の魔法を発動させる詠唱をした。


「◎▲$%……炎の魔法っ! いけぇぇぇ!!!!」


 気合は充分だった。

 声も力強かった。


 穴に突っ込んできていた前足に魔法が命中して、驚いた魔物は一瞬手を引っ込めた。


 ──だけど、魔法の威力は、しょぼかった。

 声の力強さがかえって恥ずかしくなるくらいにしょぼかった。


 逆上した一角狼クルフィアが「ぐおぉぉぉっっ!」と怒りの雄たけびを上げて、勢いよく前足を突っ込んできた。

 俺のせいで事態が悪化した。ごめん。


 目の前に爪が鋭い獣の足が迫る。


「危ないツアイト君! ●×Ψ◎! 業火の魔法!」

「ユーマ君を助けなきゃっ! ▼※◆#! 落雷の魔法っ!」


 ほぼ同時に叫んだレナとハルルが素早い詠唱で、手から魔法を放った。


「え?」


 耳をつんざくような激音がした。

 二人の魔法は魔物に直撃した。毛むくじゃらの前足をふっ飛ばし、その勢いで本体も消し去ってしまった。


「二人ともすごいよ!! 助けてくれてありがとう」


 魔法を繰り出した彼女たち自身が信じられないといった顔で呆然と立ち尽くしていた。


***


 二人のすごい魔法のおかげで巨大な魔物を退治できた。


「あ、ユーマ君。ちょっと待って。ジャケットの背中が破れたままだ。修復の魔法をかけてみる」

「ハルルさんって修復の魔法をかけられるの?」


 修復の魔法は難易度が高く、小さな傷ならともかく、こんなにバッサリ切れてしまった服を直すのは俺たち学生には至難の業だ。


「うん、少しだけね。でもなんて言うか、今は魔力が身体にみなぎってる感じがして、うまくできそうな気がするんだ」

「じゃあお願いするよ」


 頷いたハルルが修復魔法の呪文を詠唱し、魔法の杖を使って俺の背中に魔法をかけた。


「あ、ハルルちゃんすごい! 綺麗に直りましたよ!」


 レナが興奮気味に目を見開いた。制服の上着もシャツも、傷が跡形もなくなっている。

 このクオリティは確かにすごい。


「上手くいってよかった」


 服の背中が大きく破れたまま地上に戻ったら、なぜそうなったのか、先生や親に説明するのが大変だったから助かった。


「じゃあ行きましょう」


 俺たち三人は、慎重に周りを警戒しながら、再び上の階層に向かって歩きだした。


 それからは大した魔物も出ることなく、俺達三人は無事に階段までたどり着いて、第一階層に昇った。


 そしてマップに従って残りのルートをたどり、ダンジョンの外に出た。


「ああっ、ハルルぅ! 急にいなくなって、いったいどこに行ってたんだよ? 俺はずっと一人でダンジョン内を歩いてたんだからな」


 ドンケル・ゾンネだった。

 そう言えばハルルの相方は彼だ。ハルルが俺たちと一緒にいたから、ヤツは一人ぼっちだったわけか。


「せっかくキミと二人っきりの時間を過ごせると思ってたのに、さみしかったよ。キミもさみしかっただろ?」


 なんでヤツは髪をかき上げて、カッコつけてるんだ。

 きっと、クールな男がモテると信じてるんだな。


「キモ……」


 ハルルがゾンネに聞こえない小声でボソッとディスった。

 いつも明るくて天真爛漫なキャラだと思っていたけど、こっそりと裏の顔を持ってるんだな。

 まあそれも人間的でいいけど。


「ごめんねぇ。道に迷っちゃってさ。それでレナとユーマ君に会ったんだ。だからぜんっぜん、さみしくなんか、なかったよ!!」


 とても力強く否定するハルル。強調しすぎだよ。


「それどころかユーマ君の優しいとこやカッコいいところが見れてよかった。ね、ユーマ君っ!」


 満面の笑みで俺に笑いかけるのやめて。

 ゾンネの俺へのヘイトが溜まるのを煽ってどうする。


「は? こんないい加減で成績もしょぼくてブサイクな男が、カッコいいだって? ははは、ハルルはいつからそんな辛辣な嫌味を言うようになったのかな?」

「嫌味なんかじゃなくて、本当のことだから」

「うそだろ」

「ううん。私は嫌味なんか言わないよ。自分がまったく見えてない、キミみたいな男以外にはね」


 うわ、めっちゃ嫌味言ってるし。

 言われたゾンネは固まってしまっている。


「はーい、ダンジョン探索が終わった人は、教室に戻って待機だよ! ほら、ぐずぐずしない!」


 キント先生が、ダンジョンの出口あたりでたむろしている生徒に声をかけ回っている。

 さっき第二階層に落ちて体験したことは先生には黙っておこう。

 なぜそんな状況になったのか、ハルルのことを隠してうまく説明できる自信がない。


「さあ、私たちも行きましょう」


 レナに促されて、俺とハルルも一緒に教室に向かった。

 これ以上一緒にいたら、ハルルがもっとゾンネの怒りを煽りそうだからホッとした。

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