沖縄でのアディショナルタイムその②
水族館からタクシーを使って国際通りまで移動してくる。
夜はステーキハウスをすでに予約してあるので、軽めにお腹に入れるために喫茶店に入ることにする。2人でサンドイッチと飲み物のセットを注文して席に着くと、友世が驚いて質問してきたのだ。。
「晴明くんってコーヒー飲めるの?」
「…逆に友世はコーヒー飲めないのか?」
小学生といえど、もうすぐ6年生である。お茶やコーヒー位は飲むだろう。まぁさすがにブラックでというわけではなく、ミルクは入れているので苦味は軽減されているのだが、それでも友世はびっくりしている。
「楓もコーヒー飲んでたと思うけど?まあ亜希と育美はいつもコーラしか飲んでないイメージだけどな。」
比翼連理のメンバーの中でも楓は大人びている。見た目がとかではなく、振る舞いが小学生離れしているのである。落ち着いていて、人に対する対応なんかも小学生には見えない。晴明も落ち着いている上に最近は身長もどんどん大きくなってきており小学生には見えないと言われているのだが、周囲の評価など本人は気にしてもいない。
対して亜希や育美は完全に元気な賑やかし担当なので、振る舞いも年相応であり目立つタイプである。小学生らしさを全面に出しているのでバラエティーなどにも呼ばれることが多い。
では友世はというと、ボーカルという以外はあまり目立たずパッとしない。テレビに個別に呼ばれることもなく、ソロの仕事は白虎隊くらいだろう。今回のことでかなり注目されたので今後はどうかわからないが、本来ここで男女2人きりでお茶していていい人物ではないのは間違いない。
「楓はわたしたちの中でも大人っぽいからね。服装見てても分かるでしょ?育美たちもショートパンツで元気よくって感じだからコーラとかイメージ通りじゃん。んで、わたしは何を飲んでるイメージなのかなって思っちゃったんだけど、どう?」
晴明は悩んでしまった。友世のイメージ…正直イメージ通りなら、比翼連理の中でも妹キャラって感じではある。姉たちから可愛がられる素直な妹…。晴明は小悪魔的な部分も知っているが、もちろん仲がいい人達しか知らない情報だろう。であるならば世間からは『最強の妹』という感じではないだろうか?
それを聞いた友世はうーん…と納得しながらも、色々気になるところもあるらしい。そしてひと言聞いてくるのだ。
「じゃあ最強の妹は何を飲んでそうなの?」
「うーむ…ミルク味のプロテイン?」
「それだと最強じゃなくてムキムキな妹じゃない?」
大喜利のような回答で2人で笑ってしまうのだった。
喫茶店から出てお土産を買うためにお菓子を物色していると、定番のモノで友世被ってしまう。クラスが同じで隊舎も同じだと、被るのはちょっと避けたい所である。クラスには紫いものタルトとちんすこうを2人からということで用意し、隊舎にはいろいろな味が入ったちんすこうの詰め合わせを大量に買って配送してもらうことにした。きっと副隊長様が上手くやってくれることだろう。
「家へのお土産くらいは手持ちで持ち帰ってもいいかなぁ?」
友世はあまり荷物を持ちたくないようで、送るかどうかを悩んでいるようだ。晴明はせっかく送るなら全て詰めて送りたいと考えていたので、すでに家族用のお土産も同じ箱に詰めてもらうようにしている。
それをみた友世も晴明にならい、一気に送ることを決意したらしい。お店から出たときは清々しくにこりと笑顔で。
「これでお土産の心配は無くなったね!」
と、肩の荷が降りたようであった。
「ちなみに、隊長には個別でお土産とか送らなくてもいいものなんかなぁ?」
晴明は1番上の上司に対してお土産という物を贈るべきか悩んでしまう。すると友世はふふっと笑いながら辛辣なひと言を言って退けるのだった。
