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5人の白覚醒者

「昨日ハ盛リ上ガリマシタネ!」

ジェシーが朝食を食べていた晴明と友世に挨拶しながら、うっとりとした表情で昨日を思い出している。

ジェシーがうっとりとしている理由は息もぴったりあっていて、美しかったからである。周囲も徐々に魅入られていき、ダンスが終わると拍手がなかなか鳴り止まないほどでアンコールまでされたのである。

(体調のことなんかすっかり忘れて全力で踊ってたけど、だんだん良くはなってきてるな。抜かれていく力よりも回復が上回ってきている気がする。)

晴明は自己分析をしながら体調を把握していた。正直これ以上迷惑は掛けられないと、気持ちで保たせているところもある。

「晴明サンハソノ後体調ハドウデスカ?」

ジェシーにも心配を掛けてしまっているようで申し訳ない。

今日は予定通りに行動ができそうであることを伝えておく。

友世からも『原因が分かるまでは無理はしないように!』と再度言明されてしまった。

「今日は白認定の方々と交流と訓練なんだろう?アメリカの訓練施設がスゴイって聞いて見てみたかったんだよね!」

晴明は交流会の場所である訓練施設に興味津々だ。もちろんジムなどにある筋力トレーニングができるものがあったりするのだが、さまざまな能力を訓練できるように広いフィールド訓練用施設があったりと贅沢仕様だと聞いている。

「晴明くんは訓練施設の何がそんなに楽しみなの?」

友世が不思議そうにしているのも無理はない。訓練自体が好きではないメンバーが多いため、わざわざ訓練施設を見学したいほどに興味を持つ人がいるのかと思っているのである。だが晴明とて訓練が好きなわけではない。

「だってさ、訓練って辛いじゃん?筋肉付けたいとかでジム代わりに通っている人もいるけど、基本はイヤイヤやってるじゃん?だからもし楽しく訓練ができるような物があればみんな喜ぶんじゃないかと思ってさ!」

「じゃあ見学を楽しみにしていたのは隊舎の訓練を変えたいからだったの?」

友世は驚いている。それまで能力訓練は地味で集中力を要する訓練が多かったためだ。正直低年齢や発達障害を抱えている人には酷である上に、結局全うできている人が少ないのである。もちろん最低限の能力制御は身につけて貰うが、酷い場合はS・ESPエス・イーエスピーを複数付けて生活することとなる。

「誰でもしっかり身につけられるような訓練ができるならそれに越した事はないからね。それこそ多くの暴走事件を未然に防げるようになるかも知れないじゃない。」

もちろん全てが救えると晴明も考えてはいない。白虎隊士が怪我を負う事や、暴走者が誰かを傷付けて悲しむ事が今の半分以下に抑えられれば良いというわけである。

「…そっか。晴明くんはやっぱり凄いね。」

そう呟いた友世の顔が少し寂しそうに見えたのだ。


ホテルを出て車で約20分ほどで訓練場に到着した。

「思っていたのと全然違うんだが?こんな高いビルに訓練場が入ってんのか?」

晴明は約50階はありそうな高いビル全てがエスパー協会の本部兼訓練場だとは思わなかったのでひどく驚いたのであった。何せ自分の所属する一番隊隊舎は道場付きの古民家と言えるような純和風の物であり、なにより平屋である。建物からすでに財力の違いを見せつけられたのだ。

「…確かに立派だね。わたし達が教えるられることなんかあるのかなぁ…。」

完全に友世もそのビルの大きさに引いている。

「ココハ本部ナノデ1番大キイカラダヨ!田舎ノ施設ハサスガニコンナニ立派ジャナイヨ。」

笑いながら教えてくれるジェシーだが、日本の本部だってこんなに立派ではない。むしろ本部が何処なのかと言われても正確には無いのである。現在のトップは内閣副総理である日江島であり、もちろん部隊は存在しない。何か重要なことがあれば各部隊の組長・隊長に指示が来るのだ。つまり実質は内閣主導の部隊になっている状態であり、それも議会で現在もめている案件なのである。

(日本に招待したらきっと違う意味で驚くんだろうな…。)

晴明はいつかは起こるであろう日本へ招待したときを想像して苦笑いしかできないのであった。


一階が受付となっていて応接セットなども置かれるかなり広いスペースが広がっている。奥側のエレベーターからビルの最上階に案内されたのだが、エレベーターの階数ボタンを見ると地下5階まであるようだった。

(上だけじゃなく地下にもあんのかよ…。)

