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羽田到着

バラバラバラバラと空にはヘリコプターやドローンが飛び交い、メディアがこぞって東京の被害現状を伝えている。

周囲は火の海となり、ビル群も無惨に崩れ落ちた状態で散見される。

避難誘導の甲斐もあり多くの人がすでに東京から脱出しているが、入院していた者や足が不自由な人など、いまだに多くの人が逃げ遅れた状態となっている。そのため周辺の逃げ遅れた人は近くの総合病院に集合するようにアナウンスを流していた。

「これより病院内に入って避難者の救助に向かう。人工呼吸器等には特に注意を払い、医師の指示に従いながら迅速に行動しろ。」

自衛隊はまさに訓練通りに救助活動を行っている。普段と違うのは周辺に危険なモンスターがいると言うことである。

「我々自衛隊で救助活動を行うので、白虎隊の方々であのモンスターたちを近付かせないようにして下さい。」

白虎隊員は自衛官と協力しながらモンスターを相手に病院へ近づけないように戦っているのである。だが白虎隊員が普段訓練しているのは『暴走者』に対してであり、想定しているのは人に対してである。未知のモンスターと戦う訓練などしているわけでは無いため、困難を極めていた。


現在ゲートが開いてから約5時間は経っただろうか…。モンスターと呼ばれている奇妙な生き物の数もどんどんと増えていく一方である。ゲートがあると予想される地点が新宿区であり、西側はすでに多摩川を境に防衛戦が始まっているほどモンスターを抑えられずに後退を余儀なくされていた。

だがゲートが開く前日の夕方に政府から緊急の脱出指示が出て早々に動けたお陰で被害は思ったよりは少ないと言われている。新宿周辺の病院から先に救助活動をしたことも大きな要因だろう。だが死傷者数は確認できただけでも約一万人に上り、行方不明者も合わせると数十万人になる。

「要救助者を防衛ラインの外側に逃すことが最優先だ!現在埼玉方面は赤羽が落ち、荒川が防衛ラインになっている。現状モンスターは銃火器では効果が薄い。倒そうとはせずになるべく戦闘を控えながら行動をせよ。」

その防衛ラインをギリギリで守っているのも白虎隊であった。西側を任されているもう一つの覚醒者組織、新撰組がが東京周辺の警備にあたっていないのは大阪や京都などの人口密集地にもゲートが無いかをくまなく探しているためである。今のまま2個3個とゲートが見つかり、モンスターが溢れ出せば日本が終わる。そのため現状は東西に分かれて最善の仕事をするしかなかったのである。そのため、非常に人手不足な状況になっている。

皇室関係者は那須の御用邸へと昨夜のうちに避難されたのだが、各議員は国会議事堂内で議論を交わすうちに逃げ遅れていた。議員の中には情報が入った瞬間、会議には参加せずに我が身かわいさに家族を連れて地方に戻ってしまった者もいたのだが、その議員たちはSNSで世間から現在滅茶苦茶に叩かれている。

では逃げ遅れた議員が危険にさらされているのかと言えばそうでも無い。実は今春、日野に言われて強力な結界を晴明が張ったため、東京の中では一番安全な場所が国会議事堂となっているのである。そのため現在永田町周辺の逃げ遅れた人は国会議事堂まで避難していた。

また現在は逃げ遅れた人のために道路状態が最悪な中ではあるものの、多くの人を運ぶために道を選び瓦礫を退かしてバスで輸送している。すでに線路が使い物にならず、鉄道は動かせないからだ。だがそれも徐々に厳しくなってきていた。すでに神奈川方面、埼玉方面はモンスターが溢れかえっていて閉鎖を余儀なくされている。そのため千葉方面に逃げるしか手段はないのだが、そこも徐々に押されてきているというわけである。

「後数時間でここ周辺も居られなくなる。とにかく1人でも多く救出しよう!」

指示されたことをギリギリまで全うするためにそれぞれが全力を出しているのであった。


事が起こる前日、8月5日午後4時に内閣総理大臣から告げられたのは東京脱出計画であった。すでに発見されたゲートは手が付けられる状態ではなく、全都民に対し他県への移動が言い渡されたのである。都内行きはバスや電車、道に至るまで全てストップした状態になり、深夜も公共交通機関を動かして避難を促す対応に追われた。しかし中にはその情報を知りながらも楽観視して非難をしない者や、逆に新宿にわざわざ見に行こうとする者まで現れてしまい、本来の救助活動に支障をきたしてしまったのであった。

