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昇格審査その1

「今回警備に際して全指揮権を預かることになっている、白虎隊第六番隊隊長の黒坂誠くろさかまことだ。これから細かい指示とシフトが書かれた書類を、個人の端末に送るから受け取ってよく確認しておいてくれ。」

黒坂隊長は説明を担当隊員に代わると、同じく警備にあたる警察官や会場担当者との打ち合わせに向かっていった。黒坂隊長は黒髪短髪で高身長、しかも国立大学の現役大学生ということもあり、白虎隊がメディアで取り上げられてから女性を中心に人気を獲得し、白虎隊の顔とも言える人である。逆にハイスペック過ぎて、男どもの嫉妬を全身で浴び続けているのである。


晴明にとっては地元以外では初めての任務になるため、いつも以上に注意しなければならない。幼少隊からの昇格試験を兼ねている事もあり、一緒に行動するのは安全を考慮して席次が上の隊員になる。しかし、安心はできない。前年度は高レベル者の暴走により、多くの隊員が怪我をして病院送りにされている。そもそも参加者全員の能力検査を義務付ければ済むはずなのに、日本政府は個人情報などの観点や検査後の覚醒等の理由から、与野党共に案を強制的に通すことができずにいる状態だ。

また、なぜ青森から埼玉まで遠征しているかというと、六番隊の管轄が広く、北関東の群馬、茨城、栃木と埼玉全域が担当であることが理由である。広すぎる割には隊員の数は他隊とさほど変わらず年がら年中人手不足なのだ。担当地域が広すぎるため、細分化する案も出ているが、今のところ隊長格が育成されていないことを理由に実現されていない。そのためこのようにイベントなどが行われる際には、今回のように他の隊から人員を借りて任務を行うことがあるというわけである。


比翼連理(ひよくれんり)の出番にはシフトが空いていて良かったけど、練習する時間はなさそうだな。)

晴明は今回もベーシストが不在のガールズバンドをお手伝いすることになっている。もはやメンバーなのでは!?と言いたくなるが、あくまでも女子四人のバンドなので正式メンバーではない。完全に便利屋なのだが、ベースを弾くと友世が尊敬の眼差しを向けてくれるのでむしろプラスと捉えている。そもそも友世が楽器をまったく扱えないために一人足りないので、友世が一番晴明に対して申し訳なく感じているというわけだ。

(無事に終わってくれることを祈ろう。)

明日からの二日間、ハードスケジュールをこなす事になるのが分かっているため、少しでも仕事を増やしてくれるなよ!っとため息とともにボヤくのだった。


イベント1日目

 比翼連理ひよくれんりの出番は二日目の正午過ぎなので、今日は警備に全てを傾けることができる。東京ドーム5個分と言われる広大なフィールドには、前日夜からテントを張ってキャンプをする人も大勢いて、まだ朝の6時だというのに賑わっている。夜警担当隊員と交換して任に着く。

「今日から二日間一緒に行動する事になるのでよろしくね。」

そう話すのは六番隊の第五席である笹山茜ささやまあかねさんである。今回のお目付き役というわけなのだが、歳が近い方がいいだろうと配慮されて16歳の彼女が選ばれたらしい。

「同じく昇格試験ってので気負ってるかもしれないけど、頑張れよ!邪魔しなければこっちでなんとかするから大船に乗ったつもりで後ろからついてこい!」

隣で勢いが良い少年は蝦名大輔えびなだいすけ。一緒に昇格試験を受ける事になっている、幼少隊第六隊から来た中学二年生らしい。アニキぶったムーブは少し鼻に付くが、周囲からは案外慕われているらしい。面倒見の良いお調子者という感じだろうか。この二日間、大人がいないこの三人で本当に大丈夫なのか心配なのだが、それだけ人手不足という事なのだろう。

しばらく三人で会場全体を見て回っているがまだ開場前という事もあり、穏やかな初夏の朝の雰囲気が眠さを誘う。暇を持て余した蝦名少年が、一番隊舎から来た晴明に質問攻めをし始めたのだった。