「そういうのは中間管理職の仕事だから一隊士の悩むことじゃないよ!」
副隊長とは大変な仕事だと改めて思うのだった。
2人で国際通りを歩いていると、急に晴明がある店の前で立ち止まった。
「どうしたの?なんか気になる物でもあった?」
友世が何のお店か気になって覗き込む。どうやら色々な雑貨などが並ぶ店のようである。この店の何が気になったのだろうか?入口に並ぶハブ酒がやや気持ち悪く見えるが、晴明は気にせずに奥に進んでいく。
「ちょっとだけ時間ちょうだい!すぐに終わるから!」
そういうと晴明は奥のカウンターで店員に話しかけ始めた。友世は他の雑貨等をみて歩く。髪飾りなんかもハイビスカスをモチーフにしてあり、地元ではなかなか着けて歩けない仕様になっている。
(旅行で買ったものってその時にしか使えないものとか多いんだよね。ネズミの王国で買った物とか王国内だとみんな付けてておかしくないけど、その辺の街中で付けてる人はいないしね。)
友世が雑貨に対して辛辣なことを思い浮かべていると、晴明が戻ってきた。
「ごめん、お待たせ!」
晴明は何かを抱えている。紙袋に入っていて中身は分からないが、食べ物ではなさそうである。
「何を買ってきたの?」
友世が素直に聞いてみると、急にわたわたし始めて、もごもごと気まずそうにしている。
「今は聞かなかったことにしておこう!」
そう言うと友世は晴明の背中をペシペシと叩きながら先に進んでいく。このとき何となく友世は察してしまったのだ。この中の物は自分、または自分たちへの贈り物になることを。自分以外の人がどこまで含まれるのかは分からないが、少なくとも怪狸は入るだろう。初めはそこに自分が含まれるとは思っていなかったのだが、先ほどの晴明のリアクションで自分も入っていることが分かってしまったというわけである。晴明という男はつくづく隠し事ができないタチなのだろう。
「…か、隠しておくつもりは無いんだけど、今は未完成だから後で見せるよ。今はとりあえず忘れておいて!!」
その一言で友世は笑ってしまうのだった。
(きっと晴明くんは浮気とかできない人なんだろうなぁ。)
「楽しみにしておくね!」
そう言うと晴明は照れたように下を向いてしまうのだった。
沖縄は何故かステーキハウスが乱立している。数十メートル歩けば有るほどなのである。基本的にお肉は好きだが、ステーキは何か特別なことがあるときくらいしか食べないのが日本人である。それ以外はステーキよりも焼肉に行くことが多い。しかし今回は沖縄というステーキのメッカとも言える場所で、友世の優勝祝いも兼ねているとなれば奮発もする。もちろん今回は晴明の奢りである。友世は初め遠慮していたのだが、『お祝いだから!』とゴリ押ししたわけだ。
「せっかくだからコースでお願いしておいたんだよね。飲み物も好きに頼んで!」
晴明はお金持ちというわけではない。ただ、白虎隊一番隊に在籍したことによりその辺の小学生よりは自由にできるお金を持っているのだ。そしてここが使い所だという事でもある。
「…なんか申し訳ない感じがするんだよ。奢ってもらうには額が大きいしさ。」
友世はまだ恐縮している。だがここで、男を魅せたい晴明の意地もあるのだ。正直男が全額出すなど前時代的であり、ジェンダーと騒がれ始めた辺りから徐々に無くなってきている。しかしお祝いと称している以上、出させるわけにはいかないのだ。そこで晴明はしっかりと言い訳を用意したのだ。
「大丈夫!来年はオレの優勝祝いとして友世に奢ってもらう予定だからさ!」
友世を見ながらにやりとしてみせる。
「えー?じゃあ来年もわたしが奢ってもらう事になって、申し訳ない気持ちがどんどん増えていっちゃうなぁ〜。」
友世も晴明をみてふふふと笑う。
晴明には優勝したい理由があるのだ。それは好きな女の子に負けたままでは告白などカッコ悪くてできないと思い、友世に勝とうと誓ったのだ。
