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日江島晋総隊長兼内閣副総理

東京にゲートが本格的に開く前日の昼のことである。東京に招集されていた白虎隊の仮一番隊隊舎に大物が顔を出しにやってきた。

「……っ!?これはこれは日江島さん、ご無沙汰しております。先触れも無く何用でこちらにきたのですか?」

仮隊舎と言いながらも、軍幕で仕切られたテントが数張あるだけではあるのだが、それにしても総隊長自らがやってくるためには準備と言うものがある。緊急な場面であれば分かるのだが、今はまだ()()()()()()()()()()()()である。

だからこそ油断した。

「いやいやお構いなく。こう見えて忙しくしている身なのでね、急な訪問で申し訳ない。」

日江島は覚醒者が在籍し訓練する『軍隊』である白虎隊と新撰組をまとめる実力者である一方、内閣副総理という立場でもある。現在は内閣からも説明を求められ、現場での指揮も総括する多忙な生活をしている。通常の人であればとっくに過労で倒れているであろう。彼が倒れたりしない理由は、覚醒能力が関係している。経口接種した物からエネルギーを効率よく取り出し、運用することができるのである。通常であればあまり意味をなさないような能力ではあるが、現状では食べてさえいれば体が疲労する事もなく、脳を休ませる必要もないのである。総隊長と内閣副総理という多忙な状況下では1番活躍する能力と言っても過言ではない。

「忙しいからあんまり時間もないのだよ。だから単刀直入に聞くが、()()()()()()()()()()()()?」

「………。」

「答えられないかい?あぁ、そうそう、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。変な事は考えぬ事だよ。」

対面の椅子に座りにっこり微笑む姿とは違い、言葉には脅しが含まれている。

今までに幾度となく修羅場を潜ってきているのだが、武闘派でもないこの目の前の男に冷や汗が止まらないのである。

「お、お言葉ですが閣下!」

何も言わぬが肯定と取られてしまっては言い逃れできないところまで追い詰められてしまいそうで、慌てて発言する。

「……何を持って私がゲートの場所を知っていると判断なさったのですか。確かに恐山でゲートはこの目で確認してはおりますが、探知できるような能力は私にはありません!」

それはもちろんウソではない。ゲート自体が禍々しいエネルギーを放出していようとも、周囲のモンスターがそれを隠してしまう。覚醒者を総動員するほどになっている現状では、高エネルギーの特異点がゲートの力なのか隊員の力なのか検討が付かないのだ。

「はっはっは!」

突如の高笑いにビクッとしてしまう。

「キミが何を隠しているのか知らないが、何も確認せずにここに来るわけがないだろう?私は()()()と言っただろう。」

そう、確信も無くわざわざ多忙な状況でここまで来ることはない。何かしらの嫌疑がかかっている上に、確証に近い物があるから事実を確認しに来たと言っても良いだろう。

「閣下。一体何を持って私が隠蔽していると思われているのですか?」

「キミも往生際が悪いね。だが確かに嫌疑をかけられた経緯くらいは知っておきたいだろう。初めにキミを疑ったのは東京に招集された初日だよ。」

日江島は冷たい目でコチラを見つめ、淡々と経緯を説明し始めた。

「モンスターの目撃情報が上がった周辺捜索を一番隊が買って出ただろう?だがキミから上がってきた報告は『異常なし』とあった。しかしキミたちが来る直前まで一般人からも報告が上がってきていたのにも関わらず、…だ。パタリと異常報告がされなくなったのだよ。正直初日だけならそんな事もあるかもしれない。しかし次の日も同じ報告がされた。この報告が一番隊からじゃ無ければ疑わなかったかもしれない。だが、白虎隊の情報機関を担う一番隊が何も見付けずにいるとは考えられなかったのだよ。そこで昨晩、悪いとは思ったのだが、隊士の1人を尋問させてもらったのだよ。……後は言わずとも、ね。」

鋭いと言えば鋭い洞察をしてくる人である。正直もっとさまざまな要因もあっての嫌疑であったのだろう。もはや言い逃れはできない。

「…それで?閣下は私をどうしようと考えてコチラに来られたのですか?」

隊規違反も甚だしい人物を放置しては置かないだろう。日江島の言う通り、容疑者…いや、すでに犯人である人物のところにのこのこと無防備では来ないはずだ。きっとこのテントはすでに囲まれている。