そして運命の8月6日早朝5時23分。大きな音とともに地面が隆起し、新宿のビルが次々に倒れ始めたのだ。すでに避難開始から12時間は経っていた為、新宿周辺には避難者はいないとして救助活動は行わず、まだ都内全ての病院を回り終えていない事を優先事項としていたのである。


徐々に激化するモンスターとの戦闘から、残された時間はあと僅かという状態だろう。病院関連を優先すれば、永田町への救助は不可能である。国会議事堂内に取り残された議員を中心に不安の声が上がり始める。

「総理!このままでは我々も逃げられなくなります。自衛隊に救助をお願いしましょう。」

本会議場では口々に脱出すべきとの声があがる一方、周囲の病院関係を優先しているために人手が足りないのだ。国を代表する人物が優先されて救助を受けるわけにはいかない。だが逃げ遅れれば命の保障もない。完全に板挟みの状態になってパニックになる議員も見られた。

議員が騒げば周囲から安全を求めて避難してきた一般人にも不安が飛び火し始める。

一般人は本会議場以外の至る所に押し込められるように座ったりしているため、すでにストレスがピークに達する者もいた。今にも暴動が起きてもおかしくないほどの状態なのである。

するとそこへ自衛隊との避難関連の打ち合わせを終えてきた日江島がやってきた。日江島を見た総理の顔が一瞬緩んだのは言うまでもない。

「議事堂館内に避難している皆さん。私は内閣副総理兼、白虎隊・新撰組の総隊長を務めています、日江島晋ひえじますすむです。」

館内放送が流れた事と、この場では総理大臣よりも期待される人物からの話に、今まで騒ぎ立てていた議員や避難者も静かに聞き入り出したのである。

「現在自衛隊と白虎隊が協力し、都内の病院関係を回りながら避難・救助を行っています。本来はその救助が終われば自衛隊員がこちらにきて避難誘導にあたってくれる手筈となっていましたが思いのほか病院が多いことに加え、手を貸さなければ動けないような病床者が多く、こちらの避難誘導のために招集する事自体が難しい状態です。」

日江島から伝えられる絶望にも近い発言。若干オブラートに包まれてはいるものの周囲の状態を考えれば、『自衛隊の助けは来ない』と言ったようなものなのである。周囲のざわつきが徐々に不安となって頭を抱える者まで出てきたが、次の一言で一気に希望が見えたのである。

「だが安心してください。白虎隊一番隊隊長自らここに来て皆さんを安全に防衛ラインまで誘導する運びとなりました。一緒に白虎隊一番隊のルーキーとして活躍する人物も一緒です。2人は現在航空機にて羽田に向かっています。どうぞ大船に乗ったつもりでお待ちください。」

その瞬間、期待に満ち溢れた歓喜が聞こえてくるのであった。

白虎隊の一番隊隊長は今まで一切姿を見せず、『白虎隊の秘密兵器』とまで言われている人物である。どんな人物かも分からないが覚醒者の中でも特別だと言われていて、各隊長たちの中でも一目置かれた存在だと言われていた。

「ウワサの一番隊隊長が見られるってことか!?男なのか女なのかも分からないって程今まで秘密にされてきたんだろ?」

「でも実力は相当すごいと聞いたぞ!魔法が使えるらしい。」

今まで絶望感が漂う空気が、一斉に晴れやかになったのであった。


「日江島、すまないなぁ。いつも面倒事は押し付けるようにしてしまって。」

「ははは。お前が総理だから俺が副総理として支えてやろうと思ったまでだよ。お前が総理を目指さなければ、とっくに定年決め込んでたさ。」

実はこの2人はお互いに砕けた会話をするほどに仲が良い。高校からの同級生であり議員に当選したのも同じ、いわゆる腐れ縁でもある。

「生きてここから無事に帰る事ができたなら、美味い酒を飲みに行こうな!そのときは俺の奢りだ。」

「安いところはやめてくれよ?また雑誌で叩かれちまう。『総理、大衆居酒屋で庶民派会合』とか見出しをつけられてさ。総理自ら奢ってくれるなら、せめてどっかの料亭とかにしてくれよ。」

「俺は値段が高いところで飲むよりも、普通の居酒屋でほっけとかついばみながら日本酒飲んでる方が好きなんだよ!」

日江島は官房長官に就く予定であったが、周囲から『なかよし内閣』と揶揄されるのを嫌い避けたのだ。だが日江島の優秀さを知る周囲が逃さなかった。そこで新しく新設された白虎隊と新撰組の総軍団長として任され、内閣副総理という立ち位置に納まったのである。