(来年こそは友世に勝って告白する!……正直今言いたい…昨日勝ってれば今言えたのに…。こんなに良い雰囲気なんかそうそう無いよ。)
晴明は負けたことを後悔しまくっているのであった。
晴明は食後のデザートを食べ終わると、先ほどの紙袋を取り出しておもむろに机の上に広げ始めた。
「何それ綺麗、勾玉ってヤツ!?」
友世は興味津々で机の上に並ぶ石を手に取って観ている。
「これはよく沖縄のお土産で売られてるホタル石ってやつだよ。青森でもホタル石は取れるから珍しい物ではないんだけどね、ここで売られているホタル石は光を吸収して光るんだよ!売られてる時にはブラックライトで照らされたりしてたよ。」
晴明はその中の一つを手に取ると天井にある照明に照らして観ている。
「その石をこんなに買ってきてアクセサリーでも作る気なの?」
友世からすれば綺麗な石を使ってアクセサリーを手作りするために買ったとしか思えないのだが、晴明には違う目的がちゃんとある。
「勾玉の形に加工されていたから買ってきたんだよ。この形の方が効果が乗りやすいからね!ついでにヒモを通す穴を開けてもらってたんだ。」
そう言うと晴明は鞄から細い筆を取り出した。
「書くものなんかないのに筆なんか出してどうするの?」
友世は次になにを見せてくれるのかワクワクが止まらないという感じに、前のめりになって晴明を観ている。ついにはわざわざ隣の席に座って近くにきて見始めた。
「そんなに興味を持ってもらえるなんて思わなかったから嬉しいよ。この石に付与を与えてアクセサリーとして配ろうと思ってさ。ホタル石は意外と付与と相性が良い上に安く手に入るからちょうど良いんだよね。」
そう言うと石に筆で何かをすらすらと描き始めた。それは光が石の上に乗るように描かれていくようで観ていて美しいほどである。表に五芒星を描き入れて、裏側に『守』と一字書き入れた。そして筆を置いてから指を2本立てて力を込める。すると石の中に光文字が浸透するかのようにすーっと消えていったのである。
「今なにをしたの?呪文みたいなのが消えちゃったけど。」
友世はマジックを観るお客のようにはしゃいでいる。
それを見ながら照れくさそうに勾玉にヒモを通してネックレス型にすると友世の首に付けてあげたのだ。
「紙の護符と同じだよ。一度だけ強い衝撃にも耐えて身体を護ってくれるように付与を付けたってわけ。トラックにはねられるくらいなら無傷で生還できると思うよ!」
そう言うと次の石に同じように描き入れていく。友世はそれを聞いて石をまじまじと見ながら、その異常さに気がつく。
「ってそれは国宝級なんじゃないの!?大金出しても欲しがる人がわんさかいると思うんだけど??」
慌てる友世に晴明は作業を続けながらも、笑顔で対応する。
「そんなに何個も作れないし、あくまでも『強い衝撃』だから電柱に頭ぶつけたくらいじゃ発動しないもんだよ?普段使いには適さないお守りだし、量産できないからこれで生計立てようとかは無理じゃないかな?」
(いやいや違う違う、そうじゃないー!!バレたら各国のお偉いさんたちから注文が殺到するレベルのアイテムだよ〜!)
友世の心配をよそにすでに同じものを3つも生産している。もしかしてもっととんでもない能力を付与できるんじゃないかと思うと、背筋が凍る気がして周囲には付与について黙っているように注意しておく。バレたら沖縄中のホタル石が消える未来しか見えないからだ。
(晴明くんって実は知らないうちにとんでもないことにしてるんじゃないかなぁ。)
そう思いながらも隣で石を加工していく晴明を見守る友世であった。
沖縄編もこれで終わりです。次は6年生になる晴明たちに乞うご期待ください。
評価とブックマーク登録をお願いします!