スッとソファから立ち上がると、棚に置いてあったライターを掴み、懐から出した紙巻きタバコに火をつけ始めた。

「こう見えて禁煙していたのだよ。家族に身体に障るからと説得されてね。しかしどうも忙しくなると吸いたくなってしまう。…内緒にして置いてもらえるかい?」

「……良いのですか?」

「なんの話だい?私は『今日』の報告を聞くためにここに来たのだよ。午後の会議に間に合わせなければならないからね。キミの事だから、最善を尽くして行動してくれていたのだろう?どうせ今日の夕方提出用の報告書もすでに仕上げているんだろ。」

本当に怖い御仁である。何もかもを見透かしている様にさえ感じてしまうのだから…。何故この人が国のトップにならないのか。この人が総理ならこの国はこの先10年は安泰だったであろう。

「…本日の報告書です。正直この時間にこの報告が出来るとは思ってもいませんでした。()()()()()()()()()に正直驚いています。閣下、差し支えなければ教えて欲しいのですが、何故この時間にお越しになられたのですか?」

「明日アメリカから帰還予定のあの少年を、青森には戻さずにここに置いて欲しいと言う依頼も兼ねてだよ。」

その言葉により全てが繋がったのだ。

2年ほど前の菊祭りの班を変更した事で蒼井晴明が自分の能力に通常よりも早く気が付き、急成長を遂げた。お陰で恐山の件が上手く処理できただけで無く、日江島がこのタイミングでやって来ることにも繋がったのだ。

「ははは。まさか幾度となく悩んできた事が、あの瞬間の采配によって事象に変化が起こっているとは…。」

本当に被害は最小に抑えられるかもしれない。あの人を助けられるかもしれない。そう思わずにはいられなかった。

報告書を読み終えた日江島はやや眉をしかめたが、すぐにいつもの顔に戻してからタバコの火を消すと。

「急いで閣議で報告する。これから忙しくなるぞ!しっかりこのツケの分は働いてもらうからな!」

そう言って日江島は足早にテントから出ていくのであった。

しかしそのときは、何故に未報告事項の隠蔽を許されたのか疑問は残った。非常に優秀な御仁ではあるが、その分危険因子でもある。今回は特に弱みを握られた。

「……三上四席、日江島を監視しろ。今のやり取りを誰かに伝えたと思ったらその人物もピックアップしておけ。」

三上聖みかみひじり四席は情報部隊である白虎隊の一番隊在籍隊士であり、右腕として使っている。三席に三浦真純みうらかすみがいるが、三浦はこちらの言うことを疑っている節がある上に隊長付きであるため使い勝手が悪い。逐一隊長へ報告されるようではこちらも困る。その点三上は隊長ではなくこちら側に引き込めた優秀な人材である。暗躍させるにも能力として申し分ない。

「もしターゲットが複数に情報共有をしていた場合はどうされますか?」

「……そうなる前に消せ。情報を共有したであろう人物に関しても同様だ。」

「了解しました。ではそのように。」

そう言い残すと颯爽と何処かへと消えていったのである。

(聖は優秀で使えるが、自己判断には乏しいな。だが忠実な点は評価できる。隊長が帰還する前に、周辺地域の避難は終わらせておかなければならんな。明日のゲートが開く夕方までに何処までできるだろうか?)

発見を遅らせたのにはもちろん理由がある。だがその理由のために多くの人を危険に晒す気はないのだ。夕方提出予定の報告書を約5時間も前倒しで報告できた事実は大きい。その分この大都市東京から人を逃す時間ができるのだから。

様々な思惑が混ざり合いながら、歴史の教科書に載る大事件までのカウントダウンは刻一刻と近づいてきている。

「さて、君はどうするのかな?蒼井晴明くん。」

先が見えない真っ暗な状態でも、彼には期待をしてしまうのであった。

いよいよ東京陥落編に突入しました。前振りが長い感じにはなりましたが、ここからが本番です。謎は色々と残されていますが、徐々に明らかになっていきます。

ぜひ今後ともお付き合い下さい!

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