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転生したゲーム世界で脇役キャラなのにヒロインに好かれた俺は、なぜか現実世界でもモテまくる  作者: 波瀾 紡


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24/55

【第24話:魔法の杖を失くした俺】

【◆ゲーム世界side◆】


◆◆◆◆◆


 あの男。レナちゃんとペアになって、嬉しそうに笑いを浮かべていた。

 まさかダンジョンの中で二人っきりになるからって、エッチなことをするつもりじゃないの?

 そんなの許せない。どうにかして、二人でダンジョンに入るのを阻止したい。


 どうしてやろうか……?


***


 あっという間に4日が経ち、ダンジョンでの魔物退治の実戦授業の日になった。

 昼休みを挟み、午後一番からダンジョンで向かい実戦授業だ。

 さすがにちょっと緊張する。


「さあ、みんな。ダンジョンに移動するよぉ~ 忘れ物ないようにね~」


 教室の中でキント先生の声が響き、皆が席を立つ。

 あ、そうそう。魔法の杖を忘れないようにしなきゃ。


 机の中に入れておいた杖を探す。


「え……? あれ? おかしいな」


 動揺して挙動不審な俺に、キント先生が心配して声をかけてきた。


「どうしたのですかツアイト君?」

「杖がない」


 ヤバい。杖がないと実戦授業に参加できない。


「家に忘れてきたのですか?」

「いや……」


 午前中は確かに机の中に杖が入っていた。

 ということは誰かが持って行ったのか?


 もしかしたら例の手紙を書いた犯人かもしれない。

 あいつは俺とレナを引き離そうとしている。

 だとしたら俺とレナがペアになってダンジョンに入るなんて、我慢ができないに違いない。


 俺が杖を盗まれたと言えば、クラスの中で混乱が起こり、実戦授業が始められないだろう。

 そうなれば犯人の思う壺だ。

 かと言って俺が杖を忘れたと言えば、杖のない俺は授業に参加できない。


 くそっ、やられた。

 どうしたって犯人の思惑通り、俺はレナと授業に参加できない。


 クラスのみんなはダンジョンに移動するためにどんどん教室を出て行く。

 取り合えず俺も移動して、キント先生に杖なしで参加させてもらうようお願いしてみるか?


 いや。魔法が発動できなきゃ授業の目的をまったく果たせないんだから、杖の所持は絶対条件だ。


 うわ、詰んだ。完全に詰んだよ。

 レナも参加できなくなるから、申し訳なさすぎるっ。

 どうしよう……


「あのう、ツアイト君。もしよかったら、これ使ってもらえませんか?」


 頭を抱えていたら、突然近くでレナの声が聞こえた。

 顔を上げたら、とても繊細なデザインの装飾が施された杖が目の前に差し出されていた。


「え?」

「私が製作した杖です。ちゃんと魔法が発動するように、魔力も込めてあります」

「おおーっ……」


 それだけ言って、感動で声が出なくなった。

 レナが自作の杖を作ったって!?


「す、素晴らしい」


 流れるようなデザインが施されて、とてもカッコいい杖だ。


「ありがとうございます」

「でもこれはレナが自分で使うんじゃ?」

「いえ。これはツアイト君のために作ったものです。カッコいい男性が使うことを想定して、カッコいいデザインにしたつもりです」


 いや、カッコいいって俺?

 お世辞が過ぎるよレナさん。


 でもそう言われて見たら、確かに男性的なデザインだ。


「自分の杖は別にあります。これも自分で作りました」


 もう一本見せてくれた杖は、とても繊細なデザインだった。

 そう。まるでレナ・キュール本人の美しさを映したように美しい。


「綺麗だ……」

「ホントですか?」

「うん。まるでレナみたいに綺麗だ……」


 杖の美しさに心を奪われて、普段なら絶対に言わない臭いセリフを無意識に口にしていた。


「ぶふぁぉぅぅぅっ!」


 突然レナが吹き出した。


「どうしたっ!? だ、大丈夫かっ!?」

「だってツアイト君がそんなことを言うからっ」

「俺、何か言ったっけ?」

「覚えてないのですか?」

「ごめん、覚えてないっ」

「んもうっ……プンっ」


 真っ赤な顔をしたまま、レナは頬を膨らませた。

 何これ、可愛すぎる。

 でも怒らせたのは大変申し訳ない。


「でもまあツアイト君の素直な心の声が漏れたってことだから、覚えてなくても大丈夫です」

「俺、なんて言ったの?」

「ふふふ、内緒です」


 気を悪くさせるようなことを言ったわけじゃなさそうでよかった。


「ありがとうレナ。この杖、ありがたく使わせてもらうよ」

「はい。使ってください」


 助かった。これで開始前からリタイアなんて不細工なことにならずに済んだ。

 レナには感謝しかない。


 ──え?


 一瞬背筋がゾクリとするような気配を背中に感じた。

 慌てて振り返るが、教室内にはもう誰もいなかった。


 しかし廊下を駆け足で立ち去る人物の背中が目に入った。

 あれは……


 もしかして手紙を出したのも、色々と俺にちょっかいを出してきたのも、あの人だってことか?

 まさかそれはないだろ。


 いや、ちょっと待て。

 以前『まぎアマ』をプレイした時に、そういうキャラがいた。

 表と裏の顔のギャップが激しいヒロイン。

 表向きはとてもいい人なんだけど、裏の顔は闇を抱えている。


 もしも彼女・・がそうだとしたら──


「どうかしましたか?」

「あ、いや。なんでもない」


 レナは立ち去る人物の存在に気が付いていない。

 レナには言うべきじゃない。心配をかけたくない。


 その時廊下を戻ってきたキント先生が扉から顔を覗かせた。


「レナ・キュールさん、ユーマ・ツアイト君! なにをしているの? もう全員、ダンジョンの方に移動してるよ。早くキミ達も移動しなさいっ!」

「はい、申し訳ありません先生!」


 怒られた。俺のせいでレナまで巻き込んで申し訳ない。

 俺とレナは先生の後ろについて走り、ダンジョンの入り口まで移動した。


 ダンジョンの中へは各ペアが少しずつ時間を置いてから入っていく。

 ルートも何種類かあり、中では他のグループの生徒とはあまり顔を合わせないようになっている。


 先生から自分たちのルートを図示したダンジョンマップを受け取り、いよいよ俺たちの出発の時間がやってきた。


「じゃあ行きましょう」

「そうだな」


 先生の点呼を受けた俺とレナは、二人でダンジョンの中に足を踏み入れた。


 実戦授業中も気をつけなきゃいけないな。

 そう、気持ちを引き締めた。

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