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パーティ結成


「くあ」


「むにゃ」


 俺とアルデバランは宿屋の食堂で朝食をとっていた。


「美味しいの」


「ああ。自慢の食堂だ。俺は経営に関わってないけど」


 麦パンとスープと干し肉。だがその質素さがむしろ心地よい。


「で、今日はどうする?」


「最高ランクのクエストを――」


「――無理だっつっとろーが」


 いい加減疲れるなコイツ。


「さっそくパーティ組んだんですね」


 宿屋の看板娘がニコニコ笑んでいた。


「あー、まー、そのな」


「吾輩アルデバランと申す。宜しく頼む」


「はい。クリュエルグエルさんをよろしく御願いします」


「なに。死なぬよコイツは」


 ペシペシと頭をはたかれる。


 そして朝食をとるとギルド本部へ。ギイと木製のドアを開けて中へ。酒場を兼任しているが、さすがに朝からは飲まない。で、クエストをしげしげと見つめる。俺はまぁS級なんだが、アルデバランが低級なので相応の依頼しかこなせない。で、その中でランクなしのクエストがあった。


「エリクシールの捜索願……」


 貴族が買ったエリクシールが闇市に流れたらしい。それを追ってくれというクエストだった。


「ほう」


「やってみるか?」


「うむ。エリクシールには興味在る」


「いや。取り返すのが目的だから手に入んないぞ」


「構わん。これでいこうぞ」


「相承った」


 俺はクエスト申請にカウンターへと向かった。


「あ。クリュエルグエル様」


「このクエスト受けたいんだけど」


「おお。わかりました。受理します」


「よろしく御願いする」


 なわけでクエスト開始だ。そう思って俺がアルデバランの元に戻ると、


「お願いします~!」


「知らん」


「何卒~!」


「いらん」


 なにかアルデバランは女の子に絡まれていた。こっちも愛らしい少女だ。桃色の髪の愛嬌在る色彩をした少女。フリフリのドレスに機能性は見て取れないが、此処に居る以上ギルドに用があるのか。依頼人の可能性まである。


「あ。お兄さん。ちょうどよかった」


「クリュエルグエル様~! ふあぁ~! 本物だ~!」


 偽物とか居るのか?


「何か?」


「此奴が離してくれず」


「私をパーティに入れてください~!」


 桃色の髪の乙女はそんなことを提案してきた。


「はあ」


 と俺。


「はぁ」


 とアルデバラン。


「お願いします~!」


 と桃色乙女。


「誰?」


「知らんよ」


 てなわけで自己紹介。


「アンジェールリカと申します~! 天職は黒魔術師~。レベルは13。炎とか得意です~」


「レベル13」


 なんかむしろ新鮮な気分。昨日はレベル999だったり、俺のレベルが限界突破したり色々あったので、レベル13という安定の存在が眩しい。なんか普通って良いですね。


「で、俺らとパーティ組みたいと」


「クリュエルグエル様に憧れて冒険者目指してます~! まだ最低ランクですけど~」


「それはアルデバランもそうだから構わんが」


「足手纏いは重々承知~。でもクリュエルグエルお師匠様と一緒のパーティになりたいのです~!」


「何で?」


「勇者パーティを抜けられたんですよね~?」


「あ。噂になってるのか?」


「王国激震しておりますが~」


「ははは。ソレは無い」


 ヒラヒラと冗談を躱す。ピシッとアンジェールリカの笑顔にヒビが入った。


「ガチ~?」


「知らんて」


 どこかでアルデバランとアンジェールリカが意思疎通。ヒソヒソ話をしていた。


「と、そこで間隙に付け込むようにお師匠様とお近づきに~」


「言っとくけどお兄さんの体は吾輩の物じゃよ?」


「じゃあ私はメス奴隷でいいですので~。首輪とか付けます~? 裸で四つん這いにさせます~? 躾でおしっ――」


「あの。それ以上言われると俺の名前が地に堕ちるから自重してくれ」


「はい~」


 なんかコイツはコイツで危ない雰囲気だ。どこに言動が飛んでいくか分からないミステリー。


「でも役に立つので?」


 根本的なことをアルデバランが尋ねた。


「気合いと根性で頑張ります~!」


「やる気は買うが……」


 ぶっちゃけ俺でもアルデバランは制御できない。そうなるとレベル13の彼女に何が出来るのかという話になり。


「とにかく頑張ります~!」


「じゃあ報酬は等分で。それでいいならパーティを組もう」


「いいのじゃか? お兄さん」


「臨時パーティならいいんじゃないか。捜索依頼だから人手は多い方が良いし」


「何のクエストです~?」


「エリクシールの捜索依頼。コッチが関わる」


「警察の仕事では~?」


「まぁそうなんだが、こういうのは冒険者の方が痒いところに手が届くんだよ」


 王都全体は警察も把握していない。そうなると闇市なんかでも取り扱っていたりする。


「でもどれが件のエリクシールかは~……」


「それも大丈夫だ。多分そんな事情で入ってくる情報ならそれこそ件のエリクシールだ」


「何故~?」


「もちろん横流しされているエリクシールがあまりに少ないのが一つ。もう一つは裏社会でも厳格に管理されているからだな。ここに市場で浮遊するエリクシールがあれば間違いなくホシだ」


「は~。色々とあるんですね~」


「では参るか。要するに裏社会を潰せばいいんじゃろう?」


「やめんさい」


 唐竹割りを振り下ろす。チョップ。


「とにかくスラム街巡りかな。こっちはオートマッピングで」


「オートマッピング……」


 唖然とするアルデバラン。いや、何か不思議なことが? 普通にシーフの上級スキルなんだが。


「では行くか。アンジェールリカもついてくるんだろう?」


「お師匠様の行くところへ~!」


 愛い奴、愛い奴。


「それで根本的にアレなんじゃが」


「何か~?」


「お兄さん……クリュエルグエルって有名なのか?」


「勇者パーティのシーフですよ?」


「元な。元」


「とにかく華麗で、矛盾するように質実剛健~! 勇者パーティのブレインで、そのサポート能力はあらゆるパーティで垂涎の的~」


 誰の話をしているんだ?


「然程の存在じゃないぞ」


「とまぁ謙虚なところも高得点~」


「うむうむ。実際に強いしの」


 いや。強くはないんでない?


 とはいえ限界突破で今ある状況を逆算すると留意の一つもしようというものだが。何にせよアルデバランと一緒に居るとガンガンレベルが上がっていく。アンジェールリカには明かせない俺とアルデバランだけの秘密。けれどまぁ今回に関しては、あまり有用でもなさそうで。ていうかレベルアッパーの不条理性は筆舌に尽くしがたい。こっちのワンオフスキルとの兼ね合いを考えればあたおかといって差し支えもない。いやぶっちゃけ俺ことクリュエルグエルとアルデバラン嬢で世界を滅ぼせるんじゃないか?


 少しそんなことを思った。


「愛しているよお兄さん」


「エッチは何時でもウェルカムですよお師匠様~」


「だからお前らは本当に」


 ピンク髪は淫乱の証って本当なのかしらん?


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