42話 義妹は相変わらずのツンデレ
「おーい!莉緒!早く鍵閉めるから行くぞ!」
「ちょっと待ってよー」
時刻はまもなく7時半。引っ越しをして学校までの登校時間が伸びたため、俺達は前よりも三十分早く出発しなければならない。
しかし、莉緒の支度が終わらない。
このままでは遅刻して、また怒られてしまう。
「せっかく早く起きたのにこれじゃ意味ねぇじゃねぇかよー!」
「そんなに早く行きたかったら一人で行けばいいじゃん!その歳にもなって一人で行けないの?」
莉緒が不機嫌そうに声を荒げて言う。俺は単純に妹と一緒に登校したいだけなのだが、そう言われると少し俺もイラッとしてしまう。
「じゃあ、鍵置いとくからな!気をつけて来いよ!」
そう言って俺は先に学校へと向かった。
そして、昼休み。俺は購買でいつものメロンパンとコーヒー牛乳のセットを買って詩音の元へと戻る。
「今日は弁当じゃないんだな、陵矢」
「……朝、少し喧嘩してな」
「引っ越し早々喧嘩かよ。相変わらず仲がいいな、お前らは」
「仲良くねぇよ、全く……」
俺はメロンパンを一口頬張る。
「なんか嫌なことでもあったか?」
「そんな嫌なことでもないんだけどな。朝起きたら莉緒が俺のベッドの中にいただけの話さ」
「それだけかよ。それくらい別にいいだろ」
「よくねぇよ。俺のベッドには入らないっていう莉緒と俺の約束だったんだぞ?」
「そういう約束作るからそうなるんだろ」
詩音、そうじゃないんだ。そうでもしないとあいつはそれ以上のことを俺にしようとしてくるんだよ。
「やっぱり、部屋は別々の方が良かったかな……」
「今更そんなこと嘆いてもしょうがねぇだ……っと、おい、陵矢。大好きな妹が来てるぞ」
「……は?」
俺が教室の入口に視線を向けると莉緒の姿があった。
莉緒は小さなバッグを持ってこちらへ近づいてくる。
「はい、お兄ちゃん」
「なんだよ、これは」
莉緒は持ってきてきたバッグを俺に差し出す。
「何って弁当だよ。作ったから渡しに来たんだけど要らなかった?」
「え?だってお前、今日は弁当抜きって……」
「冗談に決まってるじゃん。もしかして本気にしちゃってたの?」
「当たり前だろ!だから今こうしてメロンパンを食べてんだろうが!」
俺は左手に持ったメロンパンを莉緒に見せつける。
「なーんだ、買っちゃったのか。それなら必要ないかな。じゃあ持って帰るね」
「いやいやいや!待てよ!食べさせてくれよ!」
弁当が入ったバッグを持って帰ろうとする莉緒を俺は必死に止める。
「離してよ!メロンパンあるんだから私の弁当なんて要らないでしょ!?」
「いるよ!メロンパンだけで腹が満たされると思ったら大間違いだぞ!」
「いつもそれしか食べてなかった人がよく言えますね!?」
確かにそうなのだが、節約という意味も込めて俺はこのセットしか食べていなかったのだ。
「とにかく!俺はお前の弁当が食べたいんだ!」
「嫌だ!メロンパン食べた人には食べさせてあげない!」
「それなら、どうして作ってきたんだよ!」
「ど、どうしてって……」
莉緒は頬を赤らめて下を向く。
「黙ってないで早く答えろよ」
「う、うるさいなぁ!ちょっと黙っててよ!」
「なんですぐ答えられないんだよ」
「し、仕方ないじゃん!思い浮かばないんだから!」
弁当を作った理由が思い浮かばないってどういうことなんだ。俺に食べて欲しくて作ったとかそんな簡単な理由じゃないのか、違うのか。
「……あの、莉緒……まだか?」
「そ、そんなに急かさないでよ!今考えてるんだから!」
急かしたくなるだろ。
お前が考え込んでから、もうすぐ五分は経つんだぞ。
昼休みが終わっちゃうじゃないか。
「……俺に食べて欲しかったっていう理由じゃだめなのか?」
「だ、だめに決まってるじゃん!そんなの認めるわけにはいかないもん!」
「認めたって特に何も言わないんだけど……」
「私が嫌なの!」
莉緒は強く否定する。これには本当に困った。
「なあ、莉緒ちゃん?」
「なんですか?詩音先輩?」
ここで詩音がフォローに入る。
「自分の弁当を作って、おかずが余ったから陵矢の分もしょうがないから作ってあげたってことにすればいいんじゃないのか?」
「あっ!それです!詩音先輩ナイスです!」
詩音さすがだな。
莉緒も満面の笑みを浮かべて詩音に向けてグッドサインを送る。
「……ということでお兄ちゃん!私はお兄ちゃんのために作ったわけじゃないんだからね!たまたま余ったから作っただけなんだからね!」
「……お前がそれでいいなら俺は何でもいいよ」
俺は腹が減っていたので正直なところ、もうどうでも良かった。早く弁当が食べたい。
「それではお兄ちゃん、詩音先輩。また放課後にお会いしましょう。ばいばーい」
こうして莉緒は教室から去って行った。
「良かったな、弁当食べれるぞ」
「良いのか悪いのか、さっぱり分かんねぇよ」
「それは食べてから判断してやれよ」
「……そうだな」
俺はバッグから弁当を取り出して蓋を開ける。
「……おい、なんだよ。この弁当」
「……いや、俺もこれは予想外だ」
弁当を見た俺達は目を疑った。
そこには黄金に輝く卵焼き、具沢山の煮物、ほうれん草の煮浸し、チョレギサラダ、天ぷら、鴨ロース、牛肉の甘煮と今まで見たことの無い弁当があった。
「莉緒ちゃん、これは張り切りすぎだろ……」
「この弁当……どう考えても食べて欲しいっていう理由しかないだろ……」
「とりあえず、食べてみろよ」
「あ、ああ……」
俺は箸を取り、まず牛肉を口に運ぶ。
「……美味い……ってなんか入ってるな」
よく見ると弁当の隅に折りたたまれた紙が見える。
俺はそれを取り出す。
「陵矢、なんだそれ?」
「俺にも分からん」
開いて見てみると、それはこの弁当の御品書きだった。
なんて洒落たことをするんだ、あいつは。
「……ちょっと待て、いま食べた牛肉……黒毛和牛だ……」
「まじかよ!俺にも食べさせろ!」
「あげねぇよ!俺の弁当だ!」
「俺のおかげで今食べれてんだろうが!一口くらい寄越せよ!」
豪華な弁当に俺達の興奮が収まることはなかった。
一方の莉緒はというと――。
「今頃、お兄ちゃん喜んでくれてるかなー。今日の弁当はひと味違うからね。ちゃんと感想聞かないと」
鼻歌を歌いながら機嫌良く自分の教室へと戻っていた。
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