合同剣術大会その7
予選大会後半は敗者復活戦とシード決めを兼ねた順位決定戦が行われる。
すでに東北ブロックからはリーグ戦を抜けた16名が勝ち抜けていて、晴明はその一人である。
高山・あかねを含む大勢が敗者復活戦に進むため試合数も多くなり、前週よりも過酷になるのだ。すでに抜けたメンバーはトーナメントで順位決定戦を行い、昨年度のシード選手16名+各ブロック大会の優勝者16名で32シードを決める。さらに上位抜けの選手から順番に優位になるよう本戦のトーナメントが出できるため、抜けたからと言っても気が抜けないのである。
「わたしも絶対に本戦に出場するから見てなさいよ!」
先ほど会場入口で会ったあかねが、少し強気に宣言して会場に入っていく。見てなさいよと言われたが、順位決定戦と敗者復活戦は同時刻に開催されており、会場が近いとはいえ別会場である。あかねには後で弘前のお土産でも渡して機嫌を取ることにした。
午前中はトーナメントの抽選を行うだけで終了となり、今回も連れて行って欲しいと懇願して付いてきた怪狸とラーメンを食べに行くことにした。辛いのが得意な晴明は仙台辛味噌ラーメンと聞いてから、ずっと狙っていたのである。
よせば良いのに怪狸も真似をして同じものを注文し、辛味に苦手なことが露呈してしまった。自分がタヌキという事を忘れているんじゃないかと思う。驚いた時に耳が飛び出すのはこちらもヒヤヒヤするのでやめてもらいたい。
午後はいよいよトーナメントが始まる。
今日は三試合、明日は決勝とその他の順位決定戦の日程である。と言っても、今回の注目選手は優勝候補(高山)を圧倒した晴明に他ならず、晴明がどこに入るのかが一番注目されていたのだった。今大会の最年少が箭内あかねでその次が晴明なので、年下にビビる先輩というのも情けない話なのだが、逆に周囲から高山への期待の高さを知り驚く他なかった。
(ケイジと同レベル扱いしてごめん。)
周囲の予想通り対戦相手は高山に比べても数段落ちる相手であり、晴明は順当に勝ち上がり決勝戦へと駒を進めた。明日戦う決勝戦の相手は、あかねと同じ仙台支部所属の15歳、男子高校生であり支部内戦であかねが負けた相手とのことであった。
(今回は黒坂隊長も流石に来ていないし、大会運営に携わるさくら隊長も姿は見かけるけど、あいさつする暇もなさそうだなあ。)
先週のお礼も兼ねて下っ端から声を掛けるのが礼儀とは思うが、そのタイミングがなかなか来ない。実際ヒラ隊員と隊長の、しかも他の隊の隊長ともなれば接点がある方が不思議である。
夕ご飯は何にしようかと考えながら会場から出ようとすると、ひょっこりとあかねがこちらの会場に顔を出しているのが見えたのだ。
(さくら隊長を探しているのか?)
そう思ったが、いくら妹でも忙しく動き回って仕事をしている隊長を捕まえるのは難しい。一人うろちょろするのは可哀想になり、後ろからトントンと肩を叩いて声を掛ける。すると飛び跳ねる様に驚いてキッと睨まれてしまった。きっと怪狸なら耳が飛び出していただろう。
「後ろから来るなんてびっくりするじゃない!普通に正面から声をかけなさいよ!」
憤慨するあかねだが、会場の内側は座席などが邪魔な上に人通りもまだ多いため、効率的ではなかったのだ。だが驚かせてしまったのは事実である。晴明は平に謝っておく。
「さくら隊長は忙しそうでオレも声を掛けられなかったんだ。あかねも急用じゃないなら後にした方がいいと思うぞ?」
とりあえず本来の用件を伝えておく。そのために声を掛けて謝るハメになったのだ。するとあかねはキョトンとして、
「おねえちゃん?特に用はないけど…。」
てっきり姉を探しに来たのかと思えばどうやら違うらしい。こっちに用が他にあっただろうか?と思っていると、あかねは少しムスッとしている。
「何!?先週負けたわたしがここに来ちゃいけなかったわけ?」
ご立腹である。違う違う、そうじゃない!っとあわてて否定する。あかねには言葉足らずでは誤解が生じると面倒なため、事細かに説明をする。それで改めて『ここに何しに来たんだ?』と聞いたわけである。