「それはそうと、一番隊隊長と一緒に紹介したルーキーとは誰なんだ?」

興味津々で聞かれても、日江島も一度しか会った事がない一人の少年である。年も若くまだ12歳になっていなかったはずである。

「以前報告した恐山おそれざんでキーマンになった少年だよ。アメリカに出張させていたんだが、東京のゲート封印のために呼び戻す予定だったんだ。残念だが今のままじゃゲート封印よりも優先させる事ができてしまったがな。」

ゲートがある新宿周辺はとてもじゃないが突撃するには厳しい状態である。まずは避難を優先するしかない。

「そうか。若い力におんぶに抱っこも格好悪いが、その分(まつりごと)で貢献しようじゃないか!」

豪快に笑う総理の姿は何が起こるかを純粋に楽しみにしているようであった。



総理が笑い飛ばしていたちょうどその頃、羽田に一気のプライベートジェットが着陸した。

「やっと着いたね。晴明くん、打ち合わせ通りお願いね!三浦さんも手筈通りにお願い。みんな無事に乗り越えるよ!」

そう鼓舞してくるのは沖田友世おきたともよである。晴明くんと呼ばれたのは同じ一番隊で同級生の蒼井晴明あおいはるあきであり、友世と国会議事堂まで避難誘導のために行くことになっていた。三浦さんと呼ばれたのは三浦真純みうらかすみである。三浦は2人とは別行動で避難しやすい経路を探す役割として先に埼玉方面に急ぐことになる。これが飛行機の中で打ち合わせた内容であり、非常に単純な作戦で具体性のカケラも無い内容であるのだが、的は射手いた。

晴明は陰陽術が使えるため、周囲の捜索や敵との戦闘でも役に立つ。三浦は隠密行動が得意で敵に索敵されずに埼玉まで到着できることだろう。

(普段どこか抜けている感じもするんだけど、こう言うときは鋭いんだな。)

晴明は友世に感心していた。

「皆忘れずにESP錠を解除するのを忘れないでね!」

ESP錠とは能力を抑えるアイテムであり、普段は能力の暴走を抑えるなどの役割を担っているが、今は抑える場面ではない。むしろスイッチの切り忘れが命に関わるかもしれないのだ。

「友世、オレたち刀がないけど物理攻撃はナシって事か?」

普段は能力をつかに納めることができる刀を持っているのだが、アメリカに行くためには飛行機に乗って行かなければならない。刀など持ち込めるわけがなかったのである。

するとどこからともなく聞き慣れた声が聞こえてきた。

「ふっふっふ〜。そんな事もあろうかと、私が持ってきましたよ!おかえりなさいませ晴様!」

声のする方を見るとそこには怪狸かいりが刀を3本持って立っていた。怪狸かいりは晴明が使役するくだタヌキである。普段は周囲に馴染むために人型に変身しているが、れっきとした妖怪なのだ。

「まさか怪狸かいりがいるとは思わなかったよ。どうやってここまで来たんだ?」

晴明たちが住むには青森県弘前市、ここ羽田空港に突然テレポートするような能力を怪狸かいりは持っていない。

「それはですね、日野副隊長さんから連絡を受けて必要なものを全て揃えて届けに来たのです。もちろんここからは一緒に行動させていただきますよ!」

正直に言おう。怪狸かいりに戦闘能力はない。ただの化け狸であり普段は友世たちが結成するガールズバンド、比翼連理ひよくれんりの事務所で働いている。付いてくるのはいいのだが、襲われたりしないだろうか。

「私だって自分の身くらいは守れますよ!ご心配いただかなくとも大丈夫です。逃げ足には自信がありますから!」

説得力に欠ける言い分ではあるが、怪狸かいりは晴明が使役する怪異かいいの総括を任せている。怪狸かいり本人に戦闘能力がなくとも、手助けを受ければなんとかなるだろう。

一応納得して進もうとしたときであった。急に怪狸かいりが大きな声を上げたのである。

「は、晴様!アリスです。恐山にいたアリスがいます!」

アリスとは晴明の前世で一緒に行動していた吸血鬼の名前である。不死のバンパイアであるため何処かで生きていると思われていたのだが、怪狸かいりが恐山の戦い時に謎の覆面隊士をアリスだったと言っていたのである。その覆面隊士がここにいる!?どういう事なのか。

しかし怪狸かいりの指を指す方向を見ると、そこには見慣れた顔があるのであった。

その人物こそ、晴明が2年も前に一目惚れに近い恋心を抱きながらも苦楽を共にしてきた沖田友世であった………。


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