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宵宮での幽霊騒動

「晴様!あれはなんですか??」

怪狸かいりが大判焼と書かれた店の前で目を輝かせている。労いの意味も込めて連れてきたが、意外と良かったのかも知れないと晴明は目を細めた。

「晴明〜、金魚掬いで勝負しようぜ!」

ケイジがすでにポイを右手に持ってやる気満々で呼びかけてくるが、晴明はすでに大判焼の列に並んでいる。ケイジには謝罪も込めて両手を合わせて頭を下げて置く。

陸斗はというと、比翼連理ひよくれんりの動画撮影にカメラマンとして駆り出されていてお祭りどころではない。

(まあ陸斗は満更でもなさそうだから良いかなぁ。ケイジが1人で金魚掬いとか少しかわいそうではあるけど…。)

陸斗は相変わらず身長は低いが、顔は悪くない上に実力もある。モテてもおかしくはないのだが、趣味の悪さ【陸斗のノート】と女子に対してヘラヘラ媚びを売るような低姿勢が印象を悪くしているのだろう。

ケイジと動画撮影の状況を交互に見ながら列に並んでいると、ネコ娘が耳打ちをしてくる。

「私はケイジさんの所でサカナ取りをしてきても良いですかにゃ?」

(もちろんOKだが、目を輝かせているところ悪いけど、あれは食べ物ではないからね?)

ツッコんでおこうか考えたが、それはケイジの役目と思って黙ってゴーサインを出しておいた。ケイジは1人ではなくなったのが嬉しそうではあったが、それも束の間、ネコ娘が金魚の乱獲をし始めると店主だけでなくケイジも青ざめていくのであった。


怪狸かいり座敷童子ざしきわらしとともに静かな食べ歩きをしていたが、そろそろお腹も満たされて苦しくなってきた。怪狸かいりはこの小さい体のどこに収納しているのか分からないほど食べているが、まだ食べるらしい。

「晴様〜。お腹がいっぱいになったらねむくなってきちゃったのです〜。」

座敷童子ざしきわらしはひどく眠そうにしているので事務所に帰すことにする。

すでに大漁でご満悦なネコ娘が付き添うかたちで手を引かれるように帰って行くのを見送ってから、せっかくならとお参りして行こうと社務所へと向かうことにする。

「この辺りにあるはずなんだけどなぁ…。もしかしてあれか?」

公園の隣にある社務所の脇に、ポツンと小さい神社らしきところがあるだけだった。

樹木に覆われた神社に行くために、賑わいのある通路から中に進もうとしたところで2人の足が止まる。

「…晴様。ここはちょっと雰囲気が悪いですね。怨念のようなものが渦巻いています。」

晴明も不吉な力を肌で感じ取っていた。

「怨念もここまで来れば呪いに近いな。」

どうやらここはいわく付きな場所のようである。2人でその様子を調べていると、後ろからケイジがやってきた。

「どうしたんだ?2人で難しい顔して。」

この異様な状態を、ケイジは感じ取れていないらしい。とりあえず現状を説明すると、ケイジは納得したように自身の知る事を説明し始めた。

「ここはさ、昔首塚だったんだよ。処刑場がここから数百メートルのところにあって、ここに運んだ後にいわゆる晒し首にしていたってわけ。だから怨念とか有りまくりなんだよここは。」

そう言われて初めて納得した2人であったが、正直なんとかしてあげたい気持ちになってしまった。どうするかを相談していると、ケイジだけじゃなく撮影していた陸斗達まで集まってきたのだった。

「……!?ちょ、ちょっと何でこんなところでたむろってるわけ?気持ち悪くないの????」

楓が入口で立ち止まるとそこから中に入ろうとはしない。

「楓は見える側の人物ってことだな。逆に育美は見えないのか?」

晴明に問われた育美は、何が見えているの?と言わんばかりの反応である。

幼少隊の隊格では楓や亜希よりも育美の方が上である。さらに言えばケイジと陸斗は第一隊であり、第三隊の楓が見えているならば、この三人が見えてもおかしくはないのである。

(現状もしかすると能力の高さではなく、能力の種類によって見える人と見えない人に分かれているのかも知れないな。)

