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栄養ドリンクも飲み過ぎに注意


「ぐえ」


 胃が。胃が。


 ほとんど内臓疾患かと思われるくらい胃に痛痒を覚えていた。


「だらしないのぅ。エリクシールの二杯や三杯」


「十七杯飲まされるとは思ってなかったんだよ!」


 もちろんそんなもの買う金は無い。幾らか保持していた物をありったけ飲んでいた。


 で、今は宿屋の風呂に入っている。この国は温泉が湧くので、宿屋は大概湯を引いている。そこにアルデバランと二人で入っていた。


「毛も生えてないのな」


「生えてる方が好みかや?」


「というか犯罪臭が……な」


「なんならくわえてもいいんじゃぞ?」


「だから止めてくれ。疲れてるんだ」


「ふふ。憎いお兄さんめ」


 平ぺったい胸を俺の腕に擦りつけて、「にゃー」とアルデバランは鳴いた。幼女ボディには相応反応もするも、いちおう問題があるので性的には何もしない。というか未熟なロリーに手を出して性犯罪者の汚名を着れば金で解決できるレベルを超えている。いちおうこっちにも老後の安寧を望むだけの常識論はあるのだ。


「にしてもレベル1まで戻してくれるとは」


 そのためにアストラルポイントを使い尽くして、ついでに速効回復のために胃を痛めるまでエリクシールを飲んだのだ。結果はすぐさま現われた。元々デバフだった俺のレベルダウナー。その根幹に於いて、


『デバフにしては効果が薄い』


 ということが挙げられる。今まではソレを俺のスキルの低脳さと見限っていたが、ここで意識が反転する。レベル1になったアルデバランは、だがステータスがレベル500程度までしか減っていないのだ。つまり――、


「つまりここから更にレベル999まで戻すと合算で五割増しのステータスになるわけじゃの」


 そういうことだ。


 レベルを落としてもステータスがそんなに減らないと言うことは、つまり一部の強さを引き継いだままレベルを落としてまた再上昇する余地を与えることに他ならない。一般的にレベル99にしたあと、レベル1に戻せばそれなりのステータスで最初期レベルになり、そこからまたレベルアップが出来る。これがレベル999なら何をかいわんや。


「うむ。心地よい」


 彼女は御機嫌に歌など謳っていた。ついでに俺もレベルが限界突破して増幅している。


「だからこれは吾輩らだけの秘密じゃ」


「ぐ。まぁ。そうだな」


「曰くレベルコンサルタントじゃの」


「ぶっちゃけこれでお前がレベル999になったら怪物じゃないか?」


「そしたらまたそのステータスを引き継いでレベル1まで戻して貰うぞ」


 うへぇ。


「なわけで今日から吾輩らは運命共同体じゃ」


「まぁ稼いでくれるならそれもいいんだが」


 嘆息。


「任せんさい。今の吾輩なら魔族や神族にも勝てる」


「レベル1でレベル500のステータスを持っていればな」


 ステータスモンスターだ。


「にゃー。クリュエルグエルは運命のおのこじゃ」


「いくらでも浸ってくれ」


「抱いて良いぞ」


「もうちょっとお前が成長したらな」


「こっちはそう言っていないようだが……」


「しょうがないの。男の宿命」


「ロリボディでも?」


「春はあけぼのと申しまして」


 我ながら情けない。でもさ。女性日照りであったから仕方にゃーと思うんだ。


「じゃあこれからどうするね?」


「ギルドで路銀を稼ぐ」


「そうだ。ダンジョンに入ろう。吾輩興味在る」


「お前のクラスだとそこまで難しいとこには入れんぞ?」


「つきおうてくれるじゃろ?」


「然も当然みたいに言っているが、そこまで俺を信用するのか」


「じゃって御主優しいし」


「ハードボイルドだ」


「けかかっ。笑うところか?」


「存分に笑ってくれ」


 ふい、と温泉に浸かる。


「じゃあお前様は今までそのワンオフスキルで苦労してきたのか」


「ていうか人に使う場合は嫌がらせ程度だと思っていたんだよ」


「実際にはぶっ壊れだったわけじゃが」


「それだよな」


 呪い子と言われたことも在る。


 ぶっちゃけそんな自己認識を肯定しかけたこともあった。


「大丈夫じゃよ」


 裸で二人。アルデバランが俺の濡れた頭を撫でてきた。


「お兄さんのスキルが呪いでも、吾輩が補填してさしあげる」


「さらに強くなるわけだ」


「超回復みたいなものかや?」


 実際のところどうなんだろうな。


「……………………」


 スッと彼女の手が伸びた。ガードポケットが発動する。バシャンと湯面が跳ねる。今回は十回程度。


「うむ。キレが増しておる」


「一応カウンターにはスキル振ってるしな」


「スキル値にいたっては全保存じゃからな。レベル1でレベル999のスキル持ちって中々おらんじゃろう」


「まぁお前だけだよな」


「これも運命じゃ。にゃあよ。お兄さんよ。吾輩を愛してたもれ」


「じゃあ可愛く振る舞え」


「あ、アンタの事なんて全然好きじゃないんだからね!」


「ツンデレ乙」


 南無三。


 げふ、と息を吐く。本当に胃が痛い。


「さてじゃあ今日は一緒に寝て」


「寝て?」


「眠れるとお思いかい?」


「普通に寝られるぞ」


「にゃー」


 何故に残念そう。


「てなわけで一緒に寝よう」


「こっちに干渉しないならな」


「一人でしろと申す……」


「いやまぁ出来るならやってみろと言いたいところだが」


「示威行為?」


「聞く分にはかなりギリギリだな」


「にゃははー」


 御機嫌にアルデバランは笑った。


「だから好きよ。お兄さん」


「その即堕ちヒロイン止めないか?」


「だって裸見られてるし。上から下まで全部」


「綺麗なピンク色だな」


「いやん」


「唇の話だぞ?」


「いやーん」


 こっちに抱きついてニャンニャン。


「じゃあお兄さん。キスして」


「またそういう」


「キス処女は童貞に恋をするのじゃ」


「いっとくけど責任とらんからな」


「まことハードボイルド」


 ピッとアルデバランが腕を振るった。同時にバシャンと温泉の湯が二つに割れた。


「骨法スキル。切り流し。今の吾輩なら素手でオリハルコンは裂けるぞ」


「ていうかドラゴンに素手で勝てるんじゃ」


「うむ!」


 うむ、じゃないんだが。


「ぶっちゃけそこまで行くと国の決戦力じゃないか?」


「兵士に為る気はござらんぞ?」


「冒険者ギルドにもたまにそんな依頼は来るしな」


「お兄さんも?」


「というか勇者パーティがな」


 勇者が王族の恩恵を受けているため、代わりに王命で戦争に使われる。ブレイブもそこそこ高レベルだし使いやすいのだろう。これが魔族や神族になるとまた話は変わってくるのだが。


「よし。明日からレベリングじゃ。アストラルポイントを稼ごう」


「さっそくドーピングかよ」


「レベルコンサルタントじゃ」


 まぁなんでもいいんだが。ああ。温泉が気持ちいい。


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