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能力測定

過去回想と分けようかとも考えましたが、文字数なども考えて一緒にしています。

 エピローグ

 

 何故私は責められるのか。

 何故私は受け入れられないのか。


この場所に平穏な生活を求めて来てから50と数年…。

村の小さかった子供たちも大人となり、読み書きを教えた私を今でも先生と呼んでくれていた。

姿の変わらない私に対しても良く接してくれて、村の守り神のように接してくれていたのに…。


都から調査と称した使者が来てから変わってしまった。どうやら怪しい妖術を使う、この国らしからぬ容姿を持つ人物など(あやかし)として討伐対象にされたらしい。村の人々は私を庇い、幾人かが血を流して倒れている。

燃える建物、哭き叫ぶ声…。私が居たことが不幸を呼んでしまったのだろうか?


「ここに怨霊が巣食っていると聞いた。匿う者には容赦はせぬ!」

刀を突きつけて村人を脅す声が響き渡る。

「怨霊なんていませんて。この村はこれまでも平穏無事に暮らしてこれております。呪いなど聞いたこともありません。」

どんなに訴えようとも検非違使(けんびいし)は聞く耳など持たない。今にも斬りかかって来そうな勢いだ。


村の子どもたちや老人とともに(やしろ)に隠れているが限界があるだろうことは明確だった。

「もういい…もう十分皆には良くしてもらった。こんな私を匿って命を落とす必要などない。このような見目の者など直ぐにまた追われる身となるだろう。ここから私が出ていき、村の皆は怨霊に脅かされていたと告げれば命は助かる。」

「嫌だ嫌だ!先生が居たからみんな元気に生活してこられたんだ!見た目がどうであれ、いじめられる道理なんてないじゃないか!」

周りを囲む子どもたちを中心に理不尽な現状に不満が噴出している。だが…。

「このままでは全員死ぬ。父や母が殺されるなど誰も望まぬだろう。だから私が出ていき、あの物達を追い払おう。そのままここを去れば今後も得られた知識をもとにこの村は豊かに存続していける。皆が幸せであるなら私のいた意味があったと思える!私のような者に優しくして向かい入れてくれたこの村を不幸にはしたくない。」

子どもたちに、そして自分に言い聞かせるように話し終わり、私は社の扉を開けた。


ここからは悪役に徹する。使命を持ってやって来た検非違使(けんびいし)達をなるべく殺さずに帰ってもらわなければならない。

「私は1000年を生きる()()の魔法使い!私の討伐など不可能であることを知りたければかかってくるがよい。」


私はまた1人で生きて行く。人々の恐怖の対象として…。








「おはよう!早く起きなさい!今日から新しい学校に行くってのにずいぶんとゆっくりしてるんだから。緊張しないのはいいけど、しなさ過ぎてもこっちが不安になるんだけど?」

「おはよう母さん。でも時間的には余裕があると思ってるんだけど?」

時計の針はまだ6時30分を回ったところだ。いくら登校初日と言っても、教師より先に来る転校生は困り者であろう。

()()()()()()ならそうでしょうけどね。晴明(はるあき)は覚醒者認定を受けてここに来たんでしょ!検査してから教室に行くんだから早くして!」

そうなのである。小学校3年生の冬に力が目醒めたことをきっかけに覚醒者教育の機関があるこの地域に母親と越して来たのだ。覚醒者についてはまだ色々な研究者が議論を交わし、エネルギーの出所がどうだとか、やれ能力がどうだなどとデータを集めているらしい。つまりまだあまり分かっていないのだ。その力というのもコントロールするための訓練をする必要がある。2038年問題で世の中が騒いでいた頃に覚醒者の存在が確認され始め、政府機関が覚醒者の教育や覚醒者の犯罪に対応するために部隊を東西で分けて編成したのだ。東の白虎隊(びゃっこたい)と西の新撰組(しんせんぐみ)として組織されており、東北最北端のここではもちろん白虎隊への編成となる。

「変に力が暴走する前に訓練を受ける必要があるからここに来たんだからね?抜けた気持ちで行って失敗しないか本当に心配よ。不登校とかなったらとかこっちが考えちゃう。」

とても心配症な母である。だが、まだ10歳そこそこの息子が覚醒者認定を受けて白虎隊への編成を政府から指示されたとなれば納得であろう。世界では約5千万人ほどが覚醒者として認定されているが、日本では10万人にも満たない。そのせいもあり、力が強い者には入隊義務もある。ちょっと力が使えるからと定期的にチェックを受けるような状況とは訳が違うのだ。今日これから行われる検査の結果によっては今後の生活及び人生においても大きく変わってくることになるのだ。しかし、ヤキモキしているのは母だけであった。

「少しは落ち着いたら?ソワソワしてても結果が出るのは夕方だし、俺も普通に授業だよ?今から考えても仕方ないでしょ。大体母さんは大きい力と大したことない力のどちらに認定されて欲しいとかあるわけ?」

大人びた子どもの一言により、少し落ち着いた母は少し考えて気がつくのだ。

「別にどっちでもいいのかも。大きい力があればそのまま公務員のように就職も安泰だし、小さい力だったとしても今と変わらないだけだもんね!なーんだ、心配して損しちゃった。」

大きい力で周りを傷つけるとか、部隊に編成されてケガしないかとかの心配は特にないのかな?といつも通り抜けてる母親を横目に身支度を整えて行くのであった。



小学校に着くと早速体育館へと案内された。案内してくれたのは学校の関係者ではなく白虎隊の事務官とのことである。

「リラックスしてね。別に痛いこととかないから大丈夫だよ!」

二十歳位の可愛らしい事務官に言われて問診を受ける。

いつから力に目覚めたや何故その力に気がついたかなど、編入前に散々された質問に辟易としながらも答えていく。力と一概に言っても人によって全く違うのである。ある人は炎が出せる、またある人は物を動かせるなど超能力者と言われる方がしっくりくる。

じゃあ晴明は何故力に気がついたのか?

それは周りに現れる(あやかし)の類が見えはじめたためだ。父や母に言っても信じてもらえず、自分でも調べていくと同じ人がいることに気がついたというわけである。妖と言っても別に害があるわけではない。正直言って精霊とか言われても納得するような見た目であった。インターネットではモヤのようであるなど様々で、オカルト的な面が大きいために中々言い出せずにいたのだが、前の学校で行われた職業見学会で白虎隊本部に訪れた際に声をかけられたというわけである。端的に言えばバレた。人には見えない物を目で追っている少年に目を付けて監視していたようである。今にして思えば、職業見学会というのも自分のような者を探しだす口実だったのかも知れない。

「じゃあ次はこの棒を握ってみてくれる?先端が光るから。今度はその色が何色かを見るだけだから心配しないで?」

別にビビってはいないのだが、やはり安心させようと優しく話しかけてくれるのはありがたいなぁと思いながらプラスチック製の棒を握った。しかしその瞬間に薄暗かった体育館全体が白く輝き、眩しいほどに強く輝いたのだ。もちろん晴明はビビった。手を離していいかも分からず久しぶりにテンパってしまった。そしてさっきまで淡々と作業してくれていたお姉さんの驚き具合をみてやや冷静になりつつ思わずにはいられなかった。

どうやら力は強いらしい…と。

 

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