「一番隊の隊長ってどんなやつなんだ?やっぱ近藤隊長みたいに格好いい感じなのか?」

まあ聞きたくなる第一位の話題だろう。正直今回の任務に来てからこの質問を受けたのは数え切れない。それだけ一番隊隊長様は誰にも姿を見せていないという事なのだ。さすがに近藤隊長は会っているのだろうが、守秘義務を全うしているらしい。

「残念だけど、一年以上一番隊に近いところにいても分からないってことだけは伝えておくよ。きっとそのうち発表されたらこの人だったのかって思うんだろうけどね。」

同じ隊舎にいるんだから顔を一度や二度見ているに違いない。今では一番隊舎のメンバーは皆そう言って深く考えないようにしているのだ。

「ちぇ、同じ隊のヤツでも分かんねーのかよ。発表できない理由があるんだろうけど、直属の部下には知らされてると思ったのによ。」

蝦名はつまらなさそうに唇を尖らせていた。それを聞いていた笹山さんも噂話に乗っかってくる。

「一番隊隊長って白認定されてるって話だったから、能力を隠す意味でも秘密にされているんじゃないかって言われてたんだよね。でも同じ白認定された蒼井くんは隠されてないじゃん?って事は、発表できない理由が他にあるって事じゃない?」

確かに何か特別に発表できない理由があるんだろう。でも公表できない理由なんて思い付かない。うーん、と3人で考えていると蝦名少年が何かに気が付いてこっちを見てきた。

「ってかお前が()()()の白認定で能力が判明したって覚醒者だったのかよ!」

うわさ?正直ろくな噂ではないだろうとため息を吐きながら一応確認のためうわさについて聞いてみる。すると思った以上にろくでもない回答が返ってくるのだった。

「日本で一番隊隊長意外で二人目の、白認定の能力覚醒者でスーパールーキーって話だろ?」

やっぱりろくでもなかった。誰がスーパールーキーだって話ですか?誰がそんなうわさを流したんだ?と問い詰めてやりたかったが、この二人がそこまで知っているわけはないだろう。

(むしろこんなにガバガバな情報漏洩っぷりでよく一番隊隊長の素性は隠せるな。)

自分の話も秘密にしてほしかったと思う晴明だった。


午前三時間の見廻りが終了し休憩に入る。出だしは問題なく順調に進んでいる。

暴走した人が現れることもなく、これからいよいよ野外ライブがスタートする。開場時に入場で揉めたりするのも警戒していたのだが、そこはやはり日本人ということなのだろう。素直に並んで一列で入場していく。

初日は目玉となる演者が夕方からの出演のため、日中は穏やかに進行すると予想されていた。そしてそれはまさに過去のデータに裏打ちされた完璧な予想であった。

「やっぱり予定通り夕方から忙しくなりそうね。でも暗くなると暴走者を見つけるのも難しいのよね。」

笹山さんは昨年も警備隊として参加しており、夕方の暗がりでの捜索が難しく、発見したときにはすでに被害者が出てからだったし、さらにライブ中は人と人が密集しているため近づくのも大変だったらしい。

(暴走者が出る前にある程度警戒しておいても良いのかもしれないな。先に式神を飛ばしておくか。)

笹山さんの話を聞いて、事前に100枚ほどの人型の紙に力を流してライブ開場全体を監視する。力の異常な上昇を感知したらすぐに座標を送るようにしてあるため、正直何処にいても監視はバッチリだ。あとは暴走者出たら式神を集結させて取り押さえるだけである。

晴明にとっては普段よりも札の枚数を使うのでもったいない気もするが、怪我人が一人でも少ないように最大限の配慮をしなければならない。ほぼ内職三日分を今夜で使い切るのは断腸の思いで残念だが、背に腹はかえられない。人命優先である。

(まあまたお札は作れば良いし、今まで貯めた分からすればたいしたこと無いわけだから良しとするか。)

晴明は自分に言い聞かせ、空に投げた式神が開場全体に飛んでいくのを見送ったのだった。

その甲斐もあり、その日の暴走者が三名式神に巻き付かれるように取り押さえられたのだ。もちろん全て晴明が対処して、怪我人を一人も出さない完璧な結果を出したのだった。

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