49話 陽菜の逆襲 その1
ふと俺が目を覚ますとそこは知らない場所だった。
家なのは確かだが訪れた記憶は全くない。
「あら?目が覚めましたか?陵矢先輩♡」
「お、お前は……!」
俺の目の前にいたのは陽菜ちゃんだった。あの体育館での事件以降、一度も顔を合わせることがなかった。どうしてこのタイミングで。
「会うのは二ヶ月ぶりくらいですかね?莉緒に言われて以降は私も少し距離を置くことにしましてね」
「久しぶりなのは別にどうでもいい。まず状況を説明しろ」
「そんな焦らなくても大丈夫ですよ。取って食べたりはしません。莉緒に怒られますからね」
「じゃあ、こんな縄で俺のことを拘束して一体どういうつもりなんだ」
そう、俺の身体は両手足共に縛られて身動き一つ取れない状態にある。
それで何もしないだなんて今までの陽菜ちゃんでは考えられないことだ。
「んー、そうですね。どれから説明していきましょうかね……ひとまず、一つは暇だったから、ですかね」
「暇?暇だから俺を拐ったのか?」
「はい、そうです。一人で歩いていたので声をかけて一緒カフェでお茶をしていました」
「ちょっと待て、その記憶。俺にはないんだけど」
「当たり前ですよ。陵矢さんがトイレに行った隙に一服盛らさせて頂きました♡」
陽菜ちゃんはポケットから袋に入った怪しい白い粉を出した。
「陽菜ちゃん何それ?」
「睡眠薬に記憶を少しだけ消す薬を混ぜた物でーす♡」
「でーすじゃねぇよ!お前は何をしてんだ!」
「あぁぁっ……久しぶりの陵矢先輩の罵声……身体に染み渡る……気持ちいい……」
陽菜ちゃんは頭を抱えてその場に座り込んだ。
そういえばすっかり忘れてた、こいつ根っからのドMだった。
「お前、そんな薬どこから入手してきたんだよ」
「入手方法なんて別にいいんじゃないですか」
良くはねぇんだよ。睡眠薬はいいとしても、記憶を消す薬なんてどこで入手出来るだよ。RPGの世界でも多分、非売品じゃないのか。
「これ以上は聞いても無駄か。それなら質問を変える。ここはどこなんだ。俺は全く知らないぞ」
「私の家ですよ。もちろん、ここは私の部屋です」
「陽菜ちゃんの家?どうやって俺をここまで運んだんだよ?」
「簡単ですよ?おんぶして運びました。これでも私は体力と筋力には自信あるんですから」
いくら自信があるとはいえ、俺と陽菜ちゃん、普通に体格差あるぞ?
身長だって十センチは違うし体重だって、たぶん相当違うだろう。
「それで寝ている隙に縄で縛って俺が起きるのを待っていたのか」
「その通りです!ちなみにスマホとかは没収済みなので莉緒には連絡出来ないので諦めて下さいね」
「お前本気で監禁する気満々じゃねぇか!」
「そんな監禁だなんて……前の体育館に比べたら、こんなのミジンコ以下じゃないですか。あの時は本当に楽しかったですよ。心の底からゾクゾクしてました。あの大好きな陵矢先輩を独り占め出来るチャンスだったんですから」
どうやら陽菜ちゃんの変なスイッチが入ったみたいだ。目がハートになってるし、呂律も回らなくなってきてるし、俺そろそろピンチだな。
冷静に分析してる場合じゃなくなってきたぞ。
「……それで今から俺はどうなるんだ?」
「特には考えていません。思いついたことを次々とやっていこうかなと」
それが一番怖いな。ある程度は何をされるのかわかっていた方がこっちとしても気が楽なんだけど。
「ねぇ、陽菜ちゃん?縄解いて貰えない?」
俺はこの状況を打破すべく、まずは自分の動きの確保を最優先にした。
「じゃあ、そうですね。ベッド、行きましょうか」
全く話を聞いて貰えない上にいきなりベッドタイムかよ。
まあ、解いてくれるわけないよね。分かってはいたけど。
「え、ちょっと。陽菜ちゃん?待っ」
俺は陽菜ちゃんに抱き抱えられてベッドへと勢い良く投げられた。
ちょっと扱い雑過ぎないかな。
「さてと、準備は整ったかな」
陽菜ちゃんはゆっくりと近づいて俺の隣で横になった。
「あの……?陽菜ちゃん……?」
「なんですか?先輩?」
「これはどういうこと?」
「ただ私が先輩と一緒に寝たいだけです。この前は出来なかったですからね」
「ああ、そういうこ……と……?」
陽菜ちゃんは更に俺に近づき抱き着いてきた。
「陽菜ちゃん、抱きつくのはやめてくれよ」
「どうしてですか?莉緒とはこういうこと沢山してるくせに私はダメなんですか?」
「いや、だって、莉緒は妹だし。俺は莉緒が好きだし。あいつも俺のことが好きだから。やったって問題はないだろ?」
俺がそう言うと、陽菜ちゃんは俯いた。その顔からは涙が零れていた。
「陽菜……ちゃん?」
「……莉緒、莉緒、莉緒って私の気持ちも知らないで……!私の本気を見せますよ……!」
陽菜ちゃんは制服を脱ぎ出す。そして、体育館の時と同様に下着姿なった。
結局はこうなってしまうのか。
「どうして、そうやってすぐに脱ぐんだよ!」
「うるさいです!あなたが私の気持ちをもっと真剣受け止めてくれればこんなことにはならないんですよ!」
「そんなこと言ったって俺が好きなのは莉緒なんだ!」
「まだそんなこと言いますか!?莉緒なんて言えないくらいに私のこの自慢の身体でメロメロさせてあげます!」
「なっ……!」
陽菜ちゃんは俺の上に乗り、自分の胸へを俺の顔へと押し付けた。
「どうです、先輩?莉緒のおっぱいよりも大きくて揉みごたえあるでしょ?」
「胸は大きければいいってもんじゃない」
「そうですか……それならこれはどうですか!」
「んんっ……!」
陽菜ちゃんはなんの躊躇いもなく俺の唇にキスをしてきた。そして、そのまま強引に舌を入れられ濃厚な時間が数秒間続く。
「……ぷはぁっ!ど、どうですか?莉緒以外との女の子とのキスは?気持ちいいでしょ?」
「…………」
「言葉も出ませんか?ちなみに今のが私のファーストキスです。好きでもない女の子のファーストキスを奪うだなんて先輩も悪い人ですね」
「…………」
「しょうがない人ですね。それじゃあ莉緒よりも先に先輩の大切な大切な童貞さんを奪っちゃいましょう♡」
陽菜ちゃんが嬉しそうに俺の股間へと手を伸ばす。このままでは本当に俺の童貞が奪われてしまう。莉緒に捧げるはずだった俺の童貞がこんな下品な女に。
その時、俺のスマホの着信音が鳴った。
「もう、なんですか。こんないい雰囲気の時に」
陽菜ちゃんは立ち上がり、俺のスマホを確認する。
「あら、やはり。先輩、莉緒からですよ。私が出ますね」
陽菜ちゃんはスマホのボタンをスライドして莉緒からの着信に出る。
『もしもし!お兄ちゃん!今どこにいるの!?』
スピーカーモードに設定したのか、俺にも電話越しの莉緒の声が聞こえる。
『残念、私はお兄ちゃんじゃありません』
『その声は陽菜!どうしてお兄ちゃんのスマホ持っているの!?』
『さあ、それはどうしてでしょうね』
『あなた……まさか……お兄ちゃんを……!』
『やっぱり莉緒は勘が鋭いね。そういうことよ。拉致して今は私の部屋にいるわ。助けたかったら私の家に来るといいわ。待っているから。それじゃあね』
「ということで、今から莉緒がこっちに来るわよ。私たちの濃厚なセックスを莉緒に見てもらいましょうね♡」
「…………」
「まだ黙り込んだままなのね。それならもう一回濃厚なをキスしてあげるまで!」
「んんっ……!んんっ……!」
先程と同じく口の中に舌を入れられる。そのキスは一回目よりも更に長く奥深くまで絡み、俺の理性はもう崩壊寸前まできていた。
「ふふふっ……大好きな人とのキスがこんなにも幸せな物だなんて知らなかった。ありがとね、先輩♡」
俺は莉緒が早く来てくれることを願うしかなかった。
このままでは俺は陽菜ちゃんの思うがままに快楽へと堕ちてしまうだろう。
49話、読んで下さりありがとうございます。続きを読みたいと思って頂けましたらブックマーク登録、評価よろしくお願いします。
評価は下記にある【☆☆☆☆☆】をタップでお願いします。