ここまでくると驚きよりも呆れてきてしまう。

「ココデ少シ待ッテテ欲シイ。」

最上階の一室に通された後、そう言うとジェシーは部屋から出て何処かへ行ってしまった。

「びっくりするくらい立派で流石にびっくりしたよな。」

「エレベーターの数が凄いし、乗れる人数みた?30人とか書いてたよ?平屋のうちの隊舎とか見せられないよね。www」

お互い見たものの凄さを語っているうちにジェシーが戻ってきた。後ろにはやはり昨日のパーティーでみた5人組がついてきている。

「ジャアソレゾレ自己紹介サセルネ!」

そう言うと1番大きい男子から自己紹介が始まった。

《初めまして、俺はリオル・マイヤーズだ。歳は15歳だ。リオルと気軽に呼んで欲しい。よろしく。》

リオルはそう言うと、にこりと笑顔で握手を求めてきた。

(やっぱりジェシーみたいに日本語は話せないよなぁ…。)

ジェシーで慣れてしまったが、正直日本語が話せる人は少ないのだ。

リオルは身長もスラリと高く、すでに180センチはあるだろうか。一番の兄貴分なのだろう、自己紹介の順番は年功序列のようであった。

《私はアビゲール・レイエスよ。あなた達のことは昨日のパーティーでみていたわ!歳は14歳で年上だけど、ビビって呼んでね。》

ビビはやや赤毛の可愛らしい少女であった。少し年上と言うが、日本人が童顔と言われる理由が分かった気がする。ずいぶんと大人びた印象である。

《お、俺はマイク・リベラだ。ビビと同じ14歳だ。その、よ、よろしく頼む。》

マイクはコミュ障なのだろうか?あまり人前で話すのは得意そうでは無い。だが身体能力は高そうな体つきをしている。晴明が親近感を覚えたのは言うまでも無い。

《僕はニック・アンダーソンです。歳は君たちと同じ12歳だよ。》そう言うニックは身長は晴明と同じほどである。晴明は最近一年で急に伸びて160センチを超えているのだが、同じくらいはあるように見える。アメリカの子どもの平均身長は分からないが、これで普通なら体格では絶対に勝てないだろう。

そして最後に残されたのは身長は友世と同じくらいだろうか。小柄な女の子である。

《私はミシェル・フィリップスよ!歳は10歳なの。同じ白認定で能力が使えてるって聞いて私も使えるようになりたいって思って楽しみにしていたの!よろしくお願いします。》

ミシェルはそう言うと満面の笑みでお辞儀をしてくれる。なんとも愛らしい少女である。

5人とも素直そうな少年少女で一安心ではあるのだが、訓練はいつもどうしているのかが気になるところであった。

「とりあえず晴明くんに一度お願いして能力が使えるか実験してみてもらう事になってるんだけど、…大丈夫!?」

友世からいきなりの無茶振りを受けたので『いやいや聞いてないんだが?』と切り返すと、やっぱり目線を空中に飛ばして誤魔化している。

「まあ良いんだが、全員同じことやるし!」

と晴明はこの伝達不足ガールにため息をつきつつも、楓で実験した続きも気になるので願ったりな状態でもあった。

「ちなみにジェシーさん。能力を試せる訓練場をお借りしたいのですが。」

「モチロン用意シテイマス!皆サンツイテキテクダサイ。」

待ってましたと言わんばかりに待たせていたエレベーターに乗せられて降りはじめる。向かった場所は地下5階であった。

「上ノ階ニモ訓練施設ハアルノデスガ、危険ダト判断サレテイルコトハ地下デオコナウコトニナテイマス!」

だとしても一番最下層というのはやり過ぎだとは思うのだが、今までこのような実験?はしていないだろう。であるならば、これまではどんな目的で使われていたのか…。聞いてはいけないような気がしてやめておいた。


楓のときと同じように札を持たせて力を流してもらう。すると大小様々ではあるが、お札から水がちょろちょろと流れ始めたのだ。その顔は楓が能力を初めて使ったときと同じであり、それは嬉しそうであった。

《み、水が出てる!》

《冷たい!》

と口々に歓喜の声に溢れていたのだが、ただ1人だけおかしな反応を示す人物がいた。ミシェルである。この最年少ガールだけがお札が赤っぽくなり水は出なかった。

泣きそうになるミシェルを慰めながら、晴明はこの現象を何処かで見た事があることを思い出していた。

(あのときは…虹色に輝いていたけど…。)

そう思いながら友世の方を見る。友世はジェシーと何か話しているようで、気がついていない。じゃああのときのように力を貸したらどうだろうか?失敗したらミシェルが無事である保証はない。ここで無理をする理由はどこにもないのだ。

(そういえば友世は巫女の力を持っているって言ってたような気がする。じゃあこの娘ももしかすると同じように何かがあるから札が光っているのかもしれないな。)

晴明はミシェルの手を取ると友世のもとに連れていったのであった。

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