なんとなく分析してしまうが、正直言ってこの惨状が見えないことを考えれば、正に知らぬが仏とはこの事である。

「な、なぁ…。さっきから一体何が見える見えないの話をしてるんだよ。怖い事言うのはやめろよ…。」

陸斗は小さい体をさらに縮こませて怯えている。ズカズカと境内付近まで入ってきた育美と亜希も顔を見合わせてやや怯えている。

すると怪狸かいりが要らぬ気を利かせた、すんなり答えてしまうのだった。

「見えないなら分からないと思いますが、今約数十個の生首に囲まれている状態ですね。全部こっちを見てますよ。」

怪狸かいりが良い終わるより前に、一目散にその場から逃げて行く三人に、不謹慎ではあるが少し笑ってしまう晴明であった。


「ってかさ、怪狸かいり達妖怪は大丈夫で幽霊がダメとかどう言う事なんだよ?」

晴明は何が違うんだと言いたげではあるが、他のメンバーからは口々に苦言を言われてしまう。妖怪が大丈夫な理由には『見える』『かわいい』『意思の疎通ができる』の3つが大きいらしい。晴明にしての、正直この3つなら『見える』以外は当てはまらない。そもそも生首は可愛くはないし、意思の疎通など図りたくはないだろう。

「まぁとりあえず、このまま放って置くのは良くないでしょ。見える人から駆除的な依頼が来るのは時間の問題だろうし、何より可哀想だろ?」

晴明はそう訴えて周囲に賛同を求めるが、ケイジ以外は誰も首を縦には振ってくれない。そもそもケイジがなぜこんなに積極的に関わって来るのかいまいち分からないのだが、今は置いておく。

「…晴明は除霊みたいな事できるのかよ。」

陸斗が反対ついでに噛み付いて来るが、そもそも前世は陰陽師であり、その陰陽師とは現代でいうゴーストバスター的な役割も行っていたのである。今世では一度も除霊などした事はないが、知識と技術は間違いない。なんならナビゲータータヌキが隣にいる。

「とりあえず神主さんがいれば許可をもらうんだけど…、どうやらそれらしい人はいなさそうだな。」

であるならと、社務所にいるこの宵宮を取り仕切っている人に許可を取ることにする。すると、9時以降の祭り終了後であれば問題ないと言われたのであった。

「とりあえず時間外だし隊舎に連絡しておこう、オレ達だけでやって良い時間じゃないから保護者を連れてこないとな!」

報連相は基本です!ということで、状況を説明しておくことにしたのである。


それからしばらくしてやってきたのは、まさかの日野副隊長であった。

「全くキミは休めと言われても働くんだな。」

少し呆れられたのはスルーして、現場を見せることにする。ちなみに比翼連理ひよくれんりのメンバーと陸斗は帰宅した。何故か残っているのはケイジである。ケイジにも帰って良いと伝えたのだが、『ここまできたら見届ける義務がある!』と言って留まっているのだ。

怪狸かいりさんは久しぶりだね。恐山以来かな?」

日野は式神である怪狸かいりに対しても優しい。怪狸かいりもしっかりと挨拶してゆったりとした時間が流れて行く。唯一難があるとすれば、生首達が警戒してこちらを見ているくらいだろう。

「そろそろ準備に入りますが、日野副隊長は…見えてますか?」

先ほどの状況から考えても、力の強弱が問題ではなく性質の方が合わない限り見えないのだろう。では日野は見えるのか?晴明はいささか疑問に思ったのである。

(そもそも日野副隊長は能力は公表していない。副隊長になっている点を考えれば相当優秀な能力を持っているのは確かなんだけど、幽霊が見える見えないのは話が違いそうだからなぁ。)

晴明は日野の反応を見ているが、特に何かを目で追っているような素振りはなかったので、見えていないと思っていたのだが、反応は微妙なものであった。

「うーんとね、君たちが話す生首は見えていないんだけど、モヤのようなものは見えているんだよ。このモヤの正体が幽霊なのかどうかは分からないけど、今回はそういうことなんだと思って対処している感じかな?」

つまりハッキリとは見えないが、見えているということなんだろう。

「参考程度で日野副隊長の能力を教えていただく事はできますか?どの能力が見えるのか検証してみたくて。」

晴明は純粋な疑問を解消したく質問したのだが、日野の反応を見て慌てて『答えられないなら無理のは聞きませんので!』と訂正したのだった。

何故なら普段温厚な日野のニコリともしない表情から、殺気のようなものを感じたからである。

晴明はそのときの日野の反応が気になり過ぎてしばらく忘れることができなかった。

除霊は時間もかからずに終わった。祭り関係者も興味津々で様子を伺い、晴明の陰陽術発動時の光の美しさに目を奪われていた。

生首達の気持ちが晴れる事はないが、来世では幸せな人生を歩んでもらいたいと思う晴明であった。

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