「なんでわからないのよ!あなたに会いに来たに決まってるでしょ!…って何言わすのよ!!!」
あかねは一人でまた騒いで撃沈している。うーん…言い方が悪いわな。こりゃまた変な噂が流れてしまうと肩を落とす晴明であった。
あかねとともに会場をでながら用件を聞くと、今日の試合は全勝で終えたという報告だった。自慢かな?と思って聞き手に回っていたのだが、ついでに晴明も結果を聞かれたので正直に話しても大丈夫かと少し悩んだが、どうせバレると思い素直に明日が決勝戦だと伝えた。せっかく気分よく自慢していたのにまた不機嫌になるじゃないかとも思ったのだが、あかねは笑顔で喜んでくれたのだった。晴明は意外に感じたが、あかねは純粋に晴明の活躍を喜んでいるに過ぎない。あかねは元々素直な明るいタイプなのだ。しかしあかねも照れがあり、晴明に対してはうまく接することができないため、晴明の頭の中ではいまだに『わがままな妹』という認識なのである。このままではあかねの気持ちに晴明が気がつくまでには相当の時間を有することになりそうである。
「明日の対戦相手って誰なの?」
結局そのままあかねと怪狸の三人?で夕食を取ることとなり、怪狸の意見からアーケード街にあるトンカツ屋に入ることになった。注文を決めた後に明日の対戦相手の話をあかねから振られたので、せっかくなので聞いてみる。
「それは…うーん…。まあ大会後に六番隊に移動することが決まっているからわたしが話しても別に良いか!」
何か同じ隊だと守秘義務でもあるのかと思い無理しなくて良いと言ったのだが、あかねは大丈夫!と続けて話す。
「能力が六番隊向きでね。四番隊は治癒系専門じゃん?丸山さんは力が強いのに風系統の能力者らしくて、六番隊で引き抜くことになってるのよ。」
(なるほど。だから黒坂隊長が見に来ていたわけか。いくら隣のブロックだからって、わざわざ観にくる方がおかしいもんな。)
晴明は先週黒坂が来ていた事を思い出して納得したのだった。
「そんでもって、剣術にも強いってわけ。正直身長差もあって近づくこともできなかったわ。」
15歳とまだ伸びきっていないであろう身長は、180センチメートルは超えているだろう。高山とどちらが高いか比べてみたいほどである。ともにバスケットボールとかバレーボールでは引っ張りだこにされそうな羨ましいスペックである。髪も黒髪短髪でツンツンと立てている爽やかなオシャレさんなところも思春期の高校生らしく、まさにスポーツマンという様な風貌である。
「実は山形の高山さんがライバル視していてさ。年も近いし、何よりおねえちゃんに近いのも気に食わないみたいなんだよね。」
(なるほど。さくらファンということか。)
同年代の男子からすれば、さくら隊長は憧れの姫君なのだろう。いつもポニーテールで身長も155センチほど、スラリとした風貌で医療班という肩書きまで美しい。モデルやアイドルとして活動していても不思議じゃないほど顔も整っているのである。一度見て惚れ込む男子は後を絶たないわけである。
(まあ妹想いで他人にも優しい、性格まで完璧超人だからな。)
あれをチートと言わずになんだというんだ?と他の女子から恨まれそうな人なのだが、女子からの人気もめちゃくちゃ高い。何かの雑誌で能力者イケメンランキング男子部門が黒坂隊長で、女子部門ではさくら隊長だったのを思い出す。
「そりゃ丸山さんも高山さんに一方的にライバル視されてるのも可哀想だな。」
少し明日の対戦相手に同情するのだが、あかねは首を横にふるふると振りながら一言。
「丸山さんもおねえちゃんのこと好き過ぎて、黒坂隊長の誘いを一度断ってるから!まあお互い様なんだと思うよ。」
晴明としては『じゃあ好きにやってろ!』とツッコミを入れたくなったが、運ばれてきたトンカツによだれダラダラの怪狸とサイドツインがピコピコ揺れてるあかねを見ながら仲良く食べることに専念するのであった。
遂に20話に到達しました!
実は本編と呼べるところまでまだ行ってもいないのが事実だったりします(汗)
タイトル詐欺みたいになっているのが心苦しいのです。
ぜひ応援よろしくお願いします!




