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合同剣術大会その6(間幕)

一泊多く仙台に泊まる事になったお陰でしっかりお土産を買うこともできたし、なにより一応予選通過も果たした訳で、火曜日に大手を振って登校したのだ。しかしお土産そっちに気でクラス内では箭内あかねとの関係がウワサになっており、これまた面倒な事になっていた。ネット配信こえ〜。

「観たぞ!予選での箭内妹との戦い!その後の様子もバッチリ映っていたけど、もしかして姉公認の仲なのか?」

どんな尾ひれが付いているのかは分からないが、あかねとは同期の関係以外は特に無い。どう見たらあの最悪の出会いで恋仲に勘違いされなければならないのだろうか?むしろ『改善』したと言う方が正しいだろう。だがウワサとは、本人が何を言っても周囲の思いたいように伝わっていくものである。

「お前、比翼連理ひよくれんりの4人だけじゃなくて箭内あかね氏にも交友を深めて帰ってくるとは…羨ましい!」

ケイジが血に涙を流すんじゃないかと思うほどに悔しがっている。誤解がないように伝えたいが、比翼連理ひよくれんりの場合は雑用に近いのだが?っと言ってやりたい。そう思う晴明をよそに、陸斗があかねについての情報をベラベラと周囲に垂れ流している。個人情報保護法って知ってるのか?とつっこんでやりたい。捕まるよ。マジで!


「しかし、稽古の時から勝てないとは思っていたけど、年上相手に余裕で勝つとは思わなかったよ。」

ケイジが昼食を取りながら大会での剣術の話をしてくる。確かに高山はそこそこやるヤツではあったが、一番隊のメンバーの方が強いと感じた。むしろケイジなら10回やれば1回位勝てそうにも思う。その程度なのだ。

「まあ俺たちは友世に鍛えられてるからな。実際はしごかれ過ぎて来てほしくないと思うほど、恐怖が脳に焼き付いているんだが…。」

そういえば初めて第一隊に来た時も、ケイジは友世にボコられていた。晴明は一度も手合わせをしたことがないのだが、タイミングが合えばそのうちやることもあるだろう。

「…そういえば一番隊の予選出場者を決める内部大会にも参加していなかったけど、どこか怪我とかしたりしているのかな?」

晴明は友世がそんなに強いのであれば予選に出ない事を不自然に感じた発言であったのだが、それに対してケイジと陸斗は顔を見合わせ、呆れたように教えてくれるのであった。

「…マジかお前、友世は昨年度の本戦優勝者だからシードだぞ!?」


後で調べた結果だが、友世は二大会連続で優勝している現チャンピオンということになる。剣術大会で全国飛び回り、ご当地お土産を網羅もうらしているんじゃないかと勝手に思いこみ、お土産でお菓子を配っても喜ばれないんじゃないかとドキドキしてしまう。実際はお土産のお礼とともに『おめでとう!』と言いながら美味しそうに食べていたので、晴明はそれだけで幸せな気分になったのだった。

亜希や郁美からは案の定、あかねについて質問攻めにされたのだが、他のクラスメイトと違ってソッコーで『やっぱりね。』と納得してどこか嬉しそうでもあったのが気になる。楓にいたっては亜希たちの話を側で一緒に聴き取り、ニコリと笑顔になりながら右手でサムズアップをしてくる始末である。比翼連理ひよくれんりのメンバーの反応にはいつも違和感を感じる晴明であった。


放課後はいつもの稽古場でいつも通りに汗を流す。練習後は汗を水で流すために水場に行くのだが、冬の水は冷たく頭から被ると肺が縮こまって息が苦しくなる。最近友世の姿を見かけないなぁと思いながら手探りでタオル探していると、誰かが頭にかけてくれた。

「ちゃんと拭かないと風邪ひいちゃうぞ!」

声の持ち主に気がついて頭を拭きながら目を開けると、ニコッと笑いかける友世の姿があった。晴明は突然現れた友世にドギマギしてしまうが、今こそ話題をしっかり振って『会話』をしなければ!と気合を入れ直す。

「最近道場で見なかったけど、どこにいたんだ?」

晴明は聞いておきながら、

(もしかしてストーカー的な発言だった?気持ち悪いとか思われたかな?)

と内心ビクビクして半泣き状態だった。しかし友世は晴明の質問にしっかりと返答してくる。

「最近は幼少隊の練習に顔を出すようにしてるんだよね。晴明くんみたいな優秀な人を育てないといけないじゃん?」

さすがは二大会連続優勝者である。ウワサでは友世に剣術指南をできる人がいないため、模擬戦を中心に行なっていると聞いていた。多分幼少隊に行くのもその一環でもあるのだろう。

「ネット配信で試合見たよ!予選の相手が高山さんとあかねちゃんって知ったときはちょっと心配しちゃった。まあそんなの要らなかったみたいだけどね!」

二人を知っているのか?と聞いてみようか考えたがやめておいた。高山は昨年の本戦出場者らしいし、あかねは隊長の妹で知名度もあるのだろう。

「オレは友世が二年連続の優勝者だってさっき知ったんだけどな。その優勝者からみて、オレの剣はどう映ったんだ?」

晴明は友世の剣を実際に見たことは無い。今年からネット配信がされているため、昨年までは結果しか知ることができないからだ。であるなら、逆に友世は試合を観てどう感じたのか?大人に混じっても優勝するその剣を知る機会になればいい。そう思って質問したのだが、得られたのは講評だけだった。


きっと周りから見たら夕方の水場で楽しげに話す2人は良い雰囲気に見えることだろう。まあ実際は冬で寒いし、内容に色気のない剣術の話であるのだが、それ以外はカップルと間違われてもおかしくない距離感だと思う。だからこそ晴明はもっと友世と交友関係を深めたいと考えていた。告白…は流石に飛躍し過ぎだが、一緒に遊びに行くくらいは気軽に声をかけたい。でもいきなり声をかけて遊びに誘っても良いものなのだろうか?実はこの雰囲気のままが一番いいんじゃないかと自問自答してしまう。そして、今日はやめておこう。と晴明が()()()()現状維持を決めた時であった。

「そういえば本戦の会場は今年沖縄なんだよ!冬だから海は無理だろうけど、せっかくだから一緒に観光しない?」

まさかの友世からのお誘いに平静を装うが、手足はガクガクになり手汗もヤバい。もちろん飛びつく様に提案に乗り、沖縄での約束をした上に連絡先まで交換して、またねと分かれたのだった。そもそも連絡先くらい比翼連理ひよくれんりのブレーンとして全員分聞いておけと言われても仕方がないが、楓の連絡先を知っていれば困ることがなかったのでスルーされていたのだった。

晴明はその晩、せっかく手に入れた友世の連絡先にドキドキが抑えられず、連絡するかしないかを悩みに悩んで、結局『現状維持』を貫くのであった。

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