44話 義妹とのアパートでの初めての週末
俺と莉緒が引っ越しをして今日でちょうど一週間。初めての週末を迎える。
十二月になって季節も変わり、ここ数日は本当に寒くなってきた。
「お兄ちゃん、ココア作ってきてよ」
「嫌だ。自分で作ってこいよ」
「私だって嫌だからお兄ちゃんにお願いしてるんじゃん」
「いくらお前の頼みだからって俺はここから出ないぞ」
今の俺と莉緒はこたつで暖を取っている最中だ。
お互い布団を肩まで被っているため、こたつから出る気なんてこれっぽちもない。
なんなら、このまま眠ってしまいそうなくらいだ。
「ねぇ、お兄ちゃん〜、お願い〜?」
駄々をこねる子供のような声で莉緒は言う。
「嫌だって言ってんだろ」
「え〜?お兄ちゃん〜、お願いだよ〜♡」
今度は甘えるような声で俺を誘惑する。
「そんな声出したって俺は揺るがないぞ」
今の俺なら莉緒のどんな攻撃にも対応出来る気がする。それぐらいにこたつから出たくないのだ。
出たら最後、もう一度最初から身体を暖めることになるのだから。それだけは絶対にしたくない。
「んん……今なら私のおっぱい触らせてあげるよ?」
「お前のおっぱいなんていつでも触れるわ」
「お兄ちゃん、しれっと何とんでもないこと言ってるの?他の人が聞いたらドン引きだよ?」
どうやら知らない間に地雷を踏んだようだ。
これは少しまずい気がする。
「ドン引きされたって俺は構わねぇよ。そもそも妹のおっぱいなんて一緒に暮らしてれば揉み放題だろ?」
「どうして私が揉むのを許した前提で話してるのさ!そんな揉み放題なわけないでしょ!」
ギリギリのところで爆発は免れたようだ。
あとはここから莉緒に負けないように討論していくだけだ。
絶対に負けるなよ、俺様。
「お前が今触らせてあげるよって言ったんだろ?それはつまり、揉み放題ってことなんじゃないのか?」
「違うよ!私は「今」って言ったよね!?今ならって!それを揉み放題と捉えるって一体お兄ちゃんはどんな脳みそしてるのさ!」
「俺の脳みそはお前のことしか考えてないよ。髪の毛が六割、おっぱいが三割でその他で一割だ」
元々の割合としては出会った当初は十割が髪の毛だったんだけどな。それだけ今は口が裂けても言えない。絶対に八つ裂きにされる。
女子を髪の毛だけでしか見ていない男とか俺以外、この世に存在しないだろ。
「お兄ちゃんの中の私ってそんな変な割合で出来てるの!?信じられない!顔とか性格がその他っておかしいよ!」
「俺がお前の金髪ツインテールを愛してるの分かってるだろ?」
「それでも、その他の一割に含まれるのは納得がいかない!そんなこと言うなら私ツインテールやめる!」
莉緒が結ばれた黒のリボンを解こうする。
「ちょ!待って!莉緒!それだけは……」
俺は立ち上がり、莉緒の両手を止める。
「じゃあ、早く訂正してよ」
「……どれを?」
「さっきの私の割合に決まってるじゃん」
「……それってさ。訂正してお前満足するの?」
一番最初に言われた割合を訂正されても俺は嬉しくも何ともないと思うのだが。
ただでさえ俺が最悪な割合を言っただけに、ここから自分で訂正したものを言うのも正直気が引ける。
「満足はしないだけど不満と苛立ちは残るよ。だからさっさと訂正して」
「……わ、分かった」
仏頂面で返答した莉緒を見て、俺は「しなかったら本当に八つ裂きにされる」と思い訂正することを決めた。
「ほら、早く訂正して」
「待てよ、少し時間くれって」
「待たないよ、あと五秒で答えて」
莉緒が「5、4、3……」とカウントダウンをする。
俺は焦りながらも残った時間で思考をフル回転させて答えを出した。
「髪の毛が四割、顔と性格が三割、残りの三割がおっぱいを含めた体格だ!」
「……」
莉緒は俺の顔を見て黙り込んだまま口を開こうとしない。
「……あの、莉緒?」
「……なに?」
「今の訂正についての莉緒の意見を聞きたいんだけれど……」
「さっきよりはマシになったから大丈夫。合格だよ♡」
先程まで固かった莉緒の表情が和らぎ、一気に笑顔になる。
「そうか、それなら良かった」
「じゃあ立ち上がったついでだし、ココア作ってきてよ」
「……え?」
そういえば莉緒の手を止めるために俺はこたつから立ち上がっている状態だった。
「ここまで頑張って粘っていたみたいだけど残念だったね、お兄ちゃん♡」
「ふざけんなぁぁぁぁぁ!」
「そんな大きな声出てないで早く作ってきてよ。あ、戸棚にクッキーもあるからそれも持ってきてねー」
「……分かったよ」
「よろしくねー」
俺は渋々とキッキンへと歩いていき、牛乳を温めてココアを作った。
もちろん、自分の分もだ。
「ほら、出来たぞ」
「わーい、お兄ちゃんありがと♡」
俺はココアとクッキーをこたつに置く。
「俺が作ったんだ。感謝して飲めよ」
「はーい」
莉緒はコップを持つと軽く「ふうふう」と息を吹きかけてココアを1口飲む。
「どうだ?」
「めちゃ美味しいよ。身体暖まるからお兄ちゃんも早く飲みなよ〜」
「じゃあ、身体冷めちまったし俺も飲むか」
俺はココアとこたつの両方で再び暖まる。
本当なら作らないで済んだはずなのに。
「あ、そういえばお兄ちゃん、おっぱい揉まなくていいの?」
「……別に今更揉んだって気分が乗らねぇよ」
「そっか〜、それならしょうがないね。ちなみに実を言うと今の私、ノーブラなんでーす♡」
莉緒の突然のノーブラ発言に俺は口に含んでいたココアを口から「ぶはっ」っと吐き出した。
「な、なんでブラ付けてねぇんだよ!」
「なんか最近締め付けられるのが嫌でさ〜」
「まさかとは思うが学校では付けてるよな……?」
「当たり前じゃん。さすがにノーブラで学校には行けないよ。着替えで皆におっぱい晒すなんて変態すぎでしょ」
学校にノーブラで行ってないのなら安心だ。
ノーブラで行っていたら、まあ色々と問題があるだろう。
「思ったんだが、ブラって付けてても付けてなくても別に支障とかないのか?」
「んー、そうだね。付けてないとやっぱり締め付けからは解放されるね。でもその分、服とかに擦れるからそこが難点かな」
今の莉緒はダボダボの無地のパーカーにタイツとショートパンツという格好だ。
完全にオフモードである。
「……まあ、今のその格好ならノーブラの方が楽かもしれないな」
「あれ?もしかしてお兄ちゃん、今私のこのパーカーの中のこと想像してたでしょ?
「そ、そんなことねぇよ!」
嘘です。本当は想像しています。
「その言い方、なんか怪しいなー。この中で私のおっぱいがどうなってるのか気になってるんでしょ?」
「知らねぇよ。そんなのブラ付けてる時と大して変わんねぇだろ」
「違うかもしれないよ?お兄ちゃん見たことも触ったこともないんだからそんな知ったかぶりしてないでパーカーの上から試しに揉んでみたら?」
なんて上手い誘導なんだ。
こう言われたら揉まずにはいられないじゃないか。
「……本当に揉んでいいのか?」
「いいけど?」
「……ほんとだな?」
「さっきまで散々揉み放題とか言ってた人が怖気付いてんのさ。いいから早く揉みなよ」
いざ揉むとなるとやはり躊躇いの気持ちが生まれる。まだ数回しか揉んだことのない妹の胸、この気持ちがあるのは仕方のないことだろう。
しかし、そう思わなくなった時が一番怖い。当たり前のように妹の胸を揉む兄にだけはなりたくないのだ。
それでも、俺は妹が大好きなので揉む。言っていることは矛盾だらけだが妹を愛する自分の気持ちだけは裏切ることは出来ない。
「じ、じゃあ揉むぞ」
「……うん」
俺はゆっくりと右手を莉緒の胸へと近づける。
そしてパーカー越しに莉緒の胸を軽く揉む。
一度、二度、三度と。柔らかいその感触は以前触った時とは全く別の物だった。
パーカー越しのはずだが、ブラがないため直接揉んでいる感触にかなり近い。
「こ、これは凄い……」
「ち、ちょっと……お兄ちゃん……い、いつまで……揉んでる……つもりなの……よ……」
莉緒が少しずつ喘ぎ声を上げてきたが、あまりの感動に心が躍った俺はその声に耳を傾けることなく胸を揉み続ける。
「……」
「お、お兄ちゃん……まだ……?」
「……」
「ね、ねぇ……お兄ちゃん……ってば……!」
遂に俺は話すことをやめ、胸を揉むことだけに全集中してしまう。
「……そろそろ、脱いでもいいんじゃない?」
俺は無意識で一言呟き、莉緒のパーカーを脱がそうとする。
「……え、ちょ、それはだめぇぇぇぇぇ!」
「……あ、ぐはっ――!」
莉緒の右ストレートが俺の顔面を直撃。
俺はソファまで吹き飛ばされてKOだ。
「お兄ちゃんの変態!おっぱい大好きマン!ほんとやりすぎ!こんなことするならもう結婚するまで揉ませてあげないんだからね!」
莉緒は頬を赤らめ、胸元を隠すようにしてリビングから出ていった。
当の俺は右ストレートが綺麗に決まり気絶中である